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第二章 盗賊団のしまつ

第13話 結婚したことになっていた!?

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 さりげなく僕が言うと、目に見えてマルちゃんが照れだす。

「う、うそだぁ。あのオヤジに限ってそんな」
「でも、キミをそこまで強くしてくれたんでしょ? だったら、愛されている証拠だよ」

 戦闘マシーンとして育てたなら、もっとストイックな性格にさせる。
 組織ってのは、そういうもんだ。
 でも彼女の親は、そうしなかった。
 彼女の優しさ、人間性を優先して育成したんだろう。

「きっとさ、殺人兵器として生きていてほしくなかったんじゃないかな? 最低限自分を守れるくらいの力は与えてさ、あとは好きに生きなさいって思っていたのかなって」
「えへへ。そうかな?」
「そうだよ、マルちゃん。キミは愛されているんだ」

 なんだかんだいって、身内ってそんなもんだ。家族に甘いものである。

「そうだわ、アユム。ずっと聞きそびれていたんだけれど」

 エリちゃんが、唐突に切り出した。

「勇者の人となりって、どんな感じなの?」
「普通の男だよ。ゲームのことしか考えていないけど」

 少なくとも、悪人ではないことは確かだ。

「ゲームの腕は、僕も敵わないよ。とにかく最速クリアして次のゲームをやるやつだった」

 反対に、僕は一本のゲームをやり込む。世界観を考察し、作り手の意図まで考えたい。

「あんたの強さの秘密が、なんとなくわかってきたわ」

 エリちゃんが、カレーを食べ終えた。

「アユムは特別強いってわけじゃないけど、いろんな難局を突破してきたじゃない? でも、勇者は本当に超然としているような印象を受けたわ」
「ああ。ギルマスも同じことを言っていたね」

 悪徳貴族逮捕の後、勇者ユウキのウワサを聞いたことがある。

 剣の一振りで山を斬り裂いたとか、もう魔王級の魔族を七体潰しているとか。

 僕も、証拠の写真を何枚かもらった。写真技術があるってことでもすごいが、その画像にド肝を抜かれる。

 島を覆い尽くすほどの巨人が、頭を破壊されて横たわっている姿だ。怪獣映画のようにウソくさく、災害ノンフィクションのように生々しい。

「初級魔法で敵の一団を消滅させたって、本当かしら? だとしたら、おっかないわね」
『今のはメテオじゃない、ファイアーボールだ』ってか。
「魔王ってすごい数がいるんだね?」
「この世界って、どうもいろんな魔族から狙われているらしいわ。別の世界となんらかの魔力的ななにかでつながっていて、ここさえ押さえれば他の世界も攻め放題なんですって」

 魔術学校の偉い先生が、教えてくれたという。

「うごお、すっげえ。こんなことができるやつと、友だちなのか?」

 マルちゃんが、興味深そうに写真を眺めた。

「まあね」
「すごいぞ、アユム。さすがマルの旦那さんだ」
「え?」

 さっき、すごいことをいったぞ。この子は。

「ねえマルグリット、今なんて」

 声を震わせながら、エリちゃんがマルちゃんに尋ねる。

「アユムはマルのお嫁さん!」
「ちょっと待ちなさい。意味が違うから! ってそういう場合でもないわ! あなたがアユムと!?」
「そっか、マルがアユムのお嫁さんなんだった」
「どうしてそうなるのかって、聞いているのよ!」
「ぼうちゅーじゅつってヤツ」

 房中術? 僕はマルちゃんに、なにかされたっけ?

「馬乗りになったとき?」
「そうそう! ちゅーしたら、ニンシンするんだろ?」

 マルちゃんの両親は「子どもができるから、異性との過剰なスキンシップは避けろ」と忠告したという。

「アユム。あんたこの子と『ちゅー』したの?」
「してないよ!」

 怖い顔で睨まないでくださいエリちゃん!?

「未遂だよ! ほっぺたに何度もキスされたけど、口づけはないから!」
「だとしたら、いいとして」

 いいの!?

「マルグリットはどうして、捕まっていたの?」

 そういえばそうだ。

 ドワーフのギルマスを押しのけるほど強い魔族を、マルちゃんは一撃で倒した。
 とても盗賊なんかに後れを取るとは。

「強い魔族に捕まったんだ」
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