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第三章 絶体絶命!? ライバルはDLCの三姉妹!

第19話 イヤボーンの本来の使い方

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 イーデンちゃんは、アマネ姫のガードに回る。ヴィル姫の守りには、カリスについてもらった。

【アルカナ・フラッシュ】は、最強のマップ兵器である。イーデンちゃんにしか使えず、彼女を象徴する技である。

 聖女の怒りや悲しみの感情を、魔力として放出するのだ。

「そんなすごい武装ですの?」

『このゲーム最大の、バランス破壊武器だよ。またの名を、「イヤボーン」というんだ』

 つまり本来は、マージョリーたんの死を代償にして習得するのである。ようやく通常兵器として使えるのが、レベル四〇になってから。

 私も正直、ここまで素早くレベルアップできるなんて思っていなかった。狙ってはいたが、この速度は想定外だ。ということは。

『シナリオの進行が、早まっている?』

 あまり考えたくない想像が、頭をよぎる。 

海坊主ダゴンがやられただって!? シャクだねぇ! けど、まだこっちにはこれだけの軍勢が!」

 メキラが、剣を振り上げた。

 船より大きいイカのモンスターに乗って、銀髪の少女が現れる。ダルいのか、イカの頭に全体重をかけてのしかかっている。

「なに、姉さん?」

「よく来た、フィゼ。召喚だ! 行け!」

「人使いが荒い」

 姉メキラの指示で、フィゼというダウナー女子が手をかざす。
 空から海から陸から、魔物が大群で押し寄せてきた。
 敵は、サクラダの地点からも出現する。前も後ろも、敵だらけだ。

「増援! テンラ、突撃を!」

 アマネ姫が、鳥型機械のテンラに指示を出す。
 敵陣に向かって、桜色の羽ばたきを食らわせた。マップ兵器だろう。
 翼から放たれた高圧の魔力を浴びて、魔物たちが爆発していく。

 だが、テンラは方向転換を余儀なくされた。

「ダメです。こうも密集していては、魔法が味方に当たってしまいますね」

 モンスターは、まだ大勢現れる。

 中でも、海から現れた大男が異彩を放つ。船を揺らし、メキラさえたたらを踏む。

「標的はこっちじゃないよ海坊主! いうことを聞きな!」

「ムリ。この大入道ギガンテス率いる妖怪軍団は、我々魔族の覇権すら狙っている。じゃあわたし帰るから」

 フィゼは、あくびを噛み殺す。

「アンタ、魔物をコントロールできるだろ? 何帰ろうとしているの?」

「もう起きていられない。わたしは常人の数倍、脳のリソースを割いている。魔物を大量に操ろうとすると、脳波をさらに酷使する。おやすみ」

 まくしたてた後、電池が切れたようにフィゼは眠った。
 イカのモンスターと共に、少女フィゼは海へと沈んでいった。最後に、イーデンちゃんへ視線をちらっと向けて。

「シャクだねぇ。相変わらず、無責任なやつだ。しかし、これでサクラダは終わりさ!」

「そうはいきませんわ!」

「威勢がいいね。アタシはアンタの命をいただくよ!」

 メキラはマージョリーたんに、ターゲットを絞る。

「これで、イーデンさんの技を炸裂させればよろしくて?」

『OKOK。ナイスだよ、マージョリーたん。イーデンちゃん! その魔法の範囲は狭いよ。十分に敵を引き付けてから撃って!』

 私の合図で、イーデンちゃんが意識を集中させた。

「なんだいあの魔力は!? 味方まで消し飛ばす気かい?」

「人の心配より、ご自分の心配をなさったら?」

「それはこっちのセリフだよ!」

 メキラが、両手に持つ大剣をマージョリーたんへ振り下ろす。
 対するマージョリーたんが、ハルバートで剣を軽々と防ぐ。

「やるじゃんか! シャクだね! 人間のくせに!」

「あなた、ドワーフがベースですのね? 先程の女の子は、エルフの血が混じっていたようですが」

 どうやら、彼女たち三姉妹は母親が違うようだ。

「よくわかったね! みんな愛人の子だよ! 本物の娘は死んじまったからさ!」

 そうか。彼女たちは「そう聞かされている」んだね。

「どっちが魔王の娘としてふさわしいか、魔王はあたしらに決めさせているのさ。あのフィゼは魔王の座なんて、興味なさげのようだけど!」

 マージョリーたんが、メキラの一撃に弾き飛ばされる。
 さすがに腕力戦で魔族を相手にすれば、マージョリーたんでも苦戦するか。

「なにを企んでるのか知らないけど、アタシを巻き添えにしようなんてそうはいかないよ」

 盾である私を、メキラがケンカキックで蹴り飛ばす。

「面白い武器じゃないか。こちらの攻撃をインパクトの瞬間で跳ね返すなんてさ」

 あんたの汚い靴の裏を、つけられたくなかったんだい。
 しゃべらないで、心のなかで悪態をつく。

「まあいいさ。その盾を抱きしめながら、おねんねしな!」

 必殺の剣が、マージョリーたんに振り下ろされた。

「【アルカナ・フラッシュ】!」

 同時に、イーデンちゃんの魔法が発動する。

「ごほおお!?」

 イーデンちゃんのアルカナ・フラッシュを背中に浴びて、酷い火傷を負う。

「わたくしのところにも、魔法が迫ってまいりましたわ!」

 マージョリーたんは、避けようとした。

『大丈夫! じっとしてて!』

 青白い光のドームは、私たちをすり抜けていく。マージョリーたんに、傷ひとつつけない。

「なんですの、この暖かい光は?」

『これがアルカナ・フラッシュのチート性能なんだ。名付けて、【敵味方識別魔法】だよ』

 つまり、味方にはノーダメージなのだ。
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