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第三章 絶体絶命!? ライバルはDLCの三姉妹!

第21話 土蜘蛛戦

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 大入道ギガンテスの左拳は、鋭い岩山に突き刺さったままである。岩から腕が抜けないようだ。

「ダテさん、モンスターの動きが、やけに鈍りましたわね?」

『たしかに』

 マージョリーたんと同じことを、私も感じていた。

 腕の大きさからして、すぐに抜けそうな気がするけど。

「大入道は、自分の身体を配下の妖怪に管理させているのです。その一体を倒したことで、魔力のめぐりが悪くなったようですね」

 アマネ姫によると、大入道は強い妖怪の集合体だという。たしかに、日本でも有名な妖怪ばかりだ。

 足を制御していた妖怪は退治したので、もうコイツは歩くことができない。

『エリートを分散配置しないで一点集中させるって、愚策中の愚策なんだけどね』

 本来は優秀な人って、各地に散らせて役割分担をさせる。その方が、戦局は長続きするから。なのに、大入道はそれをしなかった。

「権力争いの結果です。ああいう事態が起きてしまっては、実力者を手元に置くしかなかったのでしょう」

 すぐ近くで起きている妖怪大戦争を、アマネ姫が指差す。

『あー』

 共闘していたゴーマ三姉妹に、寝首をかかれたからか。

 そもそも次女のメキラは、チーム戦がめちゃ苦手なようだし。触ってくるものは全て敵って感じだ。

「あははは! やっぱ世界全部を敵に回すって、楽しすぎる! 全部、殺していいもん!」

 無数の大百足センチピードを細切れにしながら、メキラが高笑いをする。バトルジャンキーが味方にいると、ああなっちゃうよね。

「ああ、殺したい! 全部ぶっ潰してあたしが魔族の頂点に立つんだ! きゃははは!」

 メキラは、自分の強さに酔いしれている。ああいうのを「無能な働き者」っていうんだろうな。


 案外、妖怪軍団にメキラをよこしたのも、魔王が無能な自分の娘を殺すためだったのかも。


「ダテさん、こちらも来ました!」

 今度は、腕が盛り上がって、戦車のような大きさのクモが現れた。

「この土蜘蛛アラクネ、お前たちのスキにはさせぬ!」

 女土蜘蛛が、大量の小グモを生み出す。

「ザコはお任せを。マキビシ!」

 カリスが飛び上がって、小グモの大群へとマキビシを撃ち込んだ。
 その途端、土蜘蛛は大入道のアゴに糸をつけて飛び上がる。

『あ、やばい待ってカリス!』

 私の警告が届いたのは、カリスがマキビシを撃った後だった。

「くお!?」

 カリスのマキビシを受けて、小グモが大爆発を起こす。

「なんと!?」

『くうう。出たよ、マップ兵器殺し!』

 このクモ共は、撃墜されると誘爆を起こすのだ。

 親である土蜘蛛はそれをわかっていたから、ギリギリのところで誘爆を避けたのである。私たちを油断させるために。

「うざいわね! これでも喰らいなさい!」

 ヴィル王女が、【ケラウノス・ランチャー】を土蜘蛛本体に向けて放った。親玉を潰せば小グモも死ぬと、即座に判断したのだろう。推理と、自分の思考を即行動に転換できる適応力がすごい。このお姫様って、まさかゲーム脳なのでは?

 だが、小雲が【援護防御】でカバーする。またしても誘爆によって、周囲にダメージが。

 敵味方問わず、大打撃を負う。

『ごめん! ちゃんと伝えておけば』

「でも、構いませんわ。イーデンさん!」

 イーデンちゃんに、マージョリーたんが指示を出す。

『治療レベルアップを狙う? ここで?』

「他に手はありませんわ! お願いします」

 マージョリーたんに懇願されて、イーデンちゃんが回復魔法【エリアヒール】を使う。【アルカナ・フラッシュ】の治癒版だ。

 全員を治療したことによって、イーデンちゃんが大幅にパワーアップした。

「イーデンさん、ここはわたくしとあなたのダブルタンク職で、突破します! ついてらして!」

「はい!」

 マージョリーたんが私を、イーデンちゃんがゼットさんを正面に構えた。

「おおおおおおお!」

「やああああああ!」

 小グモの群れを、二人は盾で潰していく。

「ジャンプです!」

「はい!」

 マージョリーたんの合図で、イーデンちゃんが土蜘蛛の前で跳躍した。土蜘蛛へ、剣を突きつける。飛び道具を使ったら、また小グモが反応してしまう。接近戦しか手段はなかった。だが、届かない。

「ムダよ! ワタシには遠距離攻撃しか……なあ!?」

 イーデンちゃんの足元に、マージョリーたんが魔法を詠唱する。

「【トルネード】!」

 本来これは、全方位にダメージを与える魔法だ。

「血迷ったのかしら? 誘爆を引き起こす小グモのど真ん中で全体攻撃魔法なんて……な!?」

 イーデンちゃんがゼットさんの上に乗って、トルネードに巻き込まれていく。そのまま、イーデンちゃんは土蜘蛛のいる位置まで上昇した。

 マージョリーたんは小グモ相手に魔法を唱えず、イーデンちゃんを浮かせるために使ったのだ。

「くそお!」

 土蜘蛛が、大百足の死骸を掴む。死体をムチのようにしならせ、イーデンちゃんを叩き落とす気だ。

 だが、大百足はトルネードに飲まれて分解されていく。

「くらえええ!」

 土蜘蛛の眉間に、イーデンちゃんの剣が突き刺さる。

 なんてことのない、特殊効果もないただの一撃だ。

 しかし、あっという間に土蜘蛛がミイラのように干からびた。

 小グモたちが、自動的に爆発を起こす。

 自分から戦わない策士系のキャラは弱いって、相場が決まっているね。

 岩山が崩れて、大入道の肩から先が埋もれた。

 私は巨大化して、落下してくる岩石を防ぐ。


「おのれ!」

 岩を弾き飛ばしながら、大入道が仰向けになる。

『今度は、胴体がフィールドになるみたい!』
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