新大陸を開拓するため、幼女型モンスターに魂を転送した魔女は、後に邪神と崇められる(自力で幼女になりたかっただけやのに!

椎名 富比路

文字の大きさ
8 / 77
第一章 魔女は二度死に、二度転生する。二度目の転生は、魔物幼女(幼女←ここ重要やで!)

第8話 幼女、ご近所さん獲得

しおりを挟む
「はっ」

 ようやく、クゥハが目覚めたらしい。

「ワタシ、どれくらい寝ていました?」

「一時間程や」

 肉体の蘇生は、秒で済んだ。しかし、クゥハは眠ったまま動かなくなった。ウチに負けたショックが、大きかったのだろう。

「アトキン・ネドログ。どうしてワタシにトドメを刺さなかったんですか?」

「なんで刺さなアカンのや?」

「だって、ワタシは敵ですよね?」

「そういうアンタかて、目覚めたらすぐに剣を取るはずやんけ。ウチは、仇なんやろ?」

「もう、そういう感情はすっかり消え去ってしまいました。母も、すぐ再生しますし」

 魔王などの高位モンスターは、【魔界】という異次元に本体があるという。だが、魔力が高すぎて全力状態で地上に降臨できないのだとか。そのため依代を作って、現実世界に顕現するのだ。

「その時に放出する魔力量って、だいたいどれくらい?」

「一%。全力の、一〇〇分の一ほどですかね」

「アンタはどうやねん?」

「ワタシは、一〇分の一くらいです」

 なるほど。逆算すると、ベルゼビュートの本体は、えげつないくらい強いと。

「レベルは?」

「【六七】です」

――ウチより、高いやないかい。
 
 どおりで、めっちゃ強いと思っていた。格上と、戦っていたのだから。

「自分のオカンの依代より強くなってしまってるのに、気づかんかったんか?」

「はい。レベル差が二〇程度では、誤差なので」

 たしかに、低レベルクリアする人はそんな感じである。とはいえ、それを基準にしたらダメだろう。

 それにしても、ベルゼビュートの依代は弱すぎだ。舐めプ過ぎるだろ。あんな低レベルで、ウチがいる地上を支配しようとしていたのか。

「アンタを助けたんは、殺す理由がなかったから。もう一つは、これや」


 さっきの戦闘でグチャグチャになった畑を、ウチは指差す。

「……わかりました。元通りにします」


 その後、数日かけて畑を復元した。
 面積も二倍にしてある。クゥハを、隣に住まわせるためだ。

 ウチは今、クゥハ用の住まいを建てている。ウチの分より、若干小さめだ。

「ワタシの家も、作ってくださるんですか?」

 畑を拡張していたクゥハが、ウチに問いかける。
 
「ええで、それくらい」

 ウチは、一人は平気だ。とはいえ話し相手がいないと、脳にストレスがかからない。それだと、認知症になってもわからなくなる。脳はある程度の負荷がかかっていないと、万年お花畑になる。危機感のない状態にいると、脳はだんだん衰えるのだ。

「それにアンタ、野宿やろ?」
 
「はい。キャンプくらい、どうってことありませんから」

「そのウチ、腰とか背中とかが痛くなるんやで。今は若いからええものの」
 
 
 
 
「【葡萄酒の魔女ソーマタージ・オブ・ヴィティス】は、卑劣な技が得意と効きました。現に戦闘中はトラップ攻撃が満載だったので、戦ってみて実感しましたね」

 うれしいような、悲しいようなコメントだ。

「ですが、本気で葡萄酒の魔女が戦いを挑んでくるなら、さっきのお茶のにもなにかを盛ったに違いありません。媚薬ですとか」

「ないない。おもてなしする客に、そんなんは出さへんて」

「ですよね。そこまで鬼畜ではないと、戦ってみて思いました。ワタシは、葡萄酒の魔女を見下していたのですね」

 そうだ。

 実際に、外に出てみないとわからないことがある。

 ここは、龍宮城だ。理想的な場所だが、理想しかない。現実感がなく、浦島太郎になってしまう。

 外の世界との、パイプが必要だ。

「クゥハ。ウチはここを、ちょっとだけ外に解放してみようと思うんや。魔物からしたら、うっとうしいんやろうか?」

「どう思われようと、関係ないと思います。魔物たちは、あなたがここに足を踏み入れた段階で、敵認定していますから」

 だったら、なにをやっても文句を言われるわけだ。ならば、なにをやっても構わない理屈になる。どのみち、迷惑がられるなら。

 おとなしくなんか、してやらない。

「ひとまず、ここを拠点にしようかなと」

「いいですね。切り立った岩山を、左右に住み分けるんですね?」

「せや。ウチは左半分をもらう。アンタは、右半分に住んでや」

 話している間に、お互いの家が完成した。

 ウチは立て直しを兼ねて、少しだけ立派なお屋敷に。

 クゥハの分は、寝床さえあればいいというので、小さめのかわいらしい家にしてある。

 畑に植えているものも、多少変えた。
 ウチは、コメの栽培も始めている。せんべいの補充をするためだ。作物活性化の魔法をかけて、一瞬でコメは育った。
 あとはスケルトンに、コメの収穫を頼む。
 クゥハの畑面積は、少量程度にとどめた。そちらにも、収穫用のミニオン・スケルトンを配置している。あちらは主に、果物がメインだ。

「警備兵も、用意しとくわ」

 武装したスケルトンを、数体用意した。ドローンの役割を果たす精霊を、畑じゅうに飛ばす。コイツには、虫も退治してもらおうかな。

「ありがとうございます。おうちまで建ててくださって」

「いや。仕事はしてもらうで」

「ワタシは、なにを致しましょう?」
 
「前衛やな」

 家が完成したら、あの岩にあるダンジョンに潜ろうと考えている。

「あとは、ウチのトレーニングにも付き合ってもらいたい」

「お安い御用です。では早速、ダンジョンに向かいましょう」

「いやいや。今日はもう疲れたさかい、風呂にしよ」

「そうですね」

 中央に配置した大浴場で、お互い服を脱ぐ。魔物しか見ていないが、いちおう間仕切りもバッチリだ。
 
 風呂とキッチンは、中央に配置してある。二人で住むことを考え、いわゆる共用にした。
 寝るとき以外は、だいたい一緒にいる構図である。

「装備品を守る結界、便利ですね。キャンプ時でも荷物が気になって、水浴びしかできなかったので」

「ゆっくり、お湯に浸かってや」
 
 ウチは出来立ての岩風呂に、身体をつけた。

「あ~。ええわ~」

 これは、最高だろ。
 まさかエンドコンテンツで、ここまでゆったり湯に入れるとは。

「いいですね。こうしてのんびり、お湯に浸かるのも。久しぶりに、リラックスできました」

「気に入ってもらえたなら、なによりや」
 
 岩山に落ちていく夕日を見ながら、入浴する。

 それにしても、クゥハのプロポーションは見とれてしまうな。

 ウチはトランジスタグラマーだが、クゥハはそれ以上だった。弟子のカニエと、いい勝負かもしれない。あっちは自堕落ぽっちゃり系色白セクシーで、こちらは引き締まった褐色グラマータイプだ。

 入浴の後は、ライスメインで食事である。

 麦も手に入ったので、ドリアにしてみた。海鮮が手に入ったら、エビドリアかグラタンがいいかもしれない。

「おいしいです。こんな辺境で、ちゃんとしたゴハンが食べられるなんて」

「あんたは、一度外に出たほうがええかもな」

「いずれは、一緒に街へ繰り出してもいいですね」

「せやな。ところで、あのダンジョンなんやが」

 ウチはクゥハから、ダンジョンの詳しい説明を聞く。

「あのダンジョンは、巨大アラクネが巣食う凶悪なダンジョンです。岩山を切り開いたことで、地下にいたモンスターも地上に上がってきたようですね」

「アラクネは、地下でジッとしてるんか?」

「外出するタイプでは、ありません。獲物をおびき寄せる魔物ですね」

 アラクネは、積極的に外へ攻撃を仕掛けないらしい。
 

「ほなアラクネを倒して、この土地の安全を盤石なものにしよか。外に出るのは、そこから考えよ」

「そうですね。アラクネを撃退したら、布も手に入ると思いますよ」

「布か。ええな。手持ちの布しかなかったから、助かるで」
 
 ひとまず、目標は決まった。

 美人のご近所さんができただけでも、ウチとしてはテンション上がりまくりであるが。

(第一章 完)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位 転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・

気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした

高坂ナツキ
ファンタジー
衝撃を受けた途端、俺は美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生していた!? これは、自分が制作にかかわっていた美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生した主人公が、報われないサブヒロインを救うために人生を賭ける話。 日常あり、恋愛あり、ダンジョンあり、戦闘あり、料理ありの何でもありの話となっています。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

処理中です...