新大陸を開拓するため、幼女型モンスターに魂を転送した魔女は、後に邪神と崇められる(自力で幼女になりたかっただけやのに!

椎名 富比路

文字の大きさ
15 / 77
第三章 幼女は邪神として崇拝される(愛弟子よ、これがお前の師匠や

第15話 メタモルフォーゼしようじょ

しおりを挟む
 どれくらいの月日が、流れただろう。
 ウチの開拓村は、もうちょっとした街と言っても遜色ないくらいに、発展していった。

「アトキン、街がどんどん大きくなっていきますね」

 ダンジョン山の頂上でピクニックをしながら、クゥハが街を見下ろす。

「せ、せやな」

 ウチはサンドウィッチを食べながら、しみじみと街の光景を見渡した。
 
 山の下では、元ムカデの亜人種たちが、自分たちの領地を耕している。
 もうミニオンのスケルトンを、農民代わりに扱うこともない。町や村の住民が、手助けをしてくれる。
 スケルトンは建築や、街の警備役に専念することになった。

 このカツサンドだって、手作りではない。テネブライにできた街で、売っている物だ。住民と協議しながら改良に改良を重ねて、おいしく仕上がっている。
 
 住人なんて、最初はクゥハとたった二人だけだったのに。
 今では、人口一三〇〇人を超える街へ。

 パン屋やベリーのジャム売り場など、自分たちで商売を始める者も現れた。元々は魔物なんだから、物々交換でいいはず。なんなら、魔物のままで獲物を食い合えばいいのに。しかし彼らからすると、「邪神アトキン様の文化をマネすることが、信仰に繋がる」のだとか。

 どうもウチは、信仰の対象になってしまったらしい。

 通貨の概念も、覚えたようだ。

 ウチは、ダンジョンのクリア報酬であげた金銀財宝を、通貨として用いることにした。銅貨がほとんどだが。

 いつか、商人などが来たときに困らないように、通貨取引の練習をサせているのだ。
 
「魔物だ!」


 ときどき、よそから来た魔物が、ウチの領地を襲うときがある。領主ともなると、魔物たちが領地を狙って襲撃に来るのだ。

 特に問題はないので、ウチがぺしぺし。

 モンスターは撤退していった。

「おお、邪神様!」

「見事!」

 住民たちから、拍手喝さいを浴びる。

 いや、それほどでもないんだが。相手は、敵方のオークだったし。

 また、移民希望者がやってきた。住民が、増えることになる。
 
「おっしゃ。服でも作ったろ」

 ウチは作業場に戻った。住民のための衣服を作る。
 今までの彼らは、ただボロ切れや葉っぱを縫い合わせた服装のみだった。
 装備品作りの過程で、衣服を作る作業にも慣れる必要があると、ウチは思ったのである。
 
 ダンジョン攻略で得た【アラクネマシン】の糸を使って、服を縫う。

 アラクネマシンはどんなものかというと、「自動的に糸を出す、足踏み式のミシン」である。

 これまでも、住民のために寝具を作ってやった。布団や枕などを、アラクネの糸を使って。
 それ以来、住民はウチのことを【邪神:アトキン】と呼んで崇拝するようになった。
 いいのか悪いのか、まるでわからないけど。
  
「だんだん、うまくなっていませんか? 染め物のやりかたまで覚えて」

「いや、だんだんとモチベは落ちてるんや」
 
 お裁縫の知識など、ウチにはない。コスプレをやっていたツレの作業を思い出しつつ、適当に服を作っていく。

 ウチが作りたいんは装備品であって、かわいらしい服とかではないんだなと、思い知らされた。いくら心は乙女でも、向き不向きというものがある。
 
 衣装の知識を持っているやつが欲しい。外から連れてくるか。

 染料をふんだんに使ったカラフルな服を、移民たちは身につける。
 移民たちは、この上なく感謝した。
 
「あとは、家か。待ってや」

 食事を与えている間に、家の建築を始める。人口は増えたが、土地は余っている。多少人口爆発があったとしても、楽勝で耐えられるだろう。

「希望として、見晴らしのいい海沿いがええか。住処に近い山側がええか」

「海側がいいです」

「よっしゃ」

 ほとんどの人は、森が近い山側を選ぶ。彼らの中にも、新しい価値観が芽生え始めたのかもしれない。

 ウチが前に使っていたアジトの跡地に、家を建てる。木材を組み立てて、簡単な小屋を作るのだ。

「よっしゃ。こんなもんかな」

 いずれここも更に発展し、諸外国とも交流が行われるだろう。
 そのための港も、実は設計中だ。
 新しく入った移民には、港の管理をしてもらおうかな。

 いつか大陸外からの商人などが、この地に現れるだろう。そのとき売買の仕方などを学んでおかなければ、足元を見られる。

「なあ、クゥハ。ウチ、いつまでもこの格好ではアカンか?」

 ウチも、いつまでも魔物の姿では怪しまれそう。最悪、諸外国から攻撃を受けるかもしれない。
 クゥハはダークエルフなので、カブトさえ脱げばいいが。
 ウチはなあ。この幼女スタイルが、気に入りすぎているのだが。

「ならば、【メタモルフォーゼ】をしますか?」

 ウチが事情を説明すると、クゥハが提案してきた。

「メタモル……変身か?」

「はい。あなたも、街の魔物たちのように、人間に擬態ができますよ」

 しかも魔物は、魔力をまるで消費せず、人間に変身が可能だという。

「戦闘力は、落ちるのでは?」

「いいえ。ワタシが今、この状態なので」

 単にヨロイを着ているだけなので、戦闘力はまったく落ちないそうだ。
 
 ノーリスクで、人間に擬態できるとか。魔物、やばすぎるだろ。

「どうしてアトキンは、人間の姿を取らないのか、疑問だったんですよね」

「いや、必要性を感じへんかったからな」

 また人間になったら、また瘴気に侵されるのではないかと。

「どうやったらええんや?」

「スキル表に、やり方が載ってますよ」

 ウチは、ステータスをオープンした。

 たしかに、メタモルフォーゼという欄がある。『人間に擬態できる』と、書いてあった。
 やり方は、念じるだけ。形状の細かい変更は、元の姿に依存する、と。
 なるほど。幼女がオトナのお姉さんになるのは、不可能ってわけだな。まあ、いいか。

「クゥハ。新しく入ってきた移民を、港まで連れてきたってや」

「はい」

 人払いをして、メタモルフォーゼに備えて念じる。

 単なる幼女だと、商人や貴族たちに舐められそうだ。ならば、こっちもカリスマ性あふれる淑女としての姿を、手に入れるべきか。
  
「では、メタモルフォーゼ」

 さて、この姿が人間態を取ると、どうなるのやら……。

「まあまあやな」

 姿見で、自分の様子を確認する。
 黒髪ロン毛ツインテの幼女が、立っていた。
 ウチは、自分の胸を触る。弾力、問題なし。
 バストもヒップも、トランジスタグラマーのままだ。プロポーション的に、問題なし。

「悪くはないかな」

 あとは、衣装だ。
 ウチはあまり、着飾るのはスキではない。コスプレをしていたツレの趣味にも、正直ついていけなかった。生地や着心地などこだわりが強すぎて。なにより、ゴスロリすぎるのがイマイチだったなーと。

 ただ、貴族を相手にするなら、それなりの服装でお招きしなければ、無礼というもの。

 仕方なく、フリフリ全開のワインレッド衣装に身を包む。

「ただいま戻りました。って、すごい格好ですね」

「そうか? ウチとしては、あまり納得がいかんのやが」

「いえいえ。今のお姿にピッタリですよ。色白の肌にワインレッドが映えて、お人形さんみたいです」

 そのお人形さんっぽいのが、人間臭くないから苦手なのだよなぁ。

「ほんで、クゥハ。手に持ってるのはなんや?」
  
「そうでした。アトキン、港にこんなものが止まっていました」

 クゥハは、一羽の鳥を手に持って連れていた。
 鳥の足首には、紙切れが巻かれている。

 これは、手紙?

「差出人は……カニエ!? あいつ、ここがようわかったな!?」

「どなたなんです?」

「ウチの生前の、弟子や」

 手紙を開く。

「拝啓、アトキン・ネドログ様。あなたが亡くなって……もう三〇年経ちましたがぁ!?」

 さ、三〇年だと?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位 転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした

高坂ナツキ
ファンタジー
衝撃を受けた途端、俺は美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生していた!? これは、自分が制作にかかわっていた美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生した主人公が、報われないサブヒロインを救うために人生を賭ける話。 日常あり、恋愛あり、ダンジョンあり、戦闘あり、料理ありの何でもありの話となっています。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...