6 / 9
第6話 オンラインゲーム世界の意味深カップル
しおりを挟む
怠惰な一日は、朝からゲームに限る。といっても、デスマーチを終えて起きたのは昼前だが。
「この人、ネカマかな? 私を狙ってんのかな?」
白瀬が遊んでいるのは、オンラインゲームだ。
主観視点でファンタジー世界を巡る話である。
白瀬はもっさりした男キャラを使っていた。身バレ対策だそうで。思い入れを持ちたくないのと、言い寄ってこられないための防衛策で、かなりブサイクにキャラメイクしている。ジョブも不遇職だ。しかも鍛えていない。
なのに、美少女魔法使いキャラに言い寄られていた。デブ体型から、盾役前衛職と思われたのだろう。
「もう、ついてこないでよ」
「なんでお前、ゲームまでうちに来るんだよ?」
「うちには、ゲーミングPCなんてないもん。あ、どっか行った」
オレと話している間に、話しかけてくれたプレイヤーが去っていく。無視されたと思ったんだろう。白瀬はあいさつの仕方すらわからないだけなのだが。というか、オンラインゲームなのにパッドを使っている。会話用に、キーボードを触ろうともしていない。
「人と話す気がないなら、オフラインでやれよ。邪魔なんだよ」
「だって、それだと周りのカップルが見れないじゃん! 私はイチャイチャが見たいの!」
世界平和より、他人のイチャラブ鑑賞を優先するとは。
ホントコイツは、自分に言い寄ってくる相手には冷たい。「自分なんて愛される価値がない」という自己肯定感の低さが、白瀬から人を遠ざけていた。
違うな。「愛し合っているカップルが見たい」という欲求が、やたら強いだけだな。
以前どこかの配信者が「メンヘラって、セックスさせてくれる都合のいい女と思ってるでしょ? 違うよ。捨てられるのはキミたちの方だから」と言っていた。セックスはさせてくれるが、相手に興味はないので次々と男をとっかえひっかえするのだとか。今ならその気持がわかるなぁ。
「ねえ、小宮山くん、この二人どう思う?」
白瀬が、ずっと付き添っている男女アバターを見つけた。
あと、お気づきかと思うが、オレたちには恋愛感情はこれっぽっちもない。
「幼なじみなのに、お互い名字呼び」という段階で、察していただければ。
「配信者だろ?」
「でもさ、オンゲで結婚するって言うじゃん。同性同士とかがさ」
どこまでガチなのかはわからないが。
「この二人は、どうなんだろうね」
「知るかよ。いいからお前もうオフラインでやれよ。ゲームでもコミュニケーション取れねえんだから」
「なに言ってんの? ゲームはコミュニケーションを取るためのツールじゃないでしょ!」
「オンライゲーム全否定!」
こいつにとって、ゲームは一人でコツコツとやるものなのである。
ゲームでさえ、友だちを作ろうと考えない。
そこはオレと同じなのだ。
「いいじゃん。もういつもみたいに縦シューとかやろうぜ」
そう。オレがゲーミングなんて買ったのは、オンゲをやるためじゃない。やたらハイスペックを要求される縦シューを遊ぶためだ。
「だねぇ」
白瀬はあっさり、キャラを破棄した。
「この人、ネカマかな? 私を狙ってんのかな?」
白瀬が遊んでいるのは、オンラインゲームだ。
主観視点でファンタジー世界を巡る話である。
白瀬はもっさりした男キャラを使っていた。身バレ対策だそうで。思い入れを持ちたくないのと、言い寄ってこられないための防衛策で、かなりブサイクにキャラメイクしている。ジョブも不遇職だ。しかも鍛えていない。
なのに、美少女魔法使いキャラに言い寄られていた。デブ体型から、盾役前衛職と思われたのだろう。
「もう、ついてこないでよ」
「なんでお前、ゲームまでうちに来るんだよ?」
「うちには、ゲーミングPCなんてないもん。あ、どっか行った」
オレと話している間に、話しかけてくれたプレイヤーが去っていく。無視されたと思ったんだろう。白瀬はあいさつの仕方すらわからないだけなのだが。というか、オンラインゲームなのにパッドを使っている。会話用に、キーボードを触ろうともしていない。
「人と話す気がないなら、オフラインでやれよ。邪魔なんだよ」
「だって、それだと周りのカップルが見れないじゃん! 私はイチャイチャが見たいの!」
世界平和より、他人のイチャラブ鑑賞を優先するとは。
ホントコイツは、自分に言い寄ってくる相手には冷たい。「自分なんて愛される価値がない」という自己肯定感の低さが、白瀬から人を遠ざけていた。
違うな。「愛し合っているカップルが見たい」という欲求が、やたら強いだけだな。
以前どこかの配信者が「メンヘラって、セックスさせてくれる都合のいい女と思ってるでしょ? 違うよ。捨てられるのはキミたちの方だから」と言っていた。セックスはさせてくれるが、相手に興味はないので次々と男をとっかえひっかえするのだとか。今ならその気持がわかるなぁ。
「ねえ、小宮山くん、この二人どう思う?」
白瀬が、ずっと付き添っている男女アバターを見つけた。
あと、お気づきかと思うが、オレたちには恋愛感情はこれっぽっちもない。
「幼なじみなのに、お互い名字呼び」という段階で、察していただければ。
「配信者だろ?」
「でもさ、オンゲで結婚するって言うじゃん。同性同士とかがさ」
どこまでガチなのかはわからないが。
「この二人は、どうなんだろうね」
「知るかよ。いいからお前もうオフラインでやれよ。ゲームでもコミュニケーション取れねえんだから」
「なに言ってんの? ゲームはコミュニケーションを取るためのツールじゃないでしょ!」
「オンライゲーム全否定!」
こいつにとって、ゲームは一人でコツコツとやるものなのである。
ゲームでさえ、友だちを作ろうと考えない。
そこはオレと同じなのだ。
「いいじゃん。もういつもみたいに縦シューとかやろうぜ」
そう。オレがゲーミングなんて買ったのは、オンゲをやるためじゃない。やたらハイスペックを要求される縦シューを遊ぶためだ。
「だねぇ」
白瀬はあっさり、キャラを破棄した。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる