失業暗黒騎士、勇者の姪である姫が作った街の門番に転職するも、姫様のほうが明らかに強い

椎名 富比路

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第一章 元・魔王四天王 シモン・セルバンデスの苦悩

第3話 元騎士団長

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 草原にぽつんとそびえ立つその塔は、ひときわ異彩を放っている。目立つところなのに、すべてを拒絶するかのような気配がした。
 捨てられた廃材などを建材として、ただの廃墟砦が巨大な塔となっていると聞いたことがあったが。
 迫力が、想像を超えている。ここまで、巨大な塔だったとは。

「待てコラ! 【バーストフレア】!」

 冒険者パーティの魔法使いが、俺に向けてオレンジ色の火球を投げつけた。

「シュ!」

 俺は乗っている角を足で操作して、火球を打ち返す。

「うわあああ!」

 跳ね返った火球が、冒険者どもの足元に着弾した。

 さて、アクータ塔に入ったぞ。

「待てよ! ほんとに、ここに逃げおおせると思ってるのか?」

 冒険者に呼び止められて、俺は振り返る。

 その冒険者共の顔は、哀れみに満ちていた。

「だったらなんだってんだ」
 
「生きて帰れねえぞ!」

「上等だよ。やれるもんなら、やってみろってんだ!」

 俺はそっぽを向き、アクータの塔へ足を踏み入れる。

 冒険者は、追ってこない。というか、ビビって足が動かないようだ。それほどの、ダンジョンだってのか?

 アクータの塔は、高層都市と呼ぶに近い。
 塔のあちこちに店があり、物々交換でやり取りをしている。
 金も回っているようだが、あまり使い道はないと思っていたほうがよさそうだ。

 ここで、俺はやっていけるのか?

「おい、そこのお前。待て」

 一人の女性が、俺を呼び止めた。
 
「ん……お前は、ブレンダ!?」

 小国コギレインの、騎士団長様ではないか。
 
 コギレイン王国は、勇者やエラス帝国と同盟を結んでいる。

「まさかこんな所で、魔王軍四天王の一人と対峙できるとはな。シモン・セルバンデス」

 ブレンダの手は、今にも背中の剣に触れようとしていた。

「もう俺は、魔王軍ではないんだ」

 警戒を解いてもらうため、俺は角型の槍をしまう。

「そうか。実はワタシも、騎士団長の座を捨てた」

「マジかよ?」

「ああ。引退した。今は個人的に、ヒナ王女のお側についていたいと思っている。彼女の理想は、気に入った」

「人と魔族の共存が、か?」

「ああ。ここはならず者たちの集まりとウワサされているが、それなりに信頼をし合っている。住めば都とは、よく言ったものだな」
 
 コギレインに絶対の忠誠を誓っていたはずのブレンダが、えらい変わりようだ。

 そこまで信頼を寄せている、相手なのか。ヒナという女性は。

「すぐに武装解除したな。俺を警戒しないのか?」

「わかるさ。張り紙を見たんだろ?」

「ああ、これか」

 俺は、張り紙を見せる。
 
「第一テストは、ひとまず合格だな。では」

 ブレンダが、背中の剣にてをかけた。

「第二テストと行こう」

 結局、戦うのかよ!?
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