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第四章 Ne pas se mettre en forme, Mauvais voeux(うぬぼれるなよ 邪悪な願い)
貴族と、王族と、平民
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メルツィとレミ教授の後を、ローザと貴族たちが追う。
急いで保健室に入り、レミ教授はクロードを眠らせた。
神妙な面持ちで、貴族の娘たちが状況を見守る。
にわかにざわつき始めたので、レミ教授が「お静かに」と娘たちをたしなめた。
「頭の傷は大したことはなかろう」
丁寧に、クロードの頭に包帯を巻く。
続いて、レミ教授はローザの方を看る。
ローザの足首を捻り、痛む箇所を探った。
「あなたの方は、軽い捻挫でしょうな。もう安心なさい」
ローザの足首に薬草を用いた湿布を貼り、処置を終える。
「ありがとうございました」
メルツィは胸をなで下ろした。
見た感じでは、レミ教授はどう見ても「悪の組織を統べる首魁」とは思えないのだが。
「ボクは、ダメな教師です。生徒にケガまでさせて」
クロードだけでなく、生徒にもしものことがあったら、自分は教師失格だ。上司であるアンにも顔向けできない。
「あなたのせいではありますまい。子どもは何をしでかすか分かりませぬ。我々が手本を示し、優しい子へと育てていく。彼女たちは、まだ道の過程なのです。行動の善し悪しなど、まだ判別できますまい」
メルツィも、突き飛ばしたいじめっ子たちに体罰をふるう気はない。
話し合って、ことの原因を探らねば。
ここできつく注意したとしても、またどこかで言動がエスカレートするだけ。
まずは、いじめの元を絶つ。
「キミたちは、自分たちが何をしたのか、分かっているんだよね?」
最大限押さえた声で、メルツィは叱る。
コトの重大さまではちゃんと分かっているのだろう。娘たちは言い返してこない。
ローザも、三人を咎めるような行いはしなかった。
「どうして、こうなったんだい?」
「わたしたちは、クロード様の寵愛を受けているローザさんが憎らしくて。ちょっとケガをさせるつもりだったんです。少しでも、わたしたちを怖がってくれたら」
善悪の領域が分からなかった故の犯行か。
「でも、クロード様が平民をかばうなんて思わなかった! 相手は平民なのに、どうして?」
イタズラ心のつもりが、クロードの介入で自分たちの行いがいかに恐ろしい所業だったかを思い知らされたのだと。
「クロードさんにとって、ローザさんは平民じゃないんだよ」
「どうして姫様は、わたくしたちを取り込まず、平民と仲良くなさるの? 貴族と一緒にいた方が自然でしょうに」
貴族の娘たちは、苛立ちを隠さない。
「先生も、平民の肩を持つのですか?」
「平民も貴族も関係ない!」
メルツィは、力の限り怒鳴った。直後、娘たちの頭を撫でる。
「二人はね、友達っていうんだよ」
急いで保健室に入り、レミ教授はクロードを眠らせた。
神妙な面持ちで、貴族の娘たちが状況を見守る。
にわかにざわつき始めたので、レミ教授が「お静かに」と娘たちをたしなめた。
「頭の傷は大したことはなかろう」
丁寧に、クロードの頭に包帯を巻く。
続いて、レミ教授はローザの方を看る。
ローザの足首を捻り、痛む箇所を探った。
「あなたの方は、軽い捻挫でしょうな。もう安心なさい」
ローザの足首に薬草を用いた湿布を貼り、処置を終える。
「ありがとうございました」
メルツィは胸をなで下ろした。
見た感じでは、レミ教授はどう見ても「悪の組織を統べる首魁」とは思えないのだが。
「ボクは、ダメな教師です。生徒にケガまでさせて」
クロードだけでなく、生徒にもしものことがあったら、自分は教師失格だ。上司であるアンにも顔向けできない。
「あなたのせいではありますまい。子どもは何をしでかすか分かりませぬ。我々が手本を示し、優しい子へと育てていく。彼女たちは、まだ道の過程なのです。行動の善し悪しなど、まだ判別できますまい」
メルツィも、突き飛ばしたいじめっ子たちに体罰をふるう気はない。
話し合って、ことの原因を探らねば。
ここできつく注意したとしても、またどこかで言動がエスカレートするだけ。
まずは、いじめの元を絶つ。
「キミたちは、自分たちが何をしたのか、分かっているんだよね?」
最大限押さえた声で、メルツィは叱る。
コトの重大さまではちゃんと分かっているのだろう。娘たちは言い返してこない。
ローザも、三人を咎めるような行いはしなかった。
「どうして、こうなったんだい?」
「わたしたちは、クロード様の寵愛を受けているローザさんが憎らしくて。ちょっとケガをさせるつもりだったんです。少しでも、わたしたちを怖がってくれたら」
善悪の領域が分からなかった故の犯行か。
「でも、クロード様が平民をかばうなんて思わなかった! 相手は平民なのに、どうして?」
イタズラ心のつもりが、クロードの介入で自分たちの行いがいかに恐ろしい所業だったかを思い知らされたのだと。
「クロードさんにとって、ローザさんは平民じゃないんだよ」
「どうして姫様は、わたくしたちを取り込まず、平民と仲良くなさるの? 貴族と一緒にいた方が自然でしょうに」
貴族の娘たちは、苛立ちを隠さない。
「先生も、平民の肩を持つのですか?」
「平民も貴族も関係ない!」
メルツィは、力の限り怒鳴った。直後、娘たちの頭を撫でる。
「二人はね、友達っていうんだよ」
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