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第四章 Ne pas se mettre en forme, Mauvais voeux(うぬぼれるなよ 邪悪な願い)
地底の子どもを助けるために
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「アン、学校側が騒がしいよ」
イヤな予感がして、アンは学校へ向かう。
学園の中へ。
複数の職員が、縄で縛られた賊を役所の役員に突き出している。
役員は、賊を護送用の馬車に載せていく。
「ああ、王妃殿下。どうしてこんな所に?」
職員と役員が、アンにひざまづく。
「作業を続けてちょうだい。それより、何があったの?」
「誘拐未遂です!」
賊たちは、子どもたちを連れ去ろうとしていたらしい。
幸い、子どもたちは職員に連れられて無事に帰ったという。
「おうひでんか!」
職員をかき分けて、ローザがアンの側に寄ってきた。
「ローザ、あなたも連れ去られそうになったのね?」
コクコクと、ローザは首を振る。
「でも、クロード様が」
ローザは、ハンカチをアンに渡す。
確かに、クロードの所有物だ。
名前が刺繍されている。
「クロード様がわたしにくれたのです。でも、わたしは助けることができなくて」
「あなたのせいじゃないわ。悪いのはレミ教授ね?」
アンが聞くとローザは「はい」と返した。
「今、メルツィ先生が後を追っています。でも」
「二人を心配してくれてありがとう。あなたは早くお家に帰りなさい」
職員に子どもたちを送らせる。
だが、賊の逃亡先は、捕まえた悪漢たちから聞き出せない。
「どこへ逃げたか教えないつもり?」
「ハナから知らない! オレたちは、『ガキをさらえ』とあのジジイから指示されただけで。後は自分についてこいとだけしか」
縛り上げられても真相を言わないあたり、本当に知らない様子だ。
学園を出て、リザと今後を話し合う。
クロードの足取りは掴めない上に、メルツィとも連絡が取れない。
王宮に戻るか?
だが、ヘタに兵士を動かして騒ぎが大きくなれば、一般人まで巻き込んでしまう。
そのとき、一匹のゾウが、アンの前に舞い降りた。
「伝史聖獣《レ・マシーン・ド》 リル!」
呼んでもいないのに、リルがアンの前に出現するとは。
このゾウも、国の一大事を察知したのだろう。
よほどの事態なのだ。
ゾウは長い鼻を伸ばし、クロードのハンカチを嗅ぐ。
匂いを確認できたのか、大きく吠えた。
広場までアンを誘導する。
「何をしようというの?」
アンの疑問に答えるかのように、ゾウは虚空を見上げた。
なんと、鼻先が円錐状に変形する。
ゾウは鋭い鼻を地面に突き刺し、草むらを掘り始めた。
土砂をまき散らしながら、ゾウは地下へと歩を進める。
「どうやら、クロードは地下にいるみたいね」
一旦停止して、ゾウはアンの方へシッポをしきりに振った。
「掴めというのね」
ゾウの主張をそう受け止めて、アンはシッポを握る。
再度、地面を掘る作業が再開された。
「感じるわ。あの子の鼓動を!」
アンにも、クロードの気配が確認できる。
ゾウの鼻を使い、地底深く掘り進む。
イヤな予感がして、アンは学校へ向かう。
学園の中へ。
複数の職員が、縄で縛られた賊を役所の役員に突き出している。
役員は、賊を護送用の馬車に載せていく。
「ああ、王妃殿下。どうしてこんな所に?」
職員と役員が、アンにひざまづく。
「作業を続けてちょうだい。それより、何があったの?」
「誘拐未遂です!」
賊たちは、子どもたちを連れ去ろうとしていたらしい。
幸い、子どもたちは職員に連れられて無事に帰ったという。
「おうひでんか!」
職員をかき分けて、ローザがアンの側に寄ってきた。
「ローザ、あなたも連れ去られそうになったのね?」
コクコクと、ローザは首を振る。
「でも、クロード様が」
ローザは、ハンカチをアンに渡す。
確かに、クロードの所有物だ。
名前が刺繍されている。
「クロード様がわたしにくれたのです。でも、わたしは助けることができなくて」
「あなたのせいじゃないわ。悪いのはレミ教授ね?」
アンが聞くとローザは「はい」と返した。
「今、メルツィ先生が後を追っています。でも」
「二人を心配してくれてありがとう。あなたは早くお家に帰りなさい」
職員に子どもたちを送らせる。
だが、賊の逃亡先は、捕まえた悪漢たちから聞き出せない。
「どこへ逃げたか教えないつもり?」
「ハナから知らない! オレたちは、『ガキをさらえ』とあのジジイから指示されただけで。後は自分についてこいとだけしか」
縛り上げられても真相を言わないあたり、本当に知らない様子だ。
学園を出て、リザと今後を話し合う。
クロードの足取りは掴めない上に、メルツィとも連絡が取れない。
王宮に戻るか?
だが、ヘタに兵士を動かして騒ぎが大きくなれば、一般人まで巻き込んでしまう。
そのとき、一匹のゾウが、アンの前に舞い降りた。
「伝史聖獣《レ・マシーン・ド》 リル!」
呼んでもいないのに、リルがアンの前に出現するとは。
このゾウも、国の一大事を察知したのだろう。
よほどの事態なのだ。
ゾウは長い鼻を伸ばし、クロードのハンカチを嗅ぐ。
匂いを確認できたのか、大きく吠えた。
広場までアンを誘導する。
「何をしようというの?」
アンの疑問に答えるかのように、ゾウは虚空を見上げた。
なんと、鼻先が円錐状に変形する。
ゾウは鋭い鼻を地面に突き刺し、草むらを掘り始めた。
土砂をまき散らしながら、ゾウは地下へと歩を進める。
「どうやら、クロードは地下にいるみたいね」
一旦停止して、ゾウはアンの方へシッポをしきりに振った。
「掴めというのね」
ゾウの主張をそう受け止めて、アンはシッポを握る。
再度、地面を掘る作業が再開された。
「感じるわ。あの子の鼓動を!」
アンにも、クロードの気配が確認できる。
ゾウの鼻を使い、地底深く掘り進む。
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