じゃじゃ馬王妃! ~フランス王妃アン・ド・ブルターニュが、悪徳貴族と魔族共を裁《シバ》く!~

椎名 富比路

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第四章 Ne pas se mettre en forme, Mauvais voeux(うぬぼれるなよ 邪悪な願い)

アン、娘との再会

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「殿下、こちらです!」 

 メルツィの呼び声を聞き、ゾウの背後から、アンが飛び降りた。クロードを抱いたメルツィに駆け寄る。

「させるか!」
 レミ教授が、アンに向かって手をかざした。

 黄金色をした雷撃が、アンにまとわりつこうとする。

 アンはシルバーソードを顔の前に構えて、電撃を跳ね返す。

「ぬおおお!」
 自分の術で反撃を食らい、レミ教授は吹っ飛ぶ。

「娘をありがとう、メルツィ」
 アンはメルツィから、クロードを受け取った。

「いえ。自分がしっかりしていれば、こんなことには」
「とんでもないわ。無事に娘を助け出せたんですもの」

 メルツィがいたから、クロードを無事に助け出せた。

 メルツィを学園に入れなければ、学校内はもっと悲惨な結末を迎えていただろう。

「しっかりしなさい、クロード」

 クロードが、目を覚ました。どこにもケガは見当たらない。
 間一髪だったようだ。


「先生と、おかあさま?」


「いいえ、違うわ」
 実の母なのに、名乗れないのがもどかしい。

 しかし自分は、バロールからフランスを守る身である。
 もしも家族に正体が知られたら、家族を危険にさらしてしまう。

 ましてクロードは優しい子だ。
 母が危険意味を投じていると知れば、気が気でないだろう。
 そんな思いを、娘にはさせたくなかった。

「でももう大丈夫よ。あなたの母上の元へ。今は眠りなさい。起きたら、母上の膝にいるわ」

「はい」と、クロードはまた眠りに落ちた。まだ、クロードは寝ぼけているらしい。母を確認できないようだ。

 後でかけつけたリザに、アンはクロードを託す。

「リザ、お願い」

「任せてよ」

 アンはクロードを抱きかかえ、リザに預けた。

「待て貴様!」
 レミ教授が、リザに向けて手をかざす。クロードに当たるのも構わず、雷撃を浴びせる気だ。

 ひと睨みで、アンはレミ教授を制止させる。

「ぐぬぅ」
 アンの気迫に圧倒されてか、レミ教授が後ずさった。

 この惨状はなんだ? アンは、倒れている子どもたちを見渡す。

 目が開いている。息はあるようだ。が、死んだような目をしている。

「メルツィ、この子たちは?」
「学園の生徒です。洗脳されてしまったようで」
 今はレミ教授の術が解け、眠っているだけらしい。

 アンの中に、怒りが燃えさかるのが分かった。
 こんな小さな子どもたちを、野望のために改造するなんて。

「手伝ってメルツィ」
「承知!」
 メルツィに指示を出し、アンは子どもたちをリルに載せた。

 最後に、リザがクロードをおぶったまま、ゾウにまたがる。
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