じゃじゃ馬王妃! ~フランス王妃アン・ド・ブルターニュが、悪徳貴族と魔族共を裁《シバ》く!~

椎名 富比路

文字の大きさ
91 / 114
第四章 Ne pas se mettre en forme, Mauvais voeux(うぬぼれるなよ 邪悪な願い)

レミ教授、余の顔を忘れたか!

しおりを挟む
「リザ、あなたはクロードを連れて、子どもたちをレオの元へ。彼ならきっと子どもたちを治してくれるでしょう」

「アタシに任せてくれ」

「リル、彼女たちを外に運び出して!」

 自らの役割を把握したのだろう。カラクリ仕掛けのゾウは、リザと女生徒たちを載せて去って行く。


「フランスの領土に秘密基地を作るだけでも大罪、あまつさえ、あんな小さな命さえ弄ぶなど、許しはしない! 覚悟せいレミ教授!」

「黙れ女冒険者風情が! 何様のつもりだ!」

 怒鳴り散らすレミ教授に向かって、アンは言い放つ。









「ジャン・ド・サン=レミ教授、余の顔を忘れたか!」






 レミ教授が分かるように、アンは真正面をむいた。

 アンの顔を見た後、レミ教授はたじろぐ。

「おおお、アン・ド・ブルターニュ王妃殿下!」

 洗礼を浴びるかのように、レミ教授やその配下たちが、一斉にひざまずいた。

「よくも、余の娘をたぶらかそうとしたわね!」

「なっ、なんですとぉ!?」

 レミ教授は、ようやく自分が連れ去った娘が何者か、把握したらしい。

 誰を敵に回したのかも。

「ジャン・ド・サン=レミ教授、その方、子どもたちの夢を奪い、フランス転覆の道具に使おうとしたその罪、言語道断である。その場にて首をはねる!」

「おのれ、あと一歩のところを。者共、であえ! アン・ド・ブルターニュなんぞが、この場所に来るはずもなし! 斬り捨てい!」
 レミ教授が、部下に号令を掛ける。



 アンは、銀色の大剣を顔の側まで掲げた。
 大剣を振って、チャキっと音を鳴らす。



 奇声を上げて、一人の兵士がアンに斬りかかる。

 シルバーソードで相手の武器を弾き飛ばし、脳天に一発食らわせた。

 刃を潰された、殺傷力のない剣である。
 それでもアンがひとたび振れば、その威力は鈍器をも上回る。

 頭にアンの剣を打ち込まれ、敵は大の字になって倒れ込む。

 体中を鎧で固めた、重装備の兵隊が向かってきた。
 メルツィより身体の大きい男が、丸太のような棍棒を振り降ろす。

 アンは意に介さない。剣を片手に構え、棍棒をスルリと抜ける。
 カウンターで剣を相手の脇腹に打ち込んだ。鎧越しから敵のアバラを砕く。鎧のスキマからではない。一番硬い部分を叩き潰した。


 棍棒を落とし、兵隊は戦意を喪失する。
 ひしゃげた鎧のように、兵隊の心は折れてしまったらしい。

「くらえ!」
 レミ教授が、手から電撃を放つ。

「おっと!」

 聞き覚えのあるかけ声が聞こえたかと思えば、どこからともなくクナイが飛んできた。

 アンは自分の近くに飛んできたクナイを蹴り飛ばす。

 クナイが避雷針となって、レミ教授の電撃を中和した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...