神が愛した、罪の味 ―腹ペコシスター、変装してこっそりと外食する―

椎名 富比路

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パンケーキは、罪の味 ~港のオープンカフェのパンケーキ~

王女とショッピングとラーメン

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 お稽古は午後までに終わるというので、わたしは教会へ帰宅してのんびり過ごします。

 昼食前に、また馬車が教会前に停まりました。

 馬車の中では、ウル王女が。またしても、変装しています。今日は、町娘風ですね。

「お待たせいたしましたわ。参りましょう」
「お昼は、貴族様とはご一緒しないんですね?」

 今はちょうどお昼時です。てっきり、豪華なランチだと思っていたのですが。

「あんな方々と一緒では、息がつまりますわ。それに、食べたいラーメンがございますの!」

 すっかり、庶民派が板についてしまったみたいです。

「王族なのに、やりたい放題ですね。王族だからでしょうか?」
「どちらかというと、あなたとお話がしたい方が勝っていますわね」
「その心は?」
「悪口ではない、軽口を言い合える友だちが欲しいのですわ」

 なるほど。会話には飢えているようですね。

 王女が朝から行きたがっていた、ステフさんのラーメン屋でお昼にします。

「いらっしゃ……ああ、王……」

 ステフさんは、変装していても王女とすぐにわかってしまったようでした。

 王女はステフさんに、「シーッ」と指を立てます。王女とバレて、店内がパニックになってはいけません。

 黙って、しょうゆとんこつラーメンとから揚げを作っていただきます。

「ううーん、ウワサに違わぬおいしさですわ!」

 セレブらしからぬ豪快な麺すすりで、ウル王女はラーメンを堪能しました。

 王女は美人なので、数名の男衆が声をかけたがっていたようです。が、わたしが冒険者風の姿でガードしていたので、誰も言い寄ってきません。

「この後は、どちらへ?」
「ショッピングでもします。腹ごなしですわ」

 街へ出て、小物類や書物、洋服などを見て回ります。

「うわあ。わたしには、絶対手が出ない品ばかりですね」
「見ているだけでも、楽しいものです」

 一応、わたし向けに冒険者用のアイテムなども見繕ってくださいました。装備の手入れ、薬草やポーションの補充をしてもらえるとは。

「すいません。あなたは冒険者とさほど接点はありませんでしょうに」
「いえいえ。付き添ってもらっているお礼です。また護衛などを頼む際は、よろしく」
「はい。全力でお守りしましょう」

 ここまでしてもらったんです。お安い御用ですよ。

「ついでに、二、三ほど質問しても?」
「ええ、どうぞ」
「ポーションですが、ご自身でお作りには?」

 薬草の調合が自分でできれば安上がりなのでは、と、王女は思ったようでした。

「簡単なものなら作れますが、即興ですね」

 しっかり調合するには、野草やキノコの知識も必要です。
 ならば、市販のほうが安全ですね。
 ヘタに手を出すと、資金だけ費やしてゴミを作り出してしまうので。

「わたしは回復職ではありますが、薬剤師ではありませんので」
「エルフのお友だちは、薬草やキノコ類にお詳しいのでしょう? 教わりませんの?」
「覚える量が膨大で……」

 ポーションの調合一つとっても、大変なのです。「ただ草をすりつぶせばいいわけではない」と、さんざん教わったのでした。

「花粉は何グラム、種が何粒必要で、その種類を把握だってバカになりません。一度でも調合をしくじると、副作用が出るとか色々と」
「ああ、わかりました」
「本当に、外の世界の勉強に熱心ですね」
「普段から外に出られませんから」

 王女は苦笑します。

「ですから、冒険者さんの装備や道具を見て、どういう冒険をするのか妄想を膨らませるのですわ」

 また、冒険者の装備の生々しさを観察し、いかに旅が危険かを想像するのだそう。

「あなたといると、とっても楽しい冒険ができそうですわ」
 
 目的地までの場所の中で、王女はそう言いました。
  
「ど、どうでしょうか? 食べ歩きしかない旅になりそうですね」
「いいじゃありませんか。それだけ平和だということですわ」
 
 馬車が停まりました。

「さて、お目当てのパンケーキですわ」
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