神が愛した、罪の味 ―腹ペコシスター、変装してこっそりと外食する―

椎名 富比路

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パンケーキは、罪の味 ~港のオープンカフェのパンケーキ~

ジョッキで飲むアイスコーヒーは、罪の味

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「着きましたわ」

 馬車が到着したのは、海が見えるカフェでした。

「それにしても、随分とオシャレな場所をご存知で」

 オタカフェに連れて行かれるのだろう、と思っていましたが。 

「理由は、後でお教えしますわ」

 席はすべて屋外で、全席のテーブルにパラソルを差しています。

「注文する場所は、あちらですわ」

 カウンターでオーダーするみたいですね。黒板の立て看板に、『オススメパンケーキ』というカワイイ文字が。

「わたくしにお任せを」

 列に並び、自分たちの番を待ちます。

 数分後、ようやくオーダーできるように。 

「いつものを、二つ」
「かしこまりました。お飲み物は、お先にお出ししても?」
「結構ですわ。よろしく」
「では、こちらの番号札を席に置いてお待ちください」

 一礼をして、ウエイターさんはキッチンへ行きます。

 客層は、商人系の方が多数ですね。
 労働者風の方もいますが、紙カップの安いコーヒーとドーナツをテイクアウトしていました。

 中には、見慣れた方も……。

「ごぶさたしています、ゴロンさん!」
「ちわー。シスターさん」

 ゴロンさんを見つけました。【出前ニャン】という、獣人族で構成されたデリバリーサービスの従業員です。

「ここでもバイトですか?」
「はい。ここのパンケーキ、めちゃうまいんですよ。冒険者ギルドから遠いんで、配達頼まれてまして。で、そちらの方は?」
「えー、っとですね」

 どうしましょう?
 王女を「この国のお姫さまです」なんて紹介したら、パニックになりますよね?

「ごきげんよう。ウルという者です。クリスさんとは、魔法学舎の同期でして、久しぶりにお話しよう、となりました」
「そうですかー。シスター・クリスさんって、学生時代ってどんな感じだったんです?」
「とても聡明な方でした。弱い者いじめを嫌う、かっこいい方でしたよ。わたくしも、色々と助けていただきました」
「へーえ! オイラも助けられたんですよ! では、これで!」

 壊れないようにパンケーキを慎重に持ちながら、ゴロンさんは慌ただしく去っていきました。

「あなたを助けた覚えなんて、ないのですが?」

 彼女の暴れん坊っぷりは、わたし以上です。
 その豪腕で、どれだけ男子児童を泣かしたか。

「勉強を教えてくださいましたわ」
「それは、あなたが『赤点取りそうだ』と泣きついてきたからでしょうが」
「でも、助かりましたわ」

 ウル王女は、「間違ったことは言っていない」という態度を取ります。

「まあまあ」と、王女に席へ案内されました。

 ウエイターさんが注文を持ってきてくれます。

「おまたせしました。アイスコーヒーです」
「ありが……ええ!」

 なんと、ジョッキでコーヒーがきましたよ。それも鉄製です。

「ドワーフの鍛冶屋が開発した、特殊な軽い鉄です。サビないんですよ」
「ほへー。冷たいっ」

 氷が鉄に伝わって、キンキンに冷えていますね。これはおいしそう。

「ミルクとシロップもどうぞ」
「ありがとうございます」

 ミルクをたっぷり、シロップちょっぴりいただきます。

 ウル王女のコーヒーも、ミルクとシロップが入りました。
 ガラガラガラ、とお下品にジョッキを鳴らして混ぜています。
 マドラーはありますのに。

 わたしも、お下品に行きましょうかね。なんか儀式っぽいですし。

「では、学友のために。乾杯!」
「か、かんぱーい」

 ゴクゴク……こ、これは罪深うまい!

 ヤバいですね。ガブガブ飲めちゃいます。
 氷で水増ししているのかと思えば、結構なボリュームですね。

 外の暑さもあって、うれしい冷たさです。

 カラカラカラ……ドン。

 
 何事かと思ったら、王女がジョッキを置く音でした。

「お父上のマネですか?」
「ええ。父王はお酒を飲んだ後、必ずこうやってジョッキを置きますの」
「すっかり常連さんですね」
「ええ。わたくしが出資致しましたもの!」

 なんと、ウル王女ご自身がオーナーとは。
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