86 / 269
パンケーキは、罪の味 ~港のオープンカフェのパンケーキ~
パンケーキは、罪の味
しおりを挟む
王女によると、自分がお忍びで庶民スイーツを食べる場所として買い取ったのだとか。
知り合いである商人の名を借りて。
ご自身の名前で登録すると、必ず貴族たちのたまり場になってしまうからと。
「オタカフェでもよろしかったのですが、どうしても貴族の知り合いと出くわしてしまうので」
「気まずいと」
「ええ。本人がいたら、お相手様もわたくしの悪口を言えませんでしょ?」
なるほど。文句のハケ口を残してあげていると。
恐るべきは、ウル王女の余裕ですよ。
イヤごとを言われようと、意に介さない。
むしろ発散させて、敵を作りすぎないようにしていると。
「ですから、なるべくあちらには関わらないでおこうかと」
「はーあ。色々とご苦労があるようで」
「あなたほどではありませんわ。王族ですから、それなりにワガママや自由は利きますもの」
そんなものでしょうか。
「おしゃべりが、過ぎました。スイーツを待ちましょうか」
「ありがとうございま……おやおや」
なんということでしょう。
コーヒーのジョッキが、空になってしまいました。
「料金はご心配なく。まずは駆けつけ一杯ということで」
既に二杯目も、店員さんに頼んであるそうです。
ならば、遠慮なくいただきましょう。残りもゴクゴクっと。
「かーっ」
お酒ではありませんが、この一杯のために生きているなあ、とつぶやいてしまいそうですね。
パンケーキとともに、おかわりはすぐに来てくれました。
中央を彩るのは生クリームの山と、薄く切ったブドウやリンゴ、バナナの砦です。
ソースは紅いベリーと、溶かしたチョコレートを使っているようですね。
おいしいと、存在が証明してくれています。
これは期待大ですね。
「いただきます……おおおおおおおおっ、罪深い!」
上に乗っていたのは、ソフトクリームじゃないですか!
これは素晴らしい発想です。
カットフルーツも適度に凍らせていて、シャキシャキしていますね。
これはソフトクリームに合います。
何より、パンケーキですよ。
これだけアイスがおいしいのに、パンケーキのふっくらさが負けていません。
砂糖なんか入っていないはずなのに、ほのかな甘さも感じました。
その甘味が、アイスの甘さやフルーツの酸味を引き立てています。
「ん、チョコレートソースが甘くありませんね?」
なんだか、とっても苦いです。普通、もっとも甘さを感じるソースのはずなのに。
「そこが、ポイントなのです! 甘みを抑えたことで、よりフルーツの味わいを引き立てることに成功したのですわ!」
なるほど。
甘さがクドくならないためのフレーバーの役割だったのですね。
考えていらっしゃる。
芸術の世界では、『神は細部に宿る』といいますが、これぞまさしく芸術品と言えるでしょう。
「うーん、やはり最高です。麗しいですわ!」
開発者であるウル王女も、パンケーキの出来に大満足のようでした。
かーらーのーっ、ジョッキアイスコーヒーです!
今度は、ミルクもお砂糖も少なめに。アイスがありますから。
ベリーソースのたっぷりかかったパンケーキを、ジョッキのコーヒーで流し込みます。
「ぐっはーっ! やはり、大正解!」
苦み走ったコーヒーが、ベリーとよく合いますね。
そう、このパンケーキはいわゆるジャムパン!
ジャムサンドといいましょうか。合わないわけがない。
ジャムパン、バナナケーキ、アップルパイ。
どれにも引けを取りません。
パンケーキが、味わい次第で七変化していきます。
続いて、ソフトのかかったパンケーキで、試します。
「んほーっ、これも正解!」
いやあ、わたしはなんてことを。大罪ですね、これは。
ジョッキを持っているだけに、ヨッパライの気分ですよ。
死んじゃうんじゃないでしょうか。
わたしは今、どんなお金持ちより幸せを感じています。
幸福とは、パンケーキの上に乗っていたのですね……。
知り合いである商人の名を借りて。
ご自身の名前で登録すると、必ず貴族たちのたまり場になってしまうからと。
「オタカフェでもよろしかったのですが、どうしても貴族の知り合いと出くわしてしまうので」
「気まずいと」
「ええ。本人がいたら、お相手様もわたくしの悪口を言えませんでしょ?」
なるほど。文句のハケ口を残してあげていると。
恐るべきは、ウル王女の余裕ですよ。
イヤごとを言われようと、意に介さない。
むしろ発散させて、敵を作りすぎないようにしていると。
「ですから、なるべくあちらには関わらないでおこうかと」
「はーあ。色々とご苦労があるようで」
「あなたほどではありませんわ。王族ですから、それなりにワガママや自由は利きますもの」
そんなものでしょうか。
「おしゃべりが、過ぎました。スイーツを待ちましょうか」
「ありがとうございま……おやおや」
なんということでしょう。
コーヒーのジョッキが、空になってしまいました。
「料金はご心配なく。まずは駆けつけ一杯ということで」
既に二杯目も、店員さんに頼んであるそうです。
ならば、遠慮なくいただきましょう。残りもゴクゴクっと。
「かーっ」
お酒ではありませんが、この一杯のために生きているなあ、とつぶやいてしまいそうですね。
パンケーキとともに、おかわりはすぐに来てくれました。
中央を彩るのは生クリームの山と、薄く切ったブドウやリンゴ、バナナの砦です。
ソースは紅いベリーと、溶かしたチョコレートを使っているようですね。
おいしいと、存在が証明してくれています。
これは期待大ですね。
「いただきます……おおおおおおおおっ、罪深い!」
上に乗っていたのは、ソフトクリームじゃないですか!
これは素晴らしい発想です。
カットフルーツも適度に凍らせていて、シャキシャキしていますね。
これはソフトクリームに合います。
何より、パンケーキですよ。
これだけアイスがおいしいのに、パンケーキのふっくらさが負けていません。
砂糖なんか入っていないはずなのに、ほのかな甘さも感じました。
その甘味が、アイスの甘さやフルーツの酸味を引き立てています。
「ん、チョコレートソースが甘くありませんね?」
なんだか、とっても苦いです。普通、もっとも甘さを感じるソースのはずなのに。
「そこが、ポイントなのです! 甘みを抑えたことで、よりフルーツの味わいを引き立てることに成功したのですわ!」
なるほど。
甘さがクドくならないためのフレーバーの役割だったのですね。
考えていらっしゃる。
芸術の世界では、『神は細部に宿る』といいますが、これぞまさしく芸術品と言えるでしょう。
「うーん、やはり最高です。麗しいですわ!」
開発者であるウル王女も、パンケーキの出来に大満足のようでした。
かーらーのーっ、ジョッキアイスコーヒーです!
今度は、ミルクもお砂糖も少なめに。アイスがありますから。
ベリーソースのたっぷりかかったパンケーキを、ジョッキのコーヒーで流し込みます。
「ぐっはーっ! やはり、大正解!」
苦み走ったコーヒーが、ベリーとよく合いますね。
そう、このパンケーキはいわゆるジャムパン!
ジャムサンドといいましょうか。合わないわけがない。
ジャムパン、バナナケーキ、アップルパイ。
どれにも引けを取りません。
パンケーキが、味わい次第で七変化していきます。
続いて、ソフトのかかったパンケーキで、試します。
「んほーっ、これも正解!」
いやあ、わたしはなんてことを。大罪ですね、これは。
ジョッキを持っているだけに、ヨッパライの気分ですよ。
死んじゃうんじゃないでしょうか。
わたしは今、どんなお金持ちより幸せを感じています。
幸福とは、パンケーキの上に乗っていたのですね……。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
37
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる