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パンケーキは、罪の味 ~港のオープンカフェのパンケーキ~
パンケーキは、罪の味
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王女によると、自分がお忍びで庶民スイーツを食べる場所として買い取ったのだとか。
知り合いである商人の名を借りて。
ご自身の名前で登録すると、必ず貴族たちのたまり場になってしまうからと。
「オタカフェでもよろしかったのですが、どうしても貴族の知り合いと出くわしてしまうので」
「気まずいと」
「ええ。本人がいたら、お相手様もわたくしの悪口を言えませんでしょ?」
なるほど。文句のハケ口を残してあげていると。
恐るべきは、ウル王女の余裕ですよ。
イヤごとを言われようと、意に介さない。
むしろ発散させて、敵を作りすぎないようにしていると。
「ですから、なるべくあちらには関わらないでおこうかと」
「はーあ。色々とご苦労があるようで」
「あなたほどではありませんわ。王族ですから、それなりにワガママや自由は利きますもの」
そんなものでしょうか。
「おしゃべりが、過ぎました。スイーツを待ちましょうか」
「ありがとうございま……おやおや」
なんということでしょう。
コーヒーのジョッキが、空になってしまいました。
「料金はご心配なく。まずは駆けつけ一杯ということで」
既に二杯目も、店員さんに頼んであるそうです。
ならば、遠慮なくいただきましょう。残りもゴクゴクっと。
「かーっ」
お酒ではありませんが、この一杯のために生きているなあ、とつぶやいてしまいそうですね。
パンケーキとともに、おかわりはすぐに来てくれました。
中央を彩るのは生クリームの山と、薄く切ったブドウやリンゴ、バナナの砦です。
ソースは紅いベリーと、溶かしたチョコレートを使っているようですね。
おいしいと、存在が証明してくれています。
これは期待大ですね。
「いただきます……おおおおおおおおっ、罪深い!」
上に乗っていたのは、ソフトクリームじゃないですか!
これは素晴らしい発想です。
カットフルーツも適度に凍らせていて、シャキシャキしていますね。
これはソフトクリームに合います。
何より、パンケーキですよ。
これだけアイスがおいしいのに、パンケーキのふっくらさが負けていません。
砂糖なんか入っていないはずなのに、ほのかな甘さも感じました。
その甘味が、アイスの甘さやフルーツの酸味を引き立てています。
「ん、チョコレートソースが甘くありませんね?」
なんだか、とっても苦いです。普通、もっとも甘さを感じるソースのはずなのに。
「そこが、ポイントなのです! 甘みを抑えたことで、よりフルーツの味わいを引き立てることに成功したのですわ!」
なるほど。
甘さがクドくならないためのフレーバーの役割だったのですね。
考えていらっしゃる。
芸術の世界では、『神は細部に宿る』といいますが、これぞまさしく芸術品と言えるでしょう。
「うーん、やはり最高です。麗しいですわ!」
開発者であるウル王女も、パンケーキの出来に大満足のようでした。
かーらーのーっ、ジョッキアイスコーヒーです!
今度は、ミルクもお砂糖も少なめに。アイスがありますから。
ベリーソースのたっぷりかかったパンケーキを、ジョッキのコーヒーで流し込みます。
「ぐっはーっ! やはり、大正解!」
苦み走ったコーヒーが、ベリーとよく合いますね。
そう、このパンケーキはいわゆるジャムパン!
ジャムサンドといいましょうか。合わないわけがない。
ジャムパン、バナナケーキ、アップルパイ。
どれにも引けを取りません。
パンケーキが、味わい次第で七変化していきます。
続いて、ソフトのかかったパンケーキで、試します。
「んほーっ、これも正解!」
いやあ、わたしはなんてことを。大罪ですね、これは。
ジョッキを持っているだけに、ヨッパライの気分ですよ。
死んじゃうんじゃないでしょうか。
わたしは今、どんなお金持ちより幸せを感じています。
幸福とは、パンケーキの上に乗っていたのですね……。
知り合いである商人の名を借りて。
ご自身の名前で登録すると、必ず貴族たちのたまり場になってしまうからと。
「オタカフェでもよろしかったのですが、どうしても貴族の知り合いと出くわしてしまうので」
「気まずいと」
「ええ。本人がいたら、お相手様もわたくしの悪口を言えませんでしょ?」
なるほど。文句のハケ口を残してあげていると。
恐るべきは、ウル王女の余裕ですよ。
イヤごとを言われようと、意に介さない。
むしろ発散させて、敵を作りすぎないようにしていると。
「ですから、なるべくあちらには関わらないでおこうかと」
「はーあ。色々とご苦労があるようで」
「あなたほどではありませんわ。王族ですから、それなりにワガママや自由は利きますもの」
そんなものでしょうか。
「おしゃべりが、過ぎました。スイーツを待ちましょうか」
「ありがとうございま……おやおや」
なんということでしょう。
コーヒーのジョッキが、空になってしまいました。
「料金はご心配なく。まずは駆けつけ一杯ということで」
既に二杯目も、店員さんに頼んであるそうです。
ならば、遠慮なくいただきましょう。残りもゴクゴクっと。
「かーっ」
お酒ではありませんが、この一杯のために生きているなあ、とつぶやいてしまいそうですね。
パンケーキとともに、おかわりはすぐに来てくれました。
中央を彩るのは生クリームの山と、薄く切ったブドウやリンゴ、バナナの砦です。
ソースは紅いベリーと、溶かしたチョコレートを使っているようですね。
おいしいと、存在が証明してくれています。
これは期待大ですね。
「いただきます……おおおおおおおおっ、罪深い!」
上に乗っていたのは、ソフトクリームじゃないですか!
これは素晴らしい発想です。
カットフルーツも適度に凍らせていて、シャキシャキしていますね。
これはソフトクリームに合います。
何より、パンケーキですよ。
これだけアイスがおいしいのに、パンケーキのふっくらさが負けていません。
砂糖なんか入っていないはずなのに、ほのかな甘さも感じました。
その甘味が、アイスの甘さやフルーツの酸味を引き立てています。
「ん、チョコレートソースが甘くありませんね?」
なんだか、とっても苦いです。普通、もっとも甘さを感じるソースのはずなのに。
「そこが、ポイントなのです! 甘みを抑えたことで、よりフルーツの味わいを引き立てることに成功したのですわ!」
なるほど。
甘さがクドくならないためのフレーバーの役割だったのですね。
考えていらっしゃる。
芸術の世界では、『神は細部に宿る』といいますが、これぞまさしく芸術品と言えるでしょう。
「うーん、やはり最高です。麗しいですわ!」
開発者であるウル王女も、パンケーキの出来に大満足のようでした。
かーらーのーっ、ジョッキアイスコーヒーです!
今度は、ミルクもお砂糖も少なめに。アイスがありますから。
ベリーソースのたっぷりかかったパンケーキを、ジョッキのコーヒーで流し込みます。
「ぐっはーっ! やはり、大正解!」
苦み走ったコーヒーが、ベリーとよく合いますね。
そう、このパンケーキはいわゆるジャムパン!
ジャムサンドといいましょうか。合わないわけがない。
ジャムパン、バナナケーキ、アップルパイ。
どれにも引けを取りません。
パンケーキが、味わい次第で七変化していきます。
続いて、ソフトのかかったパンケーキで、試します。
「んほーっ、これも正解!」
いやあ、わたしはなんてことを。大罪ですね、これは。
ジョッキを持っているだけに、ヨッパライの気分ですよ。
死んじゃうんじゃないでしょうか。
わたしは今、どんなお金持ちより幸せを感じています。
幸福とは、パンケーキの上に乗っていたのですね……。
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