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鍋は罪の味 ~打ち上げのすき焼き~
お鍋パーティ
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今日は、ソナエさんがお家に呼んでくださいました。
「さて、今日はヒーローショーの打ち上げだ。食べてくれ」
そう言ってソナエさんが用意したのは、黒いお鍋です。
わたしの他に呼ばれたのは、ウル王女でした。学友三人、水入らずのお鍋パーティです。
「どうなさったのです、ソナエさん? あなたは、あまり参加していなかったじゃないですか」
ヒーローショーは、あくまでも教会の出し物ですよね。神社であるソナエさんには、あまり関係がないように思うのですが。公開から、日もずいぶんと経っていますし。
「実は。あんたんところみたいな出し物を、ウチでもやることにした」
「ほう。神社でも演劇を」
「そうなんだよ。ただ、やり方は違うんだがな」
なんでも、東洋には「カブキ」という演目があるそうで。
大昔のタコ邪神退治を題材に、カブキを行うのだとか。
「あんたらの戦いを見て、アイデアを拝借したんでな。そのお礼だ」
というのも、神社は参拝客数アップの方法を、ずっと考えていたそうです。
「で、カブキをやって神社のすごさをアピールしようぜってなったんだ」
すでに、東洋ではタコ退治の模様を演目にしたカブキが公開されたそうでした。集客はうなぎのぼりだそうで。
「よかったです」
「これで、西洋での集客アップだって望めるってんでな。色々送ってもらったんだ」
白菜やシイタケ、おネギなどが大量に届いたそうです。おしょうゆも。中でも圧巻だったのは、牛一頭が届いたことだったとか。
「だから、ウチの鍋料理を振る舞おうってさ」
「ありがとうございます。ところで、この黒いお鍋はなんです?」
炭の上では、黒いおダシのお鍋が煮立っています。
「水炊きは、わかるよな」
「はい。かに料理のお店で、いただきました」
お鍋で茹でたカニの味は、今でも思い出せますねえ。
「こいつは、すき焼きっていうんだ。しょうゆベースで味付けしてある。だから、黒いんだ」
ほほう。ずいぶんと辛そうなお鍋です。
「そのまま食うと、結構辛い。だから、こいつだ」
ソナエさんが用意してくれたのは、生卵でした。
「生卵で食べるんですか?」
「うん。不思議な鍋だろ? でもいけるんだこれが」
生卵を、ソナエさんは器用に片手で割ります。よくといて、白菜やシイタケを取り出しました。たまごにくぐらせて、パクっと。
「ああ厄払い! みんなも行ってくれ。おかわりは、じゃんじゃんあるからな」
では、わたしたちも食べましょう。
同じように、卵につけて。
「罪深い!」
おしょうゆをきかせていると聞いたので、もっと重みのある味かと思っていました。これが卵と絡むと、まあなんと言いますか。一気に甘くなりました。こんな味が、この世にはあったんですね。
「クリスさん、シイタケが麗しいですわ」
シイタケをコリコリと口で弄びながら、ウル王女は味わっています。
では、シイタケもいただきましょう。
これもまた罪深い!
よく煮たことで、シイタケにうま味が凝縮されています。またしょうゆがシイタケの味に溶けていて、よりまろやかさが増しました。
「厄払いだろ? シイタケって。ガキとかはシイタケ入れると嫌がるんだよ。苦いってんで。けどな。大人になるとその苦み走った味が快感に変わるんだよ!」
お酒をグイグイ飲みながら、ソナエさんもシイタケをムシャムシャとかきこみます。
あーっ。この人、飲む口実が欲しかったみたいですね。最初からそうおっしゃればよかったのに。
「では、メインの肉に行くぜ」
そういって用意されたのは、薄く切られた牛肉です。
「地域によっては、最初に入れるらしいんだが、あたしは後で入れるタイプなんだ。すき焼きがどんな料理なのか知ってもらいたかった、ってのもある」
味か濃くなりすぎるというのも、理由なんだとか。
「さて、入れるからな」
最大級の罪が、投下されました。
「さて、今日はヒーローショーの打ち上げだ。食べてくれ」
そう言ってソナエさんが用意したのは、黒いお鍋です。
わたしの他に呼ばれたのは、ウル王女でした。学友三人、水入らずのお鍋パーティです。
「どうなさったのです、ソナエさん? あなたは、あまり参加していなかったじゃないですか」
ヒーローショーは、あくまでも教会の出し物ですよね。神社であるソナエさんには、あまり関係がないように思うのですが。公開から、日もずいぶんと経っていますし。
「実は。あんたんところみたいな出し物を、ウチでもやることにした」
「ほう。神社でも演劇を」
「そうなんだよ。ただ、やり方は違うんだがな」
なんでも、東洋には「カブキ」という演目があるそうで。
大昔のタコ邪神退治を題材に、カブキを行うのだとか。
「あんたらの戦いを見て、アイデアを拝借したんでな。そのお礼だ」
というのも、神社は参拝客数アップの方法を、ずっと考えていたそうです。
「で、カブキをやって神社のすごさをアピールしようぜってなったんだ」
すでに、東洋ではタコ退治の模様を演目にしたカブキが公開されたそうでした。集客はうなぎのぼりだそうで。
「よかったです」
「これで、西洋での集客アップだって望めるってんでな。色々送ってもらったんだ」
白菜やシイタケ、おネギなどが大量に届いたそうです。おしょうゆも。中でも圧巻だったのは、牛一頭が届いたことだったとか。
「だから、ウチの鍋料理を振る舞おうってさ」
「ありがとうございます。ところで、この黒いお鍋はなんです?」
炭の上では、黒いおダシのお鍋が煮立っています。
「水炊きは、わかるよな」
「はい。かに料理のお店で、いただきました」
お鍋で茹でたカニの味は、今でも思い出せますねえ。
「こいつは、すき焼きっていうんだ。しょうゆベースで味付けしてある。だから、黒いんだ」
ほほう。ずいぶんと辛そうなお鍋です。
「そのまま食うと、結構辛い。だから、こいつだ」
ソナエさんが用意してくれたのは、生卵でした。
「生卵で食べるんですか?」
「うん。不思議な鍋だろ? でもいけるんだこれが」
生卵を、ソナエさんは器用に片手で割ります。よくといて、白菜やシイタケを取り出しました。たまごにくぐらせて、パクっと。
「ああ厄払い! みんなも行ってくれ。おかわりは、じゃんじゃんあるからな」
では、わたしたちも食べましょう。
同じように、卵につけて。
「罪深い!」
おしょうゆをきかせていると聞いたので、もっと重みのある味かと思っていました。これが卵と絡むと、まあなんと言いますか。一気に甘くなりました。こんな味が、この世にはあったんですね。
「クリスさん、シイタケが麗しいですわ」
シイタケをコリコリと口で弄びながら、ウル王女は味わっています。
では、シイタケもいただきましょう。
これもまた罪深い!
よく煮たことで、シイタケにうま味が凝縮されています。またしょうゆがシイタケの味に溶けていて、よりまろやかさが増しました。
「厄払いだろ? シイタケって。ガキとかはシイタケ入れると嫌がるんだよ。苦いってんで。けどな。大人になるとその苦み走った味が快感に変わるんだよ!」
お酒をグイグイ飲みながら、ソナエさんもシイタケをムシャムシャとかきこみます。
あーっ。この人、飲む口実が欲しかったみたいですね。最初からそうおっしゃればよかったのに。
「では、メインの肉に行くぜ」
そういって用意されたのは、薄く切られた牛肉です。
「地域によっては、最初に入れるらしいんだが、あたしは後で入れるタイプなんだ。すき焼きがどんな料理なのか知ってもらいたかった、ってのもある」
味か濃くなりすぎるというのも、理由なんだとか。
「さて、入れるからな」
最大級の罪が、投下されました。
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