ポンコツ錬金術師、魔剣のレプリカを拾って魔改造したら最強に

椎名 富比路

文字の大きさ
29 / 80
第三章 炎VS氷! 魔剣同士の激突

第29話 魔剣 |地獄極楽右衛門《ヘル・アンド・ヘブン》

しおりを挟む
「そりゃそりゃあ!」

 クロネコの【テン】ちゃんに乗りながら、わたしは財団関係者を襲うサハギンたちを蹴散らす。

 テンちゃんはネコ型の召喚獣だが、クマくらい大きい。テンちゃんの方も、足でサハギンたちを踏み潰していく。さすが、水の上もスイスイ歩く召喚獣だ。

 幽霊船型の魔物【クラーケン】に、クレアさんは向かい合う。

 白いゴリラ型召喚獣の【トート】が、クレアさんの指示を待つ。

 クラーケンが、幽霊船からスケルトンをわらわらと湧かせる。

『クレア、地上は任せな! 魔剣の試し切りついでに、あんたの好きに暴れるがいいさ!』

 テンちゃんのノドを借りて、レベッカちゃんがクレアさんに呼びかけた。

「承知。キャルさん、財団の方々はおまかせします。トートさん、まずは一番を」

 トートが、大きな一〇徳ナイフから、ショートソードを差し出す。

 一〇徳ナイフは、人の身体くらいある。

 クレアさんが、ソードを受け取った。柄には、【一】と番号が振ってある。

「魔剣、【地獄極楽右衛門ヘル・アンド・ヘブン】、この大物に通用するのでしょうか。まずは、小手調べですわ!」

 触手の攻撃を器用にかわしながら、クレアさんは触手を坂代わりに駆け足で登った。スケルトンをショートソードで斬りながら。

 触手ごと、クレアさんはスケルトンの胴を薙ぎ払った。

「重い攻撃ですわね。いいですわ。トートさん二番を」

 一番と呼ばれたショートソードを、クレアさんはトートに返す。

 トートが一番を受け取り、二番のヤリを投げ渡した。

 クレアさんを、スケルトンが囲む。

 対するクレアさんは、ヤリを旋回させる。スケルトンを、まとめて振り払った。
 
 幽霊船から、クラーケンが大砲を飛ばす。

 砲台から、火球が発射された。

 海に着弾し、水柱が上がる。

 その度に、クレアさんが体勢を崩した。

「三番を!」

 クレアさんが投げたヤリを、トートはキャッチする。代わりに、弓を投げてよこした。

 ちなみにトートは、さっきからクラーケンの触手の上で、腕を枕にして寝そべっている。飼い主に似て、フリーダムだ。

 クラーケンも、触手でトートを攻撃したところで、触手を引きちぎられるだけ。なので、手出しができないのだ。

 武器を受け取ったクレアさんが、弓を引き絞る。矢は、魔法で自動生成した光の矢だ。

 一筋の光が、クレアさんの弓から解き放たれる。

 光の矢は、砲台の一つに入り込む。そのまま、砲台の箇所が大爆発を起こす。

「クレアさん、反対側も!」

 わたしの声に反応して、クレアさんは移動する。光を矢を、幽霊船の左側面に放つ。

 しかし、矢は触手に阻まれてしまった。触手を犠牲にして、クラーケンは砲台を攻撃から防いでいる。

「触手が厄介ですわね。四番を!」

 トートに指示を出し、弓を投げ渡す。

「待って。クレアさん! 四番は、実験作ですよ!」

「だからこそ、面白くなるのです!」

 わたしがピンチだと思っている局面さえも、クレアさんから見たらアトラクションに過ぎないのか。

 クレアさんが所持したのは、バズソーだ。平たい円盤型のノコギリで、鎖から魔法を通して回転させる。いわゆる、ギザギザの刃が付いたチャクラムだ。鎖で通しているという違いはあるが。

「素晴らしい切れ味ですわ、キャルさん!」

 嬉々として、クレアさんはクラーケンの触手を切り刻んでいった。実に楽しそう。

「あの御婦人が使ってらっしゃる魔剣でヤンスが、あれがあなたの作った魔剣でヤンスかぁ?」

 唖然とした顔で、リンタローがわたしに質問してきた。

「そう。戦う相手によって用途を使い分ける魔剣。その名も【地獄極楽右衛門ヘル・アンド・ヘブン】。地獄も極楽もまとめて面倒を見る魔剣、という由来があるよ」

 わたしの作った魔剣は、一〇徳ナイフから着想を得ている。

「何を渡しても強いんだから、武器を全部渡すことにした。あとは的によって選んでね、っていうさ」

「その結果が、一〇徳ナイフとは。さしずめ、【一〇刀流】といったところでヤンスかね? 理にかなっているでヤンス。ですが随分と、投げやりでヤンスね?」

「使い手の選択肢を、増やしたんだよっ」

 クレアさんの戦い方からして、もっとも戦闘力が高いのは素手だ。そんな人を相手に、最も強い武器となると、これしか思いつかなかったのだ。

「武器も敵を選ぶ……属性特化型の私では、到底浮かばない発想」

「あぁ、ありがとう。好意的に受け止めてくれて」

「褒めてない」

 ヤトからは、称賛とも侮蔑とも取れないコメントをいただく。

「自分であんな武器を作っておいて、怖くない?」

「怖くはないかな? 一番ヤバイのは、使い手であるクレアさんだから」

 一言でクレアさんを形容するなら、『人間凶器』だろう。あの人は、鞘のないむき出しの剣だ。飾っておいても、厳重に保管していても、放浪に出てしまう。

 クラーケンも、触手の先に針をむき出しにした。クレアさんを突き殺す気だ。

「いいですわ。お相手しましょう!」

 相手のヤリ型触手に対抗し、クレアさんはバズソーでカウンターを行う。

 クラーケンの触手は、ハムのようにスライスされた。


                                        *


 ヤトは、海底神殿へと続く洞窟へ向かう。

「はあ!? ヤトッ! 全部見ていかないんでヤンスか!?」

 リンタローが、不満をヤトにぶつけてきた。

「ここからが面白いんじゃないでヤンスか! あのパツキン冒険者殿が、どうやってクラーケンを退治するか、ヤトは知りたくないでヤンスか!?」

「いい。どうせ、あの金髪が勝つ」

 クラーケン相手なら、あの金髪だって確実に勝てるだろう。おそらく、油断もしない。

「どうやって勝つのか、見ておかないとでヤンス! いずれ彼女とも、戦うかもしれないんでヤンスよ?」

 たしかに、リンタローの意見はもっともだ。敵を視察しておくことは、大事である。

「大丈夫。私たちの方が強いから」

 手品がわかっている敵と戦っても、それは勝利とは呼べない。ただの消化試合だ。

 それに、今見ていても、仕方がない気がする。

「クレア・ル・モアンドヴィル第一王女程度に、ザイゼンの巫女である私は遅れを取らない」

「あーっ。ヤトも、気づいていたでヤンスね?」

 わざとらしく、リンタローが肩をすくめた。

「あんたもでしょ?」

「ええ。あれだけ強い雷属性の剣士なんて、この辺りだとモアンドヴィル王家くらいでヤンスから」

 バズソーは、雷属性魔法を流し込んで動いている。
 あの器用さと勢いの強さは、並の冒険者では会得できまい。

 雷属性持ちで、戦闘力がゴリラ並みの姫君がいることは、あの王国近隣でよくウワサになっている。勝手に城を飛び出しては、ダンジョン攻略に専念していたと。

「なんといっても警戒すべきは、あのキャラメ・Fフランベ・ルージュの方」

「モアンドヴィル王家よりも脅威、なんでヤンスかねえ?」

 彼女は金髪の魔剣を、さらにアップデートさせるに違いない。

「あの子はクレア姫をヤバイと形容していたけど、本当にヤバイのは、あの子。キャラメ・ルージュは、王女の強さを引き出しつつある。本人にその自覚はないけど」

 今観察をしていても、それは余計な情報収集というもの。

 どうせ戦うなら、未知の状態で戦いたい。

 それが、フェアプレーだ。

「どうしたでヤンス、ヤト? まったく気にしていないと思ったら、かなり引っかかってるんでヤンスね? 人間に興味のないヤトが、珍しい心境でヤンスね?」

「自分でも、驚いている」

 まさか、こんなにも胸を踊らせる相手が存在していたとは。

 あの魔剣を作り、さらにレーヴァテインさえ操る女錬金術師に、ヤトは興味を示していた。

「グズグズしていられない。海底神殿に向かって、マジックアイテムの調査を進めないと」

 ヤトたちは、一刻も早く確認しなければならない。

 魔物がマジックアイテムを操っているのか、マジックアイテムが魔物を先導しているのか。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

捨てられた貴族六男、ハズレギフト『家電量販店』で僻地を悠々開拓する。~魔改造し放題の家電を使って、廃れた土地で建国目指します~

荒井竜馬@書籍発売中
ファンタジー
 ある日、主人公は前世の記憶を思いだし、自分が転生者であることに気がつく。転生先は、悪役貴族と名高いアストロメア家の六男だった。しかし、メビウスは前世でアニメやラノベに触れていたので、悪役転生した場合の身の振り方を知っていた。『悪役転生ものということは、死ぬ気で努力すれば最強になれるパターンだ!』そう考えて死ぬ気で努力をするが、チート級の力を身につけることができなかった。  それどころか、授かったギフトが『家電量販店』という理解されないギフトだったせいで、一族から追放されてしまい『死地』と呼ばれる場所に捨てられてしまう。 「……普通、十歳の子供をこんな場所に捨てるか?」 『死地』と呼ばれる何もない場所で、メビウスは『家電量販店』のスキルを使って生き延びることを決意する。  しかし、そこでメビウスは自分のギフトが『死地』で生きていくのに適していたことに気がつく。  家電を自在に魔改造して『家電量販店』で過ごしていくうちに、メビウスは周りから天才発明家として扱われ、やがて小国の長として建国を目指すことになるのだった。  メビウスは知るはずがなかった。いずれ、自分が『機械仕掛けの大魔導士』と呼ばれ存在になるなんて。  努力しても最強になれず、追放先に師範も元冒険者メイドもついてこず、領地どころかどの国も管理していない僻地に捨てられる……そんな踏んだり蹴ったりから始まる領地(国家)経営物語。 『ノベマ! 異世界ファンタジー:8位(2025/04/22)』 ※別サイトにも掲載しています。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

処理中です...