ポンコツ錬金術師、魔剣のレプリカを拾って魔改造したら最強に

椎名 富比路

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第三章 炎VS氷! 魔剣同士の激突

第30話 第三章 完 クラーケン退治

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「この程度ですか、クラーケン? それだけの巨体を誇りながら、少女一人倒せないとは」

 クレアさんが、クラーケンを煽る。

 自分より小さい存在に挑発されてか、クラーケンが怒り狂った。触手でバシャバシャと、水面を叩く。

「おとと」

 クレアさんもトートも、平然として動じない。

 両者の対応は、まったく対照的だ。

 側面を向き、クラーケンが大砲をセッティングした。体内で威力を調節できるのか、一発だけながら、やたら砲台がデカい。代わりに、他の砲台はしなびている。

 砲台が、魔力を貯め始めた。船の表面すら、しおれてきたではないか。

『クレア、とんでもない一発が来るよ!』

「心得ております、レベッカさん。トートさん、五番を」

 トートは、バズソーと棍棒を交換した。剣というには棍棒に近い代物で、大きさが大雑把すぎる。
 トロルが使うようなデザインの鉄塊だ。
 周りには、大量の棘が。魔剣と言うか、もはや鉄の塊に過ぎない。この剣は、先のトゲトゲを刃とみなしている。

「撃ってご覧なさい、クラーケンよ!」

 触手の上で、クレアさんは一本足で立つ。ほんとに器用だな、この人は。 

 クレアさんの方へ向けて、クラーケンが大砲を放つ。
 側に停泊していた財団の船すら、一撃で破壊した。くくりつけていた岩ごと、粉々になる。
 誰も乗っていなかったからよかったものの、もし動かしていたら、惨劇は免れなかったろう。

 それでもクレアさんは、クラーケンが放った特大の火球を、鉄塊のごとき棍棒で打ち返した。打った火球で、クラーケンのフラッグを叩き折る。

「マジかよ」

 作ったわたしでさえ、その破壊力に驚いた。クレアさんのセンスの賜物か、思っていた以上の傑作を、わたしは作り上げてしまったのか。

 棍棒なんて、もはや魔剣ですらない。

 あの魔剣に、あんな使い方があったなんて。ヤケクソで作った鉄塊を、カウンター専門の武器にしてしまうとは。

「クラーケン、あいにくトドメですわ」

 クレアさんはトートに、六番を指定した。 

 トートが用意したのは、両手持ちの斧だ。トートでさえ、重たがっている。十分に勢いをつけて、トートは斧を投げ飛ばした。

 重量に全身を持っていかれそうになりながらも、クレアさんは斧を掴む。勢いをつけながら、上空へ跳躍した。

「そおおれ!」

 クレアさんは急降下して、船の先端ごとクラーケンに斧を叩き落とす。

 クラーケンの顔が、真っ二つに裂けた。


 やったか?


「まだです。クレアさん!」

 魔物を、まだ倒せていない。

 沈んでいくと思われたクラーケンが、水上で体勢を立て直した。ファスナーが上がるかのように、クラーケンの顔が一瞬で元に戻る。

「なんと……うぐ!」

 クレアさんが、触手で殴り飛ばされた。呆けていたのを、狙われたか。
 さすがのクレアさんも、あれでトドメをさせたと思い込んだらしい。あんな感じで、完全復活をするとは考えていなかったのだろう。

 トートの太い両腕に、クレアさんはキャッチしてもらった。

「なるほど」

「交代しましょうか、クレアさん?」

 ここで油を売っている場合じゃない。

 ヤトたちが、もう海底神殿に先行してしまった。こちらは、財団からクラーケンを引き付けているのに。薄情と言えるが、彼女たちだって調査に来ているんだ。責められないか。

「お気遣いなく。クラーケン、そうこなくては」

 この土壇場で、まだ笑みを浮かべますか。クレアさんは。

「キャルさん。ワタクシは、満足していますのよ。自分がどんどん強くなっていくのを、肌で感じますわ」

 クレアさんは、戦闘を楽しんでる。頼もしくいて、危うい。そのところがクレアさんを彼女たらしめるのだから、なんとも言えなかった。

「トートさん、七番も同時にくださいませ。キャルさん、おまたせしましたわね。ここで仕留めます」

 六番の両手斧を持って、クレアさんはトートの手の上に乗った。

「上です、トートさん。クラーケンの頭上へ、投げてくださいまし」 

 トートの力で、上空に投げ飛ばしてもらう。七番であるナイフを、片手に持ったまま。

 再度急降下して、クレアさんは斧を踏むようなスタイルに構え直した。

「また、かまぼこにして差し上げます!」

 クラーケンの頭上を捉え、クレアさんは足で斧を踏みつける。再び、クラーケンの顔面を両断した。

 斧が、眉間近くで止まる。

「そこですわ!」

 クラーケンの眉間の奥めがけて、クレアさんがキックでナイフを投げ飛ばす。七番は、ザラタンが襲ってきたときに使った、飛び出しナイフである。

 魔物の眉間には、セイレーンの姿が。コイツが、クラーケンを再生させていたようだ。飲み込まれたふりをして、操っていたとは。

 ナイフで心臓に一撃をくらい、セイレーンが断末魔の叫びを上げる。

 今度こそ、クラーケンは海に沈んでいった。

 クレアさんに、大量の経験値が入る。

「ふううう」

 モンスターを倒してレベルが上ったとはいえ、疲労が取れていない。

「神殿へ急ぎたいですが」

 財団たちの消耗が、激しかった。あれでは、帰れるかどうか。

「助けましょう」

「はい。クレアさんは、治療をお願いします。わたしは、昼食を用意しますので」

 クラーケンからは魔石だけではなく、お肉も大量に手に入った。お昼は、クラーケン鍋にしよう。

「レベッカちゃん、ちょっと魔剣を圧縮してくれませんかね?」

『アタシ様を、包丁に使うのかい? お安い御用さ』

 レベッカちゃんが、刀身を短くする。ショートソードくらいの包丁に変形した。

 まずは洗った昆布を、鍋に放り込む。ダシをとりつつ、野菜を入れた。

 鍋が煮えるまで、クラーケンの身や足を薄くスライスする。

 薄切りにした身を沸騰した鍋にくぐらせる、しゃぶしゃぶスタイルだ。

 余ったゲソはひしおを塗って、串焼きに。

「鍋が煮えてきたね」

 クラーケンの切り身をしゃぶしゃぶして、塩ダレで味見する。

「うん、うまい!」

 塩ダレだからちょい薄いかなと思っていたが、クラーケンの身は濃厚だ。

 醤ダレのゲソも、負けず劣らずうまい。こっちは少し、アイテムボックスへ。先行したあの二人に、取っておいてあげよう。

[【タコしゃぶしゃぶ】は、体力を大きく回復させる効果があります]

[【ゲソの串焼き】は、傷を癒す効果があります]

 え、そんな機能があるの? ただ料理しただけだよ? レベッカちゃんで作ったからかな?

「できました。みんな、食べてください」

 クラーケン鍋に、みんなが飛びついた。

 あとタコスミといえば、なんといってもパスタでしょう。

 シメに、パスタを放り込んだ。昆布のダシが出ているから、塩も振らなくていいでしょう。

『イカスミは聞いたことがあるが、タコスミのパスタは見ないねえ』

「お値段がとんでもないからね」

 タコスミは手間がかかる上に、取れる量が少ない。一食作るには、タコが一〇匹も必要だ。量が取れないゆえ、イカスミの一〇倍もする高級食材である。

 しかしこれだけデカければ、タコスミもわんさかというわけよ。

「ほら、思った通り」

 アイテムとして手に入れた【タコスミ袋】は、案の定の大きさ。これは、いいパスタになるはず。ざっと一〇〇人前はあるに違いない。

 スミを香草やにんにくと一緒に炒めて、生臭さを消す。で、茹で上がったパスタと絡めて完成と。

 おお、大絶賛じゃん。旨味成分は、イカスミより多いらしいからね。「毒がある」説もあるけど、甲殻類だけに効果があるとか。

 鍋やパスタをつついてもらっている間、わたしは魔剣の調節を行う。

 クラーケンの魔石は当然、クレアさんの魔剣に注ぎ込んだ。クレアさんの功績だからね。

「魔剣の性能をあと三つ残して、ようやく倒せましたわ」

「お見事です」

「いえ。キャルさんの魔剣、まだどれだけの性能があるのか。まあいいでしょう。残りは、海底神殿で試しますわ」

 わたしたちは、神殿へと続く洞窟に、足を踏み入れた。


(第三章 完)
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