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第五章 魔術師のダンジョンと、伝説のガイコツ剣士
第49話 第五章 完 ガイコツ剣士の郷愁
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「えっと。コイツ、死んだの?」
潰したクマのぬいぐるみを確認する。
「違うでヤンスよ、キャル。本体はまだ、生きているでヤンス」
このぬいぐるみは、イザボーラが操っていただけだという。
イザボーラはぬいぐるみを通して、幼いクリームヒルト様を傀儡にしようと企んでいたのだろうとのこと。
「間一髪だったな。グーラノラに、あえて危険人物でも通せと指示を出していたが、冷や汗が出たぞ」
「ぶっちゃけソレガシたちが戦わなくても、この神官殿で対処できたでヤンスよ」
ヤトが釣り針を動かすタイミングで、グーラノラさんも動いていた。すぐに、クリームヒルト姫をカバーしていたのは見事だ。
「あの程度の人形なら、御せるかと思います。しかし、イザボーラ本体となると、私の手には」
ツヴァンツィガーの総力をもってしても、足止めするのが限界だとか。
そこまでなのか、イザボーラは。
「さて、危機は去ったんだけど……」
この後、どうするか。
グミスリル鋼のヨロイができるまで、レベル上げくらいしかやることがない。
おまけにヘルムースさんは、わたしとクレアさん用のヨロイまで作ってくれていた。しかも、ミスリル銀製である。
数が少ないグミスリルをフルーレンツさんだけに使うというので、お詫びも兼ねているそうだ。
それでも、ありがたい。
フルーレンツさんのヨロイを待たずに、敵の根城へ突っ込むことも考えた。
しかし「やめたほうがいい」と、ヤトから止められる。
「わたしたちって、カリュブディスを倒したじゃん。あれよりひどい戦闘になると?」
「イザボーラは、当時の魔王と双璧をなす存在にまで、強くなっている」
不完全だったカリュブディスとは、比較にならないという。
「でもイザボーラって、ただのエルフなんだよね? そんなに強くなった理由なんて」
「ヤツは、魔剣を所持している可能性が高いでヤンス。その実態がわからない以上、ヘタに手出しはできないでヤンスよ」
イザボーラとの戦いは、長期戦になりそうな気配がするとか。
うーむ。こちらとしては早くツヴァンツィガーを発って、魔剣を強化したいのだが。
『また魔剣と戦えるってのかい? 腕が鳴るねえ!』
レベッカちゃんは、まだ見ぬ強敵に、胸を踊らせていた。
こういうとき、戦闘狂は気楽だなあ。
それはそうと、フルーレンツさんの様子がおかしい。
ずっと、コーラッセンのある方角を見つめていた。
「フルーレンツさんは、故郷が恋しい?」
「おお、キャル殿。どうだろう? 我がどう願っても、コーラッセンの民が戻ってくるわけでなく」
「でも、故郷がボロボロの状態って、さみしいよね」
わたしにできることは、あるだろうか?
「いっそさ、復興させる? モンスターの街にしちゃうとか」
「できるのか?」
「一応、街としての機能は、回復できるかも」
「おお。すばらしい!」
「ただ、建国許可は必要かも」
わたしは、再び王城に向かった。
王様に、事情を説明する。
クリームヒルト姫を助けたことで、わたしは王城にてほぼ顔パスになっていた。
それでも、教頭先生にかけてもらった【緊張を解く】永続魔法がなかったら、話すこともできなかっただろうね。
「……というわけなんですが」
「たしかに、ファッパとツヴァンツィガーとの間にパイプがあれば、色々と助かるな」
とはいえ「魔物ばかりの街」となると、複雑な顔をした。
すいませんねえ。なにぶん、味方がアンデッドばかりなもので……。
「コーラッセンとしては不可能だが、別の都市として再生なら、考えてもよかろう」
「本当ですか?」
「うむ。他の国家との共有財産にしようかと」
「いいですね!」
建築自体は、わたしたちの率いるスパルトイでやってみる。
フルーレンツさんが率先して、スパルトイたちに指示を送った。
古い王都として再生ではなく、新しい過ごしやすい土地を目指している。
枯れていた畑も、わたしたちで耕す。
『オラオラ! ヤキを入れるよ!』
レベッカちゃんが雑草を焼き尽くし、クワに変形して土を掘った。
農具にまで変形できるとか、レベッカちゃんは何者なんだろうか? ヘルムースさんがいうように、マジで魔物を魔剣の形に固めた存在なのかも。
建物の建築や水車小屋の設計は、フワルー先輩やシューくん、クレアさんが手伝ってくれた。
「ゴハンができましたよー」
わたしは、醤を使った焼きおにぎりを、みんなに振る舞う。
「ああ、うまい! この一口のために生きとるわ」
「おおげさなんですよ、先輩は」
「せやけど、あんたはホンマにええ嫁はんになるで。冗談抜きで」
「ヤですよー。特定の人と添い遂げるなんてー」
わたしは魔剣作りの旅がしたくて、家を飛び出した。
今更、誰かの伴侶になるなんて、考えられない。
王様たちは、他の国から移住したい人を、募ってくれるそうだ。
これは、デカいプロジェクトになりそう。
「よろしいのだ。国家間との交流も、マンネリ気味だったのでな」
ファッパには、ヤトとリンタローが呼びかけてくれるそうだ。
財団にも、協力してもらうという。
「一つの王国が管理するとなると、誰が統治するか揉めそうだったのです。が、財団の所有する土地として活用するなら、問題ないかと」
シューくんが、そう提案してくれた。
財団は、各地に点在している。
各国家の商業と連携して、ショップを管理すればいい。
「だんだん、話が大きくなってきたね」
『街の完成が、楽しみになってきたよ!』
廃墟だった王国が、街として活気を取り戻していく。
街がすっかり新しく生まれ変わった頃、ようやくグミスリルを使ったヨロイが完成した。
「あの化け物が着ていたものより薄いのに、強度が増しておる。かたじけない」
「いえ。気に入ってくださったなら、なにより」
わたしたちの装備も、一新される。
「レベッカの方は扱いに困ったが、お前さんが打ったこの……名前なんだっけ?」
「地獄極楽右衛門ですわ」
クレアさんがわたしに代わって、魔剣の正式名称をヘルムースさんに教える。
「おお。まあこの……魔剣の方な。こちらは武器の寄せ集めだったから、鍛え直すことはできたわい」
見違えるほどに、地獄極楽右衛門は磨きがかかっていた。
構造が、最初から見直されている。
驚いたのは、五番の棍棒が回転式になっている。表面が互い違いに回転することにより、武器破壊の仕方が前よりはるかにえげつなくなった。しかし太い刃物とすることで、剣に見えなかった問題も解決している。
「すばらしい発想ですわ。ありがとうございます、ヘルムースさん」
「すごい。これは、鍛冶屋の発想だね」
鍛冶師といっても、装備品ばかりを扱うわけじゃない。歯車などを作るときだってある。
わたしたちが街を作っている間も、歯車などを加工していた。
「お前さんたちのおかげで、ええ気分転換になったわい。ありがとうよ」
「いえいえ。ヘルムースさんが天才なんだって」
「ぬかせい。この魔剣は、お主のトンデモ発想じゃろうが。ワシは、それを剣として扱いやすくしたまでのことよ」
魔剣を一から作るというのは、やはりなかなか難しいという。
「ましてワシは、歳を取りすぎてしもうた。頭でっかちってやつよのう」
「でもすごいよ。長年の経験から、この魔剣の良さを引き出してくれたんだもん」
「ありがとうよ。そう言ってもらえると、鍛冶屋冥利に尽きるってもんよ」
何度もお礼を言って、わたしたちはヘルムースさんの鍛冶屋を後にする。
「準備完了でヤンスか?」
「うん。行こう」
あとは、次の目的地への道を邪魔をしている魔女イザボーラを倒すだけ。
(第五章 完)
潰したクマのぬいぐるみを確認する。
「違うでヤンスよ、キャル。本体はまだ、生きているでヤンス」
このぬいぐるみは、イザボーラが操っていただけだという。
イザボーラはぬいぐるみを通して、幼いクリームヒルト様を傀儡にしようと企んでいたのだろうとのこと。
「間一髪だったな。グーラノラに、あえて危険人物でも通せと指示を出していたが、冷や汗が出たぞ」
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ヤトが釣り針を動かすタイミングで、グーラノラさんも動いていた。すぐに、クリームヒルト姫をカバーしていたのは見事だ。
「あの程度の人形なら、御せるかと思います。しかし、イザボーラ本体となると、私の手には」
ツヴァンツィガーの総力をもってしても、足止めするのが限界だとか。
そこまでなのか、イザボーラは。
「さて、危機は去ったんだけど……」
この後、どうするか。
グミスリル鋼のヨロイができるまで、レベル上げくらいしかやることがない。
おまけにヘルムースさんは、わたしとクレアさん用のヨロイまで作ってくれていた。しかも、ミスリル銀製である。
数が少ないグミスリルをフルーレンツさんだけに使うというので、お詫びも兼ねているそうだ。
それでも、ありがたい。
フルーレンツさんのヨロイを待たずに、敵の根城へ突っ込むことも考えた。
しかし「やめたほうがいい」と、ヤトから止められる。
「わたしたちって、カリュブディスを倒したじゃん。あれよりひどい戦闘になると?」
「イザボーラは、当時の魔王と双璧をなす存在にまで、強くなっている」
不完全だったカリュブディスとは、比較にならないという。
「でもイザボーラって、ただのエルフなんだよね? そんなに強くなった理由なんて」
「ヤツは、魔剣を所持している可能性が高いでヤンス。その実態がわからない以上、ヘタに手出しはできないでヤンスよ」
イザボーラとの戦いは、長期戦になりそうな気配がするとか。
うーむ。こちらとしては早くツヴァンツィガーを発って、魔剣を強化したいのだが。
『また魔剣と戦えるってのかい? 腕が鳴るねえ!』
レベッカちゃんは、まだ見ぬ強敵に、胸を踊らせていた。
こういうとき、戦闘狂は気楽だなあ。
それはそうと、フルーレンツさんの様子がおかしい。
ずっと、コーラッセンのある方角を見つめていた。
「フルーレンツさんは、故郷が恋しい?」
「おお、キャル殿。どうだろう? 我がどう願っても、コーラッセンの民が戻ってくるわけでなく」
「でも、故郷がボロボロの状態って、さみしいよね」
わたしにできることは、あるだろうか?
「いっそさ、復興させる? モンスターの街にしちゃうとか」
「できるのか?」
「一応、街としての機能は、回復できるかも」
「おお。すばらしい!」
「ただ、建国許可は必要かも」
わたしは、再び王城に向かった。
王様に、事情を説明する。
クリームヒルト姫を助けたことで、わたしは王城にてほぼ顔パスになっていた。
それでも、教頭先生にかけてもらった【緊張を解く】永続魔法がなかったら、話すこともできなかっただろうね。
「……というわけなんですが」
「たしかに、ファッパとツヴァンツィガーとの間にパイプがあれば、色々と助かるな」
とはいえ「魔物ばかりの街」となると、複雑な顔をした。
すいませんねえ。なにぶん、味方がアンデッドばかりなもので……。
「コーラッセンとしては不可能だが、別の都市として再生なら、考えてもよかろう」
「本当ですか?」
「うむ。他の国家との共有財産にしようかと」
「いいですね!」
建築自体は、わたしたちの率いるスパルトイでやってみる。
フルーレンツさんが率先して、スパルトイたちに指示を送った。
古い王都として再生ではなく、新しい過ごしやすい土地を目指している。
枯れていた畑も、わたしたちで耕す。
『オラオラ! ヤキを入れるよ!』
レベッカちゃんが雑草を焼き尽くし、クワに変形して土を掘った。
農具にまで変形できるとか、レベッカちゃんは何者なんだろうか? ヘルムースさんがいうように、マジで魔物を魔剣の形に固めた存在なのかも。
建物の建築や水車小屋の設計は、フワルー先輩やシューくん、クレアさんが手伝ってくれた。
「ゴハンができましたよー」
わたしは、醤を使った焼きおにぎりを、みんなに振る舞う。
「ああ、うまい! この一口のために生きとるわ」
「おおげさなんですよ、先輩は」
「せやけど、あんたはホンマにええ嫁はんになるで。冗談抜きで」
「ヤですよー。特定の人と添い遂げるなんてー」
わたしは魔剣作りの旅がしたくて、家を飛び出した。
今更、誰かの伴侶になるなんて、考えられない。
王様たちは、他の国から移住したい人を、募ってくれるそうだ。
これは、デカいプロジェクトになりそう。
「よろしいのだ。国家間との交流も、マンネリ気味だったのでな」
ファッパには、ヤトとリンタローが呼びかけてくれるそうだ。
財団にも、協力してもらうという。
「一つの王国が管理するとなると、誰が統治するか揉めそうだったのです。が、財団の所有する土地として活用するなら、問題ないかと」
シューくんが、そう提案してくれた。
財団は、各地に点在している。
各国家の商業と連携して、ショップを管理すればいい。
「だんだん、話が大きくなってきたね」
『街の完成が、楽しみになってきたよ!』
廃墟だった王国が、街として活気を取り戻していく。
街がすっかり新しく生まれ変わった頃、ようやくグミスリルを使ったヨロイが完成した。
「あの化け物が着ていたものより薄いのに、強度が増しておる。かたじけない」
「いえ。気に入ってくださったなら、なにより」
わたしたちの装備も、一新される。
「レベッカの方は扱いに困ったが、お前さんが打ったこの……名前なんだっけ?」
「地獄極楽右衛門ですわ」
クレアさんがわたしに代わって、魔剣の正式名称をヘルムースさんに教える。
「おお。まあこの……魔剣の方な。こちらは武器の寄せ集めだったから、鍛え直すことはできたわい」
見違えるほどに、地獄極楽右衛門は磨きがかかっていた。
構造が、最初から見直されている。
驚いたのは、五番の棍棒が回転式になっている。表面が互い違いに回転することにより、武器破壊の仕方が前よりはるかにえげつなくなった。しかし太い刃物とすることで、剣に見えなかった問題も解決している。
「すばらしい発想ですわ。ありがとうございます、ヘルムースさん」
「すごい。これは、鍛冶屋の発想だね」
鍛冶師といっても、装備品ばかりを扱うわけじゃない。歯車などを作るときだってある。
わたしたちが街を作っている間も、歯車などを加工していた。
「お前さんたちのおかげで、ええ気分転換になったわい。ありがとうよ」
「いえいえ。ヘルムースさんが天才なんだって」
「ぬかせい。この魔剣は、お主のトンデモ発想じゃろうが。ワシは、それを剣として扱いやすくしたまでのことよ」
魔剣を一から作るというのは、やはりなかなか難しいという。
「ましてワシは、歳を取りすぎてしもうた。頭でっかちってやつよのう」
「でもすごいよ。長年の経験から、この魔剣の良さを引き出してくれたんだもん」
「ありがとうよ。そう言ってもらえると、鍛冶屋冥利に尽きるってもんよ」
何度もお礼を言って、わたしたちはヘルムースさんの鍛冶屋を後にする。
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(第五章 完)
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