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第八章 大魔王スルト襲来! オリジナル対レプリカ!
第68話 後方腕組みおじさんと化した仲間たち
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わたしはクレアさんたちと、ダクフィの街から森へ出た。レベッカちゃんの最終形態を振るう。
クレアさんの魔剣を打つ前に、自分の魔剣の出来を見ておかないと。
「普段は、ロングソード並のサイズになったんですね?」
「そうなんだよ。スマートになっちゃって」
以前のレベッカちゃんは大剣サイズで、存在感が大きかった。
今は、その三分の一くらいしかない。
鞘の形状も、羊かヤギの太い角を伸ばしたような形だ。魔物の本性を現して、より動物的になった。手触りも、どこか生物を思わせる。
『重量も、減らしたよ』
第三の腕クンも、【抹消砲】も、全部取り込んだ。
なのに、こんな形になって。
「でも、威力が落ちたわけではないようですね」
「それを、これから試す」
わたしは、レベッカちゃんを抜いた。
ブオン、と、炎の刃がレベッカちゃんを包んだ。オレンジ色の炎が、レベッカちゃんの周りで揺らめいている。
「フン!」
剣を横に凪ぐ。
「おっと」
離れたところにいたクレアさんに、剣から出たオーラの先端が当たりそうになった。
すぐに避けてもらえたが。
「おお。すごいですわね」
遠くにあった岩山が、チーズのように切断された。
「キャル。とんでもない威力になって、帰ってきてる」
「それだけじゃないでヤンス」
「うん」
ヤト、リンタローコンビが、なんか「後方腕組みおじさん」みたいな状態になっている。
「どうしたの? 岩を斬ったくらいでは、特に珍しくないって思うけど?」
これまで、わたしとレベッカちゃんは、無機物という無機物を斬り捨ててきた。
同族の魔剣レーヴァテインさえ、剣のサビにしてやったこともある。
「違うよ。キャルちゃん」
ゼゼリィが、わたしたちに歩み寄ってきた。
「ワタシの目で、森の中を見てみたんだけどね」
前髪を上げて、ゼゼリィが隠れている目をわたしたちに向ける。
万華鏡みたいに、目の中に光がグリングリン回っていた。
「悪意のある魔物たちが、ワタシたちに襲いかかろうとしていたんだよ。でもレベッカさんが、全部正気に戻しちゃった」
『はあ? アタシ様は、なにもしていないさ』
「したよ。発動した時点で、瘴気を焼き払っちゃったんだ」
マジですか。
「なんかね。スルトが迫ってきている瘴気に当てられて、魔物が凶暴化していたんだ。そいつらが、この森にまで集まっていたんだよ」
でも、レベッカちゃんの【原始の炎】効果が、魔物の心にまで反映したみたい。
元々邪悪な魔物はそのまま焼き払い、瘴気にあてられただけの魔物に対して、悪の心だけを斬り捨てたという。
『そこまで、原始の炎がパワーアップしていたとはねえ。おったまげたよ』
「うえええ。もはやレベッカちゃんは、悪の心まで断ち切る存在に」
『無自覚だったけど、アタシ様ってとんでもなく強くなってね?』
そこは、自覚しようね。
「これは、本気で戦いたくなってきたでヤンスよ」
ヤトとリンタローが、戦闘態勢に入る。
「お手合わせ、願うでヤンス」
クレアさんの魔剣を打つ前に、自分の魔剣の出来を見ておかないと。
「普段は、ロングソード並のサイズになったんですね?」
「そうなんだよ。スマートになっちゃって」
以前のレベッカちゃんは大剣サイズで、存在感が大きかった。
今は、その三分の一くらいしかない。
鞘の形状も、羊かヤギの太い角を伸ばしたような形だ。魔物の本性を現して、より動物的になった。手触りも、どこか生物を思わせる。
『重量も、減らしたよ』
第三の腕クンも、【抹消砲】も、全部取り込んだ。
なのに、こんな形になって。
「でも、威力が落ちたわけではないようですね」
「それを、これから試す」
わたしは、レベッカちゃんを抜いた。
ブオン、と、炎の刃がレベッカちゃんを包んだ。オレンジ色の炎が、レベッカちゃんの周りで揺らめいている。
「フン!」
剣を横に凪ぐ。
「おっと」
離れたところにいたクレアさんに、剣から出たオーラの先端が当たりそうになった。
すぐに避けてもらえたが。
「おお。すごいですわね」
遠くにあった岩山が、チーズのように切断された。
「キャル。とんでもない威力になって、帰ってきてる」
「それだけじゃないでヤンス」
「うん」
ヤト、リンタローコンビが、なんか「後方腕組みおじさん」みたいな状態になっている。
「どうしたの? 岩を斬ったくらいでは、特に珍しくないって思うけど?」
これまで、わたしとレベッカちゃんは、無機物という無機物を斬り捨ててきた。
同族の魔剣レーヴァテインさえ、剣のサビにしてやったこともある。
「違うよ。キャルちゃん」
ゼゼリィが、わたしたちに歩み寄ってきた。
「ワタシの目で、森の中を見てみたんだけどね」
前髪を上げて、ゼゼリィが隠れている目をわたしたちに向ける。
万華鏡みたいに、目の中に光がグリングリン回っていた。
「悪意のある魔物たちが、ワタシたちに襲いかかろうとしていたんだよ。でもレベッカさんが、全部正気に戻しちゃった」
『はあ? アタシ様は、なにもしていないさ』
「したよ。発動した時点で、瘴気を焼き払っちゃったんだ」
マジですか。
「なんかね。スルトが迫ってきている瘴気に当てられて、魔物が凶暴化していたんだ。そいつらが、この森にまで集まっていたんだよ」
でも、レベッカちゃんの【原始の炎】効果が、魔物の心にまで反映したみたい。
元々邪悪な魔物はそのまま焼き払い、瘴気にあてられただけの魔物に対して、悪の心だけを斬り捨てたという。
『そこまで、原始の炎がパワーアップしていたとはねえ。おったまげたよ』
「うえええ。もはやレベッカちゃんは、悪の心まで断ち切る存在に」
『無自覚だったけど、アタシ様ってとんでもなく強くなってね?』
そこは、自覚しようね。
「これは、本気で戦いたくなってきたでヤンスよ」
ヤトとリンタローが、戦闘態勢に入る。
「お手合わせ、願うでヤンス」
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