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77うっつけ番長姫君
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「姫君。養殖場にて賊達が捕らえられました。」
朝の食事中の部屋に、小うるさい蘭丸が駆け込んできた。
巴姫が、素行の悪いガキたちを束ねたのは、二年前であった。
以前は、巴姫の周りには、娘たちの世話役がいたのだが、巴姫の乱暴さに、娘らは、みんな泣いて世話役辞退騒動となり、
どこの役職でも引き取りでのない乱暴者の家臣出身少年達を、
小姓として父親から押し付けられた。
ただ、蘭丸だけは、最初から小姓の立場であった理由は、
巴姫の教育世話役の息子であったためである。
それ故に、教育世話役である母親譲りの小うるさい男である。
巴姫と乱暴者の小姓達との最初は、反抗戦の連続であったが、
剣術と槍術や体術においては、体格勝る巴姫の敵ではなかった。
巴姫は、乱暴者の小姓達をまとめ上げて敬服させ従わせると、
次は、街の不良どもに因縁を付けながら、
さらに多くの不良どもを従わせて行った結果は、巴番長姫と呼ばれた。
都内では、巴姫に逆らえる不良どもはいなくなり、
今では、不良どもからは、巴番長姫と呼ばれている。
巴番長姫の思いでは、
生け簀の養殖場魚は、観賞用の小魚で食用には向かないはずである。
「して賊たちは何者だ?」
「まずいことに、ガイア教会の孤児院の子供らです。
捜索法事者に捕らえられました。」
「直ぐに教会へ行き、司祭長に養殖場の手伝いをするならば、
魚は自由に取っても良いと、昨日打つ合わせ済みで許可したと、
口裏を合わせてこい!」
日出国の法律は、子供であっても罪人扱いになるほど厳しすぎる。
ましてや、孤児院の子供達は、自分の配下たちであるのだとの思いからか、巴番長姫の胸には、理不尽すぎるとの怒りを、日ごろの不満が誘導していた。
捜索法事者に囚われたのであれば、
番長姫君の権限では、最早もみ消すことなどできない。
ましてや、判事職は、独立合議制であるために、
判決で法の力を弱らせる判例などしない。
配下の子供たちを解放させねばならないとの思いで、
巴番長姫は、急ぎ食事を中断して奉行所に向かうことにした。
番長姫君が奉行所に入ると、
事務方であろう皆は、あからさまに怪訝そうな目を向けた。
「うっつけ姫君がきやがった。」
「また何か、難癖に来たのか?」
あからさまに背を向けていた者共は、
あちらこちらで、周りみんなが聞き取れるほどの声で囁いている。
番長姫君は、子供たちを捕らえた与力に面会を求めると、
「此れは、姫君殿下。今回は、何用でお越しでしょうか?」
「子供達を開放してほしい。」
「養殖場の魚を盗んだ、罪人の子供達のことですか?」
「彼らは、養殖場の魚を盗んだのではない!
自由に捉えることは、わらわが許可済みだ。」
「子供達は、既に自白済みです。」
「被害届を出していないのに、盗と呼ばわりは、如何でしょうか?」
「被害届は、いけすの管理人から頂いています。」
「養殖場の魚の管理責任者は、わらわだ!被害届が出ているのであれば、
それは、現場の勘違いである。」
「被害届が出た時点では、法は、法です。」
法にかかわる者たちの特徴である、
頑固一徹を絵に描いたような与力である。
そこに下級同心が現れて、与力に耳打ちした。
「司祭長と被害届を出した警備人が来られて、子供達の罪を問うことは、
不可能のようです。子供達を連れて帰ってください。」
「法は法です。」といったその口から、
「子供達を連れて帰ってください。」
との言葉に、頑固一徹と思えた男はにこやかな顔になって、
番長姫君に情を感じさせた。
法の厳しさに対して、批判的な思いを抱いているのは、
番長姫君だけではなさそうである。
法の厳しさの原因は、老中白石であるが、番長姫君の叔父上でもある。
白石は、多くの改革を進める中で、
反対派を抑え込むために、法事国家政策を優先する事となって、
多くの改革を成し遂げる事ができた。
今では、多くの子供達の教育義務は、住民全員に受け入れられている。
子供達は、読み書きから計算までできるので、
希望の仕事へ向かうことができていた。
日出国の変化は、
突然現れて、瞬く間に東大陸の覇者になる勢いで併合した国々の農奴達を解放してしまい、
それぞれの民の生活を楽にしていく亜人協力国の影響を受けての改革法である。
改革は、白石の目指す富国強兵への地盤固めであるが、
政敵は、かなり多いようである。
巴番長姫は、子供達と司祭長を養殖場へ連れて来て、
「今日からここの魚の管理を孤児院に任せる。
ここの魚は、観賞用で、食用には向かない。」
「え~。食べられないの。精の付く魚と聞いたよ。」
「誰に?」
「教会に来た、信者さん。」
「誰に、精の付く魚を、食べさせようと思ったの?」
「優しい修道見習の小町姉が病気なので、
小町姉さんに上げようと、ごめんなさい。」
相変わらず純粋で優しい子供たちであるので、
番長姫君は、一人ずつ頭を撫でてやった。
巴番長姫達のその日の予定は、剣術と槍術の指南を受ける日であったので、
乱暴者の小姓達と孤児院の子供達そして、
各地区の不良ガキ等を束ねて訓練場に向かうと、
指南者からの指南は、普段よりも厳しい打ち込みをされた。
番長姫君は、街の不良ども全員が、文字を読めないことには驚いた。
更に身分制度のために将来の希望さえも無く、
自暴自棄的な行動が感じられた。
この事を強く番長姫君は、父上と母上に抗議した。
朝夕顔を合わすたびに抗議する日を続けた界が有り、
子どものための塾が出来て、農奴の開放さえもきまった。
日出国には、南の島国のコメを使った加工食品を作る文化があった。
せわしない年末に、もうすぐ来る年明け鏡餅の製造日を狙い、
番長姫君が厨房へやってくると、
「うっつけ姫様がお見えだ。」
と言って、みんなが一斉にできた鏡餅を隠しだした。
無礼な輩であるが、
うっつけ者との評判は、自業自得であると心得ているので、
咎めることなく臼の中を覗き込むと、
まだ米粒がところどころに見受けられる途中ではあるが、
「蘭丸!臼の中の餅を取り出して、かつげ!」
と命ずると、その他五人の小姓たちも駆け出して来た。
三基の臼から餅を取り出し六等分に分けて布にくるまった。
番長姫君は、教会前広場につくと、
餅を小さく丸くに揃えて盆の上に並べさせた後に、
小姓と孤児院の子供達と不良ガキたちは、
剣の訓練を兼ねた勝ち抜き戦である。
勝者の賞品は、小さく丸くに揃えた餅である。
矢張り勝ち抜き戦であると、小姓どもが勝ち抜いて来るが、
乱暴ではあるが心優しい奴らなので、
丸くに揃えた餅の中からは、小さめを取り出してかぶりつく。
不良ガキたちも次々と勝ち抜いて来るが、矢張り小さ目な餅を選び取る。
最後に残った幼き孤児院の子供達も勝ち抜して、
やっと、残りの大きめの餅を受け取るが、
誰もかぶりつかないで懐にしまうのは、
孤児院の更に幼い子供達へのお土産である。
これは誰かが指示して決めたことではないが、
最初、蘭丸の行動を見ていたみんなが真似をしだしたことから始まった。
不良どもに連帯感が生まれたのは、
外洋に出られる帆船の訓練からのようである。
帆船の訓練のきっかけは、外洋に船出する帆船乗り荒くれ男たちは、
他の国々の話を不良どもによく聞かせてくれるので、
他の国々の話に皆が夢中になってしまった。
番長姫君達は、外洋から帰港した帆船を狙って荷下ろしを手伝うと、
大人たちは、帰港するたびに帆船の扱い方をも、
喜んで教えて協力もしてくれた。
番長姫君一族の出は、海洋民族であるので、
束ねた不良者共を従えての帆船扱いを父親に頼むと、
何故にか?父親からの理解は容易かった。
訓練専用大型帆船を、番長姫君達不良者に建造してくれるとの事である。
訓練専用大型帆船が完成した暁には、すでに教官も決まっていて、
海洋訓練が予定された。
湾内での、何度かの訓練を経て、役割配置が決まった。
番長姫君の担当は、蘭丸と共に船の位置を星座によって確認することと、
海図の読み方に、三角法による距離の測り方であった。
番長姫君は、複雑な計算といろんな計測器の使い方や、
常に針先が北を示す不思議な羅針盤には驚かされたと共に、
夜空の星は、時間とともに西から東に動くのに、
天の南極と北極の星は動かないことを初めて知った。
天の北極で動かない中心星の位置から周りの星の位置で、
時間をも推測できるのには、更に驚かされ多様である。
沿岸航路ではあるが、一日六時間の睡眠で、
ひと月間訓練専用大型帆船上での休み無しの訓練は続いたが、
空模様が怪しくなったので湾に向かって航路した。
番長姫君は空の雲を見て、風向きをも予測しなければならない事に、
少し自信をなくしたが、蘭丸は常に的確に予測するので、
そのコツを尋ねて自分のものにした。
外は嵐だが、不良者たちに休みはない。
上陸するのを待っていたかのように、
剣術指南役は、遠慮なくたたき伏せてくる。
不良者達とてただ打ち込むだけでなく、
あの手この手と卑怯を承知で打ち込むが、
剣術指南役に当てるのはすべて無駄であった。
嵐が去ると、剣術指南役は、
番長姫君達を帆船での肉の供給用ヒトコブ兎の捕獲に誘い出した。
ヒトコブ兎は、肉質がよいうえに多くの子供を産む。
その子は、ひと月で次の世代をも生むことができるし、
水をあまり必要としないので、海藻だけの餌で飼育するのは楽である。
番長姫君達は、柳生指南からの提案で、
帆船訓練者全員がヒトコブ兎捕獲の為に、貴族専属狩場に向かった。
ヒトコブ兎捕獲の為の囲い柵を設置している最中に、
豚似コヨーテが現れた。
そして、ヒトコブ兎の捕獲中に事件が起きた。
朝の食事中の部屋に、小うるさい蘭丸が駆け込んできた。
巴姫が、素行の悪いガキたちを束ねたのは、二年前であった。
以前は、巴姫の周りには、娘たちの世話役がいたのだが、巴姫の乱暴さに、娘らは、みんな泣いて世話役辞退騒動となり、
どこの役職でも引き取りでのない乱暴者の家臣出身少年達を、
小姓として父親から押し付けられた。
ただ、蘭丸だけは、最初から小姓の立場であった理由は、
巴姫の教育世話役の息子であったためである。
それ故に、教育世話役である母親譲りの小うるさい男である。
巴姫と乱暴者の小姓達との最初は、反抗戦の連続であったが、
剣術と槍術や体術においては、体格勝る巴姫の敵ではなかった。
巴姫は、乱暴者の小姓達をまとめ上げて敬服させ従わせると、
次は、街の不良どもに因縁を付けながら、
さらに多くの不良どもを従わせて行った結果は、巴番長姫と呼ばれた。
都内では、巴姫に逆らえる不良どもはいなくなり、
今では、不良どもからは、巴番長姫と呼ばれている。
巴番長姫の思いでは、
生け簀の養殖場魚は、観賞用の小魚で食用には向かないはずである。
「して賊たちは何者だ?」
「まずいことに、ガイア教会の孤児院の子供らです。
捜索法事者に捕らえられました。」
「直ぐに教会へ行き、司祭長に養殖場の手伝いをするならば、
魚は自由に取っても良いと、昨日打つ合わせ済みで許可したと、
口裏を合わせてこい!」
日出国の法律は、子供であっても罪人扱いになるほど厳しすぎる。
ましてや、孤児院の子供達は、自分の配下たちであるのだとの思いからか、巴番長姫の胸には、理不尽すぎるとの怒りを、日ごろの不満が誘導していた。
捜索法事者に囚われたのであれば、
番長姫君の権限では、最早もみ消すことなどできない。
ましてや、判事職は、独立合議制であるために、
判決で法の力を弱らせる判例などしない。
配下の子供たちを解放させねばならないとの思いで、
巴番長姫は、急ぎ食事を中断して奉行所に向かうことにした。
番長姫君が奉行所に入ると、
事務方であろう皆は、あからさまに怪訝そうな目を向けた。
「うっつけ姫君がきやがった。」
「また何か、難癖に来たのか?」
あからさまに背を向けていた者共は、
あちらこちらで、周りみんなが聞き取れるほどの声で囁いている。
番長姫君は、子供たちを捕らえた与力に面会を求めると、
「此れは、姫君殿下。今回は、何用でお越しでしょうか?」
「子供達を開放してほしい。」
「養殖場の魚を盗んだ、罪人の子供達のことですか?」
「彼らは、養殖場の魚を盗んだのではない!
自由に捉えることは、わらわが許可済みだ。」
「子供達は、既に自白済みです。」
「被害届を出していないのに、盗と呼ばわりは、如何でしょうか?」
「被害届は、いけすの管理人から頂いています。」
「養殖場の魚の管理責任者は、わらわだ!被害届が出ているのであれば、
それは、現場の勘違いである。」
「被害届が出た時点では、法は、法です。」
法にかかわる者たちの特徴である、
頑固一徹を絵に描いたような与力である。
そこに下級同心が現れて、与力に耳打ちした。
「司祭長と被害届を出した警備人が来られて、子供達の罪を問うことは、
不可能のようです。子供達を連れて帰ってください。」
「法は法です。」といったその口から、
「子供達を連れて帰ってください。」
との言葉に、頑固一徹と思えた男はにこやかな顔になって、
番長姫君に情を感じさせた。
法の厳しさに対して、批判的な思いを抱いているのは、
番長姫君だけではなさそうである。
法の厳しさの原因は、老中白石であるが、番長姫君の叔父上でもある。
白石は、多くの改革を進める中で、
反対派を抑え込むために、法事国家政策を優先する事となって、
多くの改革を成し遂げる事ができた。
今では、多くの子供達の教育義務は、住民全員に受け入れられている。
子供達は、読み書きから計算までできるので、
希望の仕事へ向かうことができていた。
日出国の変化は、
突然現れて、瞬く間に東大陸の覇者になる勢いで併合した国々の農奴達を解放してしまい、
それぞれの民の生活を楽にしていく亜人協力国の影響を受けての改革法である。
改革は、白石の目指す富国強兵への地盤固めであるが、
政敵は、かなり多いようである。
巴番長姫は、子供達と司祭長を養殖場へ連れて来て、
「今日からここの魚の管理を孤児院に任せる。
ここの魚は、観賞用で、食用には向かない。」
「え~。食べられないの。精の付く魚と聞いたよ。」
「誰に?」
「教会に来た、信者さん。」
「誰に、精の付く魚を、食べさせようと思ったの?」
「優しい修道見習の小町姉が病気なので、
小町姉さんに上げようと、ごめんなさい。」
相変わらず純粋で優しい子供たちであるので、
番長姫君は、一人ずつ頭を撫でてやった。
巴番長姫達のその日の予定は、剣術と槍術の指南を受ける日であったので、
乱暴者の小姓達と孤児院の子供達そして、
各地区の不良ガキ等を束ねて訓練場に向かうと、
指南者からの指南は、普段よりも厳しい打ち込みをされた。
番長姫君は、街の不良ども全員が、文字を読めないことには驚いた。
更に身分制度のために将来の希望さえも無く、
自暴自棄的な行動が感じられた。
この事を強く番長姫君は、父上と母上に抗議した。
朝夕顔を合わすたびに抗議する日を続けた界が有り、
子どものための塾が出来て、農奴の開放さえもきまった。
日出国には、南の島国のコメを使った加工食品を作る文化があった。
せわしない年末に、もうすぐ来る年明け鏡餅の製造日を狙い、
番長姫君が厨房へやってくると、
「うっつけ姫様がお見えだ。」
と言って、みんなが一斉にできた鏡餅を隠しだした。
無礼な輩であるが、
うっつけ者との評判は、自業自得であると心得ているので、
咎めることなく臼の中を覗き込むと、
まだ米粒がところどころに見受けられる途中ではあるが、
「蘭丸!臼の中の餅を取り出して、かつげ!」
と命ずると、その他五人の小姓たちも駆け出して来た。
三基の臼から餅を取り出し六等分に分けて布にくるまった。
番長姫君は、教会前広場につくと、
餅を小さく丸くに揃えて盆の上に並べさせた後に、
小姓と孤児院の子供達と不良ガキたちは、
剣の訓練を兼ねた勝ち抜き戦である。
勝者の賞品は、小さく丸くに揃えた餅である。
矢張り勝ち抜き戦であると、小姓どもが勝ち抜いて来るが、
乱暴ではあるが心優しい奴らなので、
丸くに揃えた餅の中からは、小さめを取り出してかぶりつく。
不良ガキたちも次々と勝ち抜いて来るが、矢張り小さ目な餅を選び取る。
最後に残った幼き孤児院の子供達も勝ち抜して、
やっと、残りの大きめの餅を受け取るが、
誰もかぶりつかないで懐にしまうのは、
孤児院の更に幼い子供達へのお土産である。
これは誰かが指示して決めたことではないが、
最初、蘭丸の行動を見ていたみんなが真似をしだしたことから始まった。
不良どもに連帯感が生まれたのは、
外洋に出られる帆船の訓練からのようである。
帆船の訓練のきっかけは、外洋に船出する帆船乗り荒くれ男たちは、
他の国々の話を不良どもによく聞かせてくれるので、
他の国々の話に皆が夢中になってしまった。
番長姫君達は、外洋から帰港した帆船を狙って荷下ろしを手伝うと、
大人たちは、帰港するたびに帆船の扱い方をも、
喜んで教えて協力もしてくれた。
番長姫君一族の出は、海洋民族であるので、
束ねた不良者共を従えての帆船扱いを父親に頼むと、
何故にか?父親からの理解は容易かった。
訓練専用大型帆船を、番長姫君達不良者に建造してくれるとの事である。
訓練専用大型帆船が完成した暁には、すでに教官も決まっていて、
海洋訓練が予定された。
湾内での、何度かの訓練を経て、役割配置が決まった。
番長姫君の担当は、蘭丸と共に船の位置を星座によって確認することと、
海図の読み方に、三角法による距離の測り方であった。
番長姫君は、複雑な計算といろんな計測器の使い方や、
常に針先が北を示す不思議な羅針盤には驚かされたと共に、
夜空の星は、時間とともに西から東に動くのに、
天の南極と北極の星は動かないことを初めて知った。
天の北極で動かない中心星の位置から周りの星の位置で、
時間をも推測できるのには、更に驚かされ多様である。
沿岸航路ではあるが、一日六時間の睡眠で、
ひと月間訓練専用大型帆船上での休み無しの訓練は続いたが、
空模様が怪しくなったので湾に向かって航路した。
番長姫君は空の雲を見て、風向きをも予測しなければならない事に、
少し自信をなくしたが、蘭丸は常に的確に予測するので、
そのコツを尋ねて自分のものにした。
外は嵐だが、不良者たちに休みはない。
上陸するのを待っていたかのように、
剣術指南役は、遠慮なくたたき伏せてくる。
不良者達とてただ打ち込むだけでなく、
あの手この手と卑怯を承知で打ち込むが、
剣術指南役に当てるのはすべて無駄であった。
嵐が去ると、剣術指南役は、
番長姫君達を帆船での肉の供給用ヒトコブ兎の捕獲に誘い出した。
ヒトコブ兎は、肉質がよいうえに多くの子供を産む。
その子は、ひと月で次の世代をも生むことができるし、
水をあまり必要としないので、海藻だけの餌で飼育するのは楽である。
番長姫君達は、柳生指南からの提案で、
帆船訓練者全員がヒトコブ兎捕獲の為に、貴族専属狩場に向かった。
ヒトコブ兎捕獲の為の囲い柵を設置している最中に、
豚似コヨーテが現れた。
そして、ヒトコブ兎の捕獲中に事件が起きた。
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