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第1章

33 最後の三日間: 前夜

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夜遅くに、殿下が屋敷を訪れた。

でも、いつもとは様子が違っていた。
執事たちに何か指示を出すと、殿下は私の腕を取って自分の部屋へと足早に向かう。
部屋に入った途端、性急にタイを外し服を脱いでいく殿下。

「リーシャも早く脱いで」

短く命令され、私も慌てて服を脱いでいく。

「あの…殿下…?」

「なんだい?」

脱ぎ終わった殿下に顎をつかまれ、口付けられた。
脱ぎかけだった服は、キスに気を取られている間に手早くすべて脱がされていた。

「今日はどうーー」

言葉を封じるようにまたキスをされる。
もしかしたら、聞かれたくないのだろうか。

何故か今、部屋にはレオンもサイラスもいなかった。
殿下と二人きり。
酷く久しぶりの状況に、落ちつかない。

「殿下…?レオンやサイラスは…」

「たまには二人きりもいいだろう?それとも彼らがいなきゃ嫌かい?」

慌てて首を横に振る。
決してそういうわけではないのだから。

「そう」

気のせいかもしれないけれど、殿下は少し機嫌よさそうに笑って再度口付けた。

「たまには僕が、君を独り占めしたっていいだろう?」

らしくない物言いに戸惑って、曖昧に頷く。
殿下が私の首に吸いついた。

「…殿下…跡が…」

「何を嫌がる?僕のモノに、僕の印をつけているだけだよ」

見える位置は恥ずかしい…そう思ったけれど、どうせ殿下がやめてくれるわけはないのであきらめて力を抜いた。

きつく吸われると、思わず声が出てしまう。殿下はそれに笑って、更に跡をつけていく。首にも、鎖骨にも、腕の内側にも、たくさん殿下の印がつけられていく。
黙ってそれに耐えていると、

「リーシャも僕につけておくれ」

と首を差し出された。
初めてのことに戸惑う私を、殿下が促す。

「ほら」

近づけられた首におずおずと唇をつけ、殿下の動きを思い出しながら肌を吸う。
初めてで、上手くできない私を殿下が笑う。

「ちゃんと僕のやり方を覚えるんだ。いいね」

頷くと、殿下は私の脚を開かせた。そして内ももに唇を当てて私を見上げた。
上目遣いのその表情に、肌が粟立つ。

殿下の唇が私のももにゆっくりと触れ、そして吸われた。
唇が離れると跡が残っていた。
その周辺にも、どんどん殿下のつけた跡が増えていく。

ただキスをされているだけなのに、息が上がって苦しくなる。
一つ跡が増えるたびに、快感が増していく。
声にならない声をあげて悶える私を、殿下が笑った。

「可愛いよ。僕の奥さん」

ときどき殿下は私をそう呼ぶ。
そのたびに私は、殿下の意図がわからなくて混乱する。
だって私は殿下と結婚などしていない。当たり前だ。殿下は既婚者でおまけにこの国の王子なのだから。
私はただ、時折訪れる殿下に抱かれるために、この屋敷に閉じ込められているだけ。それだけだ。
それなのに

「そろそろ覚えたかい?ほら、僕に君の印をつけておくれ」

そう言いながら、再び首を差し出す殿下。
躊躇いながらも肌を吸うと、今度は少しだけ跡が残った。

「もう一つ」

促されて、すぐ近くにもう一つつけた。

「もう一つ、つけておくれ」

戸惑って目を見つめると、視線で促された。
殿下の肌に唇をあてて、吸う。
殿下が微かに呻き声をあげた。その声に煽られて、思わずもう一つつけてしまった。殿下がくすぐったそうに笑う。
その笑い声に誘われてもう一つ。


気づいたときには、たくさんの跡を殿下につけてしまっていた。

「上達が早いね、僕の奥さんは」

胸にくっきり残る跡を嬉しそうに撫でて、殿下が笑った。

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