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相合傘
しおりを挟む浅葱はモテるだろうと、TVを見ている横顔を見ながらふと思った。
「浅葱ってモテるよね。」
「はぁ・・・?」
失言だったと思った時には、もう遅い。
浅葱は眉間に深い皺を寄せて、嫌悪感剥き出しの顔でこちらを見ている。
「モテねーし・・つか、お前にそんなことわかるわけねーだろ。」
照れているのか、私に言われるのが嫌なのか、よくわからない。
彼は今時の高校生のように見えるけれど、中身は信じられないほどウブな子なのだ。
「いや、わかるよ。浅葱かっこいいもん。」
発言には気をつけようと思っているけれど、彼に絡みたい感情の方が少し強い。
「かっこよくねーし。」
彼はムキになって、反論してきた。
「私は女だからわかるんだよ。そういうことは。」
黙り込んだ彼に、さすがに揶揄いすぎたかと心配になる。
「・・・じゃあ、御影は?」
「・・・モテるでしょ。あなたたち兄弟は、誰からどう見てもモテます。」
どうしていきなり御影の話が出てくるのだろう。
洗面所での一件を目撃されてから、純粋な浅葱を刺激しないように、彼の話題はなるべく避けているというのに。
「じゃあさ・・・お前は、どっちの方がタイプ・・・?」
「え・・?」
驚いた。
浅葱がそんな質問をしてくるとは、夢にも思っていなかったから。
「やっぱ今の無し。忘れて。」
すぐに真っ赤になる彼が、可愛いと思う。
ついちょっかいかけたくなる自分がいて、抑えるのが難しい。
好きな子ほど意地悪をしたくなるという、小学生男子の気持ちが少しわかった気がした。
♢♢♢
ある日、久々に出版社まで出向いた帰り道、突然の雨に降られてしまった。
日頃の行いが悪いせいだろうか。
傘を持っていない日に限って、雨に降られる。
どうしようかと駅から出られずに困っていると、突然目の前に赤い傘が差し出された。
「あれ?浅葱・・?」
「お前、傘持って行くの忘れてたから。コンビニに菓子買いに行くついでに、来てやった。」
ふて腐れたような表情で視線を逸らした彼がたまらなく愛おしくて、抱きしめたい衝動に駆られる。
浅葱は普段お菓子なんて、食べない。
最近は私が食べているものをTVを見ながら一緒に食べることはあるけれど、自分で買うようなことはしないと知っている。
「ありがとう。浅葱。一緒に帰ろ♡」
「あ、自分の傘忘れた。」
「良いじゃん。相合傘しようよ。」
「嫌だよ、恥ずい。」
文句を言いながらも、大人しく一緒に傘に入ってくれる彼が可愛くて仕方ない。
「俺が持つからいい。」
私の手から傘をとりあげて、持ってくれる。
私より15cm以上背が高い年下の彼が、とても頼もしく思えた。
「あれ?浅葱くん?」
家の近くで声をかけられて振り返ると、そこには麗しい女子高生が二人立っていた。
(若い・・・可愛い・・・・!)
高校生を見ると、自分の子どものような気持ちで見てしまう。
さすがに子どもというには大きいけれど、親心というものがわかる年齢に差し掛かっている。
これが歳を取るということなんだな、と先日友人としみじみ話していた。
「浅葱くんの、お姉さん?」
「違ぇよ。」
そっけない態度の浅葱に、女の子たちは顔を見合わせている。
(こういう態度のイケメン、好きになっちゃうよねぇ。わかるわかる。)
彼女たちの表情から、勝手に色々なことを読み取ってしまう。
浅葱はやはり確実にモテている。自分の説が正しかったと、私は誇らしげな気分になった。
「え・・?じゃあ彼女?・・じゃないよね、歳離れすぎだよね。」
「だったら、何?」
(え・・・?いや、さすがに彼女は無理あるよ・・・!)
私は内心ツッコミを入れながら、浅葱と彼女たちを交互に見る。
彼女たちは「え~?」と言いながらも、そんなわけないと確信した顔をしているので、ひとまず弁解はしなくてよさそうだった。
「真美、良いからもう行くぞ。」
グイッと手を引いて、彼はどんどん前へ歩いていく。
(こんな男らしい一面・・・初めて見た・・・・♡)
ぐんぐん歩いていく彼の後ろ姿に、不覚にもときめいてしまった。
「浅葱、待って。」
「何。」
「どうしたの?」
「別に。なんかアイツらの態度に、腹立っただけ。」
私は10歳以上年下の浅葱が見せた男っぽい一面に、ドキドキしている。
(いや、子ども相手にドキドキしちゃダメでしょ・・・)
何だかとても悪いことをしている気分になった。
彼に手を引かれて、相合傘。
「手繋いで、帰宅?へぇ。お前たちって、そんなに仲良かったんだ?」
家の前で、仕事帰りの御影にばったり出会した。
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