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初めての恋人
しおりを挟む「今日からよろしくな。」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします。」
堅い。まるで、お見合いだ。
朝からダイニングテーブルに向かい合い、頭を下げ合う大我と私は、今日からしばらくの期間、恋人同士として過ごす。
急に仮交際期間と言われても、今まで「監視する方とされる方」という立場で過ごした仲なので、ちょうど良い距離がわからない。
「今日からユミちゃんは、俺の恋人なんだよな。なんか信じらんねぇ。」
言いながら、彼は恥ずかしそうに目を逸らした。
彼の照れている顔は、いつもより少し幼く見える。
普段の男らしさとのギャップに、胸がキュンと疼いた。
この組織は、やることがいちいち普通じゃない。
非常識なことばかり目にしてきたが、今回はこのぶっ飛んだ未知のイベントに、心の底から感謝したい気持ちだった。
仮交際期間をより実社会の恋人同士らしく過ごすため、私の監禁部屋にはキッチンが増設され、家庭的な時間を体験できるようになり、外でのデート気分を味わえるようにと、喫茶店やレストラン、映画館などのセットも準備してくれたらしい。
(この組織の財力・・一体どうなってるの・・・・?!この建物ってどれだけデカイの・・・?!人質相手に・・・何やってんの・・?!)
監禁部屋とミーティングルームしか知らない私にとって、この建物の全容は想像もつかなかった。
「死ぬ気で、一番ゲットしたんだぜ。・・・ユミの初めての男に・・どうしてもなりたかった。」
「大我君・・・」
初めての男、という言葉に、心臓がドクンと大きく跳ねる。
(大我君が私の初めての男に・・完璧な肉体美、荒々しさと優しさを兼ね備えたこのイケメンが・・・・♡)
100人いたら100人がイケメンと認めるであろう整った顔立ちに、ヤンチャで荒々しい雰囲気を併せ持つ大我。彼が、私の初めての男になるだなんて、自然の摂理に反している。
濡れたような黒艶髪をかき上げながら、彼はふっと優しく笑った。
恋人に向けた、甘くとろけるような笑顔。
「俺がユミちゃんのために朝食作るから、少し待ってろ。」
ぐしゃぐしゃと私の頭を撫でた彼は、席を立つ。
(大我君に朝食作らせるなんて、そんな贅沢・・・!?っていうか、イケメンの上に、料理まで出来るの?!)
全てのスペックが桁違いの彼に、そんなことまでさせられないと慌てて立ち上がると、彼はポンポンと私の頭に優しく触れた。
「お前、まだ寝起きのままだろ?俺が作ってる間に、顔洗って着替えて来いよ。」
「・・・?!・・・・はい・・・・」
(眩しすぎる・・っ・・・大我君・・なんでこんなにカッコイイの・・・・!!!)
普段は「ユミちゃん」と呼ぶ彼が、時折呼び捨てや「お前」呼びになるたびに、心臓が悲鳴をあげる。
世界中の女が虜になるであろうその笑顔に、私の身体は全ての動きを止めて固まった。
大我は、突っ立っている私の両腕を引いて、彼の腰に巻き付けるように導いた。
「なぁ、俺ら恋人同士だぜ?もっと甘えてみ?」
大我の香りがふわりと、私の身体を包んだ。
優しく抱きしめる彼の腕にすっぽりおさまりながら、私は思考回路までフリーズしてしている。
「照れてんの?ユミ・・お前、すげー可愛い。」
抱きしめる腕に、ぎゅっと力がこもり、私は身に余る幸せに呼吸さえ出来ない。
(私の恋人・・・かっこ良すぎる・・・・♡)
私は彼の腕の中で、鼻血を出しそうなほどの興奮に息を荒げていた。
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