蛇に祈りを捧げたら。

碧野葉菜

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仙界

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「どの色が好きだ?」
「どれも綺麗ですが……蛇珀様のような色は、ないのでしょうか?」
「俺の色?」
「はい。髪や光の色もですが、私は蛇珀様の目の色がとても好きなんです」

 素直に気持ちを伝えるいろりに、蛇珀の鼓動が高鳴る。
 いろりと過ごすとこのようなことが頻繁に起こり、蛇珀は恋とはまるで病のようだと思っていた。もちろん神々に肉体的な病が宿ることはないため、想像の域ではあるが。
 
「俺の色はこの世では表現できねえ。この世のものじゃねえからな」
「そうですか……。でも緑が近いですから、緑が好きです」

 蛇珀は照れ隠しに一つ咳払いをした。

「お、俺のことじゃなくてだな。……じゃあ、俺のことを除いて好きな色を教えろ」
「緑以外で、ですか?」
「ああ」

 いろりは改めて画用紙を見ると、一つ、目を惹く色があった。

「この色、好きです」

 いろりが指を差したのは、桃色であった。
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