蛇に祈りを捧げたら。

碧野葉菜

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試練

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「あの、百恋様は、どうしてここに?」
「いろりちゃんが心配で来ただけだよ。蛇の奴がいつ帰って来るかわからないとか聞いて、寂しがってないか気になっちゃってさ」
「……百恋様はあの場にいらっしゃらなかったのに、どうして詳しくご存知なのですか?」

 いろりの質問に、百恋は鋭いな、と感じる。

「……いやぁ、狐雲様に聞いてね! 苦行の助言とかは禁止だけど、世間話くらいなら大丈夫だからさ!」
「そうなんですか。わざわざお気遣いいただいて……ありがとうございます。……あの、百恋様はこんな風にたくさんの人にお姿を見せて大丈夫なんですか?」
「大丈夫だよ! これは僕の能力だからさ。恋神だから人として恋の仲介をすることもあるからね。他の神は人じゃないってバレちゃうからこんなに堂々と人の輪に入れないけどね。特に蛇珀は神力も強いし、まともにデートもできなったでしょ?」
「そう、ですね。なので日中出かける時は蛇の姿になられて、私の鞄に入って一緒に出かけたりしました。後は夜更けに少し家を抜け出したり、日が高くても人がいない場所には連れ出してくださいました……」

 蛇珀との濃密な日々を思い出し、頬を染めながら語るいろり。

「……いろりちゃんってほーんと、蛇珀のことしか頭にないんだねぇ」
「え!? あっ……………は、はい」

 控えめだが明確な返事をするいろりに、百恋は誘い水を出す。
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