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ライム先輩とのお出掛け
待ち合わせ
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いつもの通り、朝起きるとアーロンの隣に三番目の兄ケビンの姿は無かった。
代わりに枕にお金と手紙が置いてあった。お小遣いだ。ありがたく頂く。
アーロンはあんまりお金は持っていないので普段無駄遣いしない様にしている。
例えばイアンはしょっちゅう菓子パンやお菓子を売店で買う。でもアーロンは買わない。三食は寮費に含まれているので、食事でお腹一杯にする。それでもお菓子が食べたくなる時があるので、談話室のお菓子はとても助かっている。ただ、他の人も食べるので食べ過ぎない様に気を付けないといけない。
イアンは王都に実家があるので毎週末帰っているから、その度にお小遣いを貰っているのだろう。アーロンも実家にいる時は毎月決まった額を貰っていた。でもアーロンの家は遠いからイアンのように毎週貰いに行く事は出来ない。
入学前に必要経費として、一学期分のお金を父から渡された。九人いるアーロンの兄達と同じ金額で、「それで一学期をやりくりしろ。もし途中で盗まれたり足りなくなったりしても次の学期になる迄追加はやらん。もう此処から独り立ちする為の勉強は始まっていると思え」と言われた。後でこっそり母に「足りなくなったら連絡して来て良いのよ」と言われたがアーロンはそうならないように頑張るつもりだ。
今日も何か買ったりするつもりは無い。けれど、もし面白そうな魔道具の本があったら欲しいと思っている。ライム先輩には古本屋に行きたいとお願いしてある。
それからお昼ご飯はライム先輩がご馳走してくれる事になっている。
ケビンに相談したら、「向こうの方が爵位が高いし、年も上なんだから変に遠慮するな。お前らは可愛い顔で素直にお礼を言っておけば良いんだ」と言われたので、出来るか分からないがそうするつもりだ。心苦しいので、あんまり高いお店では無いと良いな、沢山食べないように気を付けようと思っている。
制服で出掛ける事になっているので、着替えて下に降りる。
一目で貴族学院の生徒と分かるから、王都の警備隊も生徒達に目を配ってくれる。王都の人々にとっても、学院の生徒はお金を落としてくれるお得意様なので失礼な態度は取らない。アーロンみたいに警護が雇えない家の生徒の場合、下手に平民の様な格好をして目立たなくするよりよっぽど安全なのだそうだ。後は貧民街と花街にさえ近付かなければ問題無い。因みに花街に行く時は制服より私服が良いそうだ(情報源はライム先輩とイアン、花街の件だけケビンから聞いた)。
寧ろ学院の生徒にとって問題となるのは、生徒同士の揉め事で、生徒同士が揉めていても街の人間は見て見ぬふりを決め込む。何故なら下手に貴族同士の問題に関わると厄介だからだ。だが、これは今日はライム先輩が一緒だから全く心配は無い。
三人で朝食をとった後、学院の馬車寄せに向かった。ライム先輩との待ち合わせ場所だ。
「良いお天気ですね」
「本当に」
「銀杏並木がはまだ黄色く無いっすねー」
等と三人で話しながら歩くが、ちょっと緊張している。無理に引き摺り出して来たような無難な会話になってしまう。
少し早めに着いて無言で待っていると、茶色い箱馬車がやって来るのが見えた。それを見て、タイスケが思わずといった様に溢す。
「ああ、安心したっす。真っ白なのとか、金ぴかのとかだったらどうしようかと実は思ってたっす」
「でも今迄僕が乗った事あるのとはどう見ても段違いだよ」
「うむ。良い馬車です」
馬車が近付いてくる。御者台には、御者の格好をした人物と、お仕着せを着たライム先輩の使用人のマーリーの姿が見えた。実用一辺倒な辻馬車とは違い、派手では無いが装飾があり貴族の馬車だと遠目からでも分かる作りだ。扉に入っているのはおそらくライム伯爵家の紋章だろう。それ以外にも警護らしき馬の姿もある。
「おいらなんだか緊張して来たっす」
「今更だよー」
「お前は緊張していた方が、大人しくて良い。ずっとそうしていなさい」
「ええー、若はこういうの慣れていなさるし、アーロン様は真っ白でも金ぴかでもお似合いだからそんな事言えるんす」
本当に緊張しているのかタイスケは怪しいが三人で話していると緊張が解れる気がする。並んで立っていると、とうとう馬車が目の前に停まった。マーリーが降り、こちらに一礼した後、扉を開けた。中からライム先輩が出て来る。
「おはよう。待たせたね」
「おはようございます。本日はよろしくお願い致します」
イチロウが代表して挨拶を返すのに、二人が続く。ライム先輩に先導され、進行方向後ろ向きの席にタイスケとライム先輩、その向かい進行方向にイチロウとアーロンが座った。馬車が走り出すのに合わせて、ライム先輩が話し始める。
「今日の予定だが、まず火の国のお二人の魔道具を見に行く。回るのは三箇所を予定していて、最初は王都で一番の人気店。朝なら混み合わないのでゆっくり時間を掛けられる。もし其処が早めに終わったら、午前中の内に二箇所目に行ってしまおう。そしてその後昼食。昼食後の時間帯はどの店も混み合うので、魔道具は一旦おいて、比較的空いていると思われる本屋へ行く。本屋はアーロン君の希望だね」
とアーロンに微笑みかけるのに、
「はい」
と頷く。ライム先輩はイチロウ達に視線を戻した。
「魔道具の二箇所目は老舗だ。三箇所目はちょっと偏屈な店主でね、夕方にならないと店を開かないので最後に予定している。此処迄で問題は無いかな?」
「問題ありません」
と今度はイチロウが答えた。
「うん。夕食に間に合うように学院には戻るから安心して。私も今晩からまた学院の寮に戻るから君達と一緒に帰るよ」
「そうなのですね」
「うん。昼食は今話題の店に予約をとったから楽しみにすると良い。量も味も君達好みの筈だよ」
その言葉にわあとアーロンとイチロウが喜ぶ。不意に、ライム先輩は隣を見た。
「タイスケ君は随分静かだね、馬車は苦手かい?」
珍しくだんまりなので、酔ったのかと心配したようだった。
代わりに枕にお金と手紙が置いてあった。お小遣いだ。ありがたく頂く。
アーロンはあんまりお金は持っていないので普段無駄遣いしない様にしている。
例えばイアンはしょっちゅう菓子パンやお菓子を売店で買う。でもアーロンは買わない。三食は寮費に含まれているので、食事でお腹一杯にする。それでもお菓子が食べたくなる時があるので、談話室のお菓子はとても助かっている。ただ、他の人も食べるので食べ過ぎない様に気を付けないといけない。
イアンは王都に実家があるので毎週末帰っているから、その度にお小遣いを貰っているのだろう。アーロンも実家にいる時は毎月決まった額を貰っていた。でもアーロンの家は遠いからイアンのように毎週貰いに行く事は出来ない。
入学前に必要経費として、一学期分のお金を父から渡された。九人いるアーロンの兄達と同じ金額で、「それで一学期をやりくりしろ。もし途中で盗まれたり足りなくなったりしても次の学期になる迄追加はやらん。もう此処から独り立ちする為の勉強は始まっていると思え」と言われた。後でこっそり母に「足りなくなったら連絡して来て良いのよ」と言われたがアーロンはそうならないように頑張るつもりだ。
今日も何か買ったりするつもりは無い。けれど、もし面白そうな魔道具の本があったら欲しいと思っている。ライム先輩には古本屋に行きたいとお願いしてある。
それからお昼ご飯はライム先輩がご馳走してくれる事になっている。
ケビンに相談したら、「向こうの方が爵位が高いし、年も上なんだから変に遠慮するな。お前らは可愛い顔で素直にお礼を言っておけば良いんだ」と言われたので、出来るか分からないがそうするつもりだ。心苦しいので、あんまり高いお店では無いと良いな、沢山食べないように気を付けようと思っている。
制服で出掛ける事になっているので、着替えて下に降りる。
一目で貴族学院の生徒と分かるから、王都の警備隊も生徒達に目を配ってくれる。王都の人々にとっても、学院の生徒はお金を落としてくれるお得意様なので失礼な態度は取らない。アーロンみたいに警護が雇えない家の生徒の場合、下手に平民の様な格好をして目立たなくするよりよっぽど安全なのだそうだ。後は貧民街と花街にさえ近付かなければ問題無い。因みに花街に行く時は制服より私服が良いそうだ(情報源はライム先輩とイアン、花街の件だけケビンから聞いた)。
寧ろ学院の生徒にとって問題となるのは、生徒同士の揉め事で、生徒同士が揉めていても街の人間は見て見ぬふりを決め込む。何故なら下手に貴族同士の問題に関わると厄介だからだ。だが、これは今日はライム先輩が一緒だから全く心配は無い。
三人で朝食をとった後、学院の馬車寄せに向かった。ライム先輩との待ち合わせ場所だ。
「良いお天気ですね」
「本当に」
「銀杏並木がはまだ黄色く無いっすねー」
等と三人で話しながら歩くが、ちょっと緊張している。無理に引き摺り出して来たような無難な会話になってしまう。
少し早めに着いて無言で待っていると、茶色い箱馬車がやって来るのが見えた。それを見て、タイスケが思わずといった様に溢す。
「ああ、安心したっす。真っ白なのとか、金ぴかのとかだったらどうしようかと実は思ってたっす」
「でも今迄僕が乗った事あるのとはどう見ても段違いだよ」
「うむ。良い馬車です」
馬車が近付いてくる。御者台には、御者の格好をした人物と、お仕着せを着たライム先輩の使用人のマーリーの姿が見えた。実用一辺倒な辻馬車とは違い、派手では無いが装飾があり貴族の馬車だと遠目からでも分かる作りだ。扉に入っているのはおそらくライム伯爵家の紋章だろう。それ以外にも警護らしき馬の姿もある。
「おいらなんだか緊張して来たっす」
「今更だよー」
「お前は緊張していた方が、大人しくて良い。ずっとそうしていなさい」
「ええー、若はこういうの慣れていなさるし、アーロン様は真っ白でも金ぴかでもお似合いだからそんな事言えるんす」
本当に緊張しているのかタイスケは怪しいが三人で話していると緊張が解れる気がする。並んで立っていると、とうとう馬車が目の前に停まった。マーリーが降り、こちらに一礼した後、扉を開けた。中からライム先輩が出て来る。
「おはよう。待たせたね」
「おはようございます。本日はよろしくお願い致します」
イチロウが代表して挨拶を返すのに、二人が続く。ライム先輩に先導され、進行方向後ろ向きの席にタイスケとライム先輩、その向かい進行方向にイチロウとアーロンが座った。馬車が走り出すのに合わせて、ライム先輩が話し始める。
「今日の予定だが、まず火の国のお二人の魔道具を見に行く。回るのは三箇所を予定していて、最初は王都で一番の人気店。朝なら混み合わないのでゆっくり時間を掛けられる。もし其処が早めに終わったら、午前中の内に二箇所目に行ってしまおう。そしてその後昼食。昼食後の時間帯はどの店も混み合うので、魔道具は一旦おいて、比較的空いていると思われる本屋へ行く。本屋はアーロン君の希望だね」
とアーロンに微笑みかけるのに、
「はい」
と頷く。ライム先輩はイチロウ達に視線を戻した。
「魔道具の二箇所目は老舗だ。三箇所目はちょっと偏屈な店主でね、夕方にならないと店を開かないので最後に予定している。此処迄で問題は無いかな?」
「問題ありません」
と今度はイチロウが答えた。
「うん。夕食に間に合うように学院には戻るから安心して。私も今晩からまた学院の寮に戻るから君達と一緒に帰るよ」
「そうなのですね」
「うん。昼食は今話題の店に予約をとったから楽しみにすると良い。量も味も君達好みの筈だよ」
その言葉にわあとアーロンとイチロウが喜ぶ。不意に、ライム先輩は隣を見た。
「タイスケ君は随分静かだね、馬車は苦手かい?」
珍しくだんまりなので、酔ったのかと心配したようだった。
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