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ライム先輩とのお出掛け
お見送り
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ライム伯爵家の馬車は先ず貴族学院の北門へ停まった。
火の国の二人が降りる。そこからだと火の国の寮へは歩いて十五分程で着くそうだ。正門と違い馬車寄せは無いので、直ぐに降りられる様、扉側に火の国の二人が座っていた。
「長くは停めて置けないので、中からの挨拶で申し訳無い。気を付けて帰ってくれ給え」
「本日はありがとうございました」
礼を言う二人にアーロンはライム先輩と共に馬車の窓から手を振った。本当ならライム先輩もここで降りるのだが、アーロンを男爵家の寮へ送る為、そのまま馬車は南門へ向かう。
「お手数お掛けして申し訳ありません」
「気にしないで。暗くなってから君を一人で歩かせる方が不安だ」
「でも、先輩は僕を送った後余分に歩く事になるでしょう?」
南門からアーロンの寮迄は徒歩十五分程だが、そこからライム先輩の伯爵家の寮迄戻るには三十分位掛かる。
「ははは、食後の良い運動だよ。今日の夕食は量が多かったからね」
とライム先輩は茶目っ気たっぷりに片目を瞑って見せた。中迄馬車で入って行けたら楽なのだが、それはいけない決まりになっている。直ぐに南門へ着いたので、二人は馬車から降りた。ライム先輩は御者と護衛に労りの言葉を掛けている。アーロンの本はライム先輩の使用人であるマーリーが持ってくれている。自分で持っても平気なのだが。マーリーはその他にも荷物らしき箱を持っているのでアーロンは申し訳なく思ってしまう。
二人で並んで歩き出す。その後ろを荷物を持ったマーリーがついて来る。
「今日は楽しかったかい?」
「はい、とても」
「次は二人で行こう」
「是非」
南門からの道は図書館の前を通って行く事になる。子爵家の上級生達に追い掛けられた因縁の場所だ。辺りはすっかり暗くなっているが、月は出ているし街灯もあるし、何より隣にはライム先輩が居るしでちっとも怖くは無い。歩きながらアーロンは今日の一日を思い出した。いつもとは違う、ライム先輩を見たなあと。思わずくすりと笑ってしまう。
「どうしたのかい?」
「先輩が『目玉が飛び出る程高い』って仰ったのを思い出して。領地のお食事の事もですけど、何だか僕の思っていたのとは違う先輩を今日は知る事が出来ました」
「おやおや。それが君にとって良い印象であれば嬉しいのだが」
「勿論良い印象です!」
「そうかい? でも『目玉が飛び出る程高い』と言ったのは私の父なのだよ。あの魔道具屋は父から教えて貰ったのでね」
「そうでしたか」
「うん、その時に父から聞いた話なのだがね、嘘か本当かも定かでは無いのだが。……昔、ある国の王太子があの魔道具屋でとんでもない魔道具を依頼しようとしたのだそうだ。その時に提示された金額が目玉が飛び出る程高かったので、王太子は諦めたのだそうだ」
「とんでもない魔道具ですか? どんなのだろう」
「うん、それがね……」
とライム先輩は思わせぶりに話の間を取る。アーロンは話の続きを期待するようにライム先輩を見上げた。
「その王太子の恋人は男だったのだそうだ。けれどもそろそろ後継を望まれる年になり、婚約者の令嬢との結婚を急かされた王太子は、かの魔道具屋に行った。そして、『男を妊娠させる魔道具を作って欲しい』と依頼したのだそうだ。すると、魔道具屋は、『お主の国を寄越すなら作ってやろう』と答えたそうだ。王太子のお付きはそれを聞いて慌てたが、当人は慌てず、『吾が王になった暁にはやっても良い。だが貰ってどうする?』と魔道具屋に聞いた。すると、『隣の国に売る』と答えたので、『それは駄目だ』と諦めたそうだ。何でもその王太子と隣の国の王子はとても仲が悪かったらしい」
「自分の国ですかそれは確かに『目玉が飛び出る程高い』ですね」
「うん」
「本当にそんな魔道具作れるのでしょうか?」
「どうだろうね? 我が父が話すにしては随分と御伽じみた話だなあと思ったが、私は眉唾物だと考えているよ」
その後は、今日一日の話等をしながら歩いた。二人で話しながら歩いていると、直ぐに男爵家の寮に着いてしまった。
「今日はありがとうございました」
「うん。そうだ、君が買った本と、これはお土産なのだが、持てるかい?」
マーリーからアーロンは図鑑を受け取った。それ以外に持っていた箱も渡される。だいぶ大きめの箱だ。
「ふふふ。前が見えにくそうだね、扉は私が開けよう」
とライム先輩が男爵家の寮の扉を開けてくれた。
「早く入りなさい。また明日ね」
両手が塞がっているアーロンは名残惜しく思って先輩を見上げた。するとライム先輩の顔がアーロンに近付き、そっとおでこに唇が触れて離れて行った。えっと思った時には、美しい笑みを浮かべるライム先輩の顔が、閉じる寮の扉の向こうに消えて行く所だった。
火の国の二人が降りる。そこからだと火の国の寮へは歩いて十五分程で着くそうだ。正門と違い馬車寄せは無いので、直ぐに降りられる様、扉側に火の国の二人が座っていた。
「長くは停めて置けないので、中からの挨拶で申し訳無い。気を付けて帰ってくれ給え」
「本日はありがとうございました」
礼を言う二人にアーロンはライム先輩と共に馬車の窓から手を振った。本当ならライム先輩もここで降りるのだが、アーロンを男爵家の寮へ送る為、そのまま馬車は南門へ向かう。
「お手数お掛けして申し訳ありません」
「気にしないで。暗くなってから君を一人で歩かせる方が不安だ」
「でも、先輩は僕を送った後余分に歩く事になるでしょう?」
南門からアーロンの寮迄は徒歩十五分程だが、そこからライム先輩の伯爵家の寮迄戻るには三十分位掛かる。
「ははは、食後の良い運動だよ。今日の夕食は量が多かったからね」
とライム先輩は茶目っ気たっぷりに片目を瞑って見せた。中迄馬車で入って行けたら楽なのだが、それはいけない決まりになっている。直ぐに南門へ着いたので、二人は馬車から降りた。ライム先輩は御者と護衛に労りの言葉を掛けている。アーロンの本はライム先輩の使用人であるマーリーが持ってくれている。自分で持っても平気なのだが。マーリーはその他にも荷物らしき箱を持っているのでアーロンは申し訳なく思ってしまう。
二人で並んで歩き出す。その後ろを荷物を持ったマーリーがついて来る。
「今日は楽しかったかい?」
「はい、とても」
「次は二人で行こう」
「是非」
南門からの道は図書館の前を通って行く事になる。子爵家の上級生達に追い掛けられた因縁の場所だ。辺りはすっかり暗くなっているが、月は出ているし街灯もあるし、何より隣にはライム先輩が居るしでちっとも怖くは無い。歩きながらアーロンは今日の一日を思い出した。いつもとは違う、ライム先輩を見たなあと。思わずくすりと笑ってしまう。
「どうしたのかい?」
「先輩が『目玉が飛び出る程高い』って仰ったのを思い出して。領地のお食事の事もですけど、何だか僕の思っていたのとは違う先輩を今日は知る事が出来ました」
「おやおや。それが君にとって良い印象であれば嬉しいのだが」
「勿論良い印象です!」
「そうかい? でも『目玉が飛び出る程高い』と言ったのは私の父なのだよ。あの魔道具屋は父から教えて貰ったのでね」
「そうでしたか」
「うん、その時に父から聞いた話なのだがね、嘘か本当かも定かでは無いのだが。……昔、ある国の王太子があの魔道具屋でとんでもない魔道具を依頼しようとしたのだそうだ。その時に提示された金額が目玉が飛び出る程高かったので、王太子は諦めたのだそうだ」
「とんでもない魔道具ですか? どんなのだろう」
「うん、それがね……」
とライム先輩は思わせぶりに話の間を取る。アーロンは話の続きを期待するようにライム先輩を見上げた。
「その王太子の恋人は男だったのだそうだ。けれどもそろそろ後継を望まれる年になり、婚約者の令嬢との結婚を急かされた王太子は、かの魔道具屋に行った。そして、『男を妊娠させる魔道具を作って欲しい』と依頼したのだそうだ。すると、魔道具屋は、『お主の国を寄越すなら作ってやろう』と答えたそうだ。王太子のお付きはそれを聞いて慌てたが、当人は慌てず、『吾が王になった暁にはやっても良い。だが貰ってどうする?』と魔道具屋に聞いた。すると、『隣の国に売る』と答えたので、『それは駄目だ』と諦めたそうだ。何でもその王太子と隣の国の王子はとても仲が悪かったらしい」
「自分の国ですかそれは確かに『目玉が飛び出る程高い』ですね」
「うん」
「本当にそんな魔道具作れるのでしょうか?」
「どうだろうね? 我が父が話すにしては随分と御伽じみた話だなあと思ったが、私は眉唾物だと考えているよ」
その後は、今日一日の話等をしながら歩いた。二人で話しながら歩いていると、直ぐに男爵家の寮に着いてしまった。
「今日はありがとうございました」
「うん。そうだ、君が買った本と、これはお土産なのだが、持てるかい?」
マーリーからアーロンは図鑑を受け取った。それ以外に持っていた箱も渡される。だいぶ大きめの箱だ。
「ふふふ。前が見えにくそうだね、扉は私が開けよう」
とライム先輩が男爵家の寮の扉を開けてくれた。
「早く入りなさい。また明日ね」
両手が塞がっているアーロンは名残惜しく思って先輩を見上げた。するとライム先輩の顔がアーロンに近付き、そっとおでこに唇が触れて離れて行った。えっと思った時には、美しい笑みを浮かべるライム先輩の顔が、閉じる寮の扉の向こうに消えて行く所だった。
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