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ライム先輩との冬
イアンの親切
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兄達が帰った後、アーロンは母から送られて来た寝巻きに着替えた。
部屋はすっかり元の通りに戻っている。寝巻きは紺色もあったけれど、一度着たので菫色の方を着ている。好きな色では無いけれど、もふもふした肌触りが暖かくて気持ち良い。
布団の上にうつ伏せになって頬杖を付き、枕の上に二番目の兄ジェフから戻って来たライム先輩の契約書を置いて読んでいた。膝を曲げて足をぱたんぱたんと布団に打ち付けながら冊子を捲る。ジェフからの手紙も入っていた。
ーー元気でやっているとケビンから聞いて安心している。入学式に出られなくて悪かった。王都観光も出来なくて済まない。契約書については魔道具師として雇う場合の条件についてと、ヨアヒム殿卒業後のアーロンの学院生活について以外は問題無い。変更案は別紙に纏めてある。もし自分では言い難いなら、そのままその紙を渡しなさい。また、別紙を読んでみてアーロンがこの様な変更は不要と思うなら変更はしなくても良い。だが、兄としてはアーロンの能力をライム伯爵家に下に見られている様に感じたので、変更した方が良いと思う。ーー
ジェフの書く文字はお手本の様に綺麗だ。そして普段話す時の様に文章も簡潔だ。
(僕の能力……)
別紙には、まず魔道具の事が書いてあった。
ーーアーロンが魔道具の特許を得た場合、その販売利益の六割をアーロンが四割をライム伯爵家の物とする。特許はアーロン名義で取り、販売はライム伯爵家名義で行う。万一ライム伯爵家側から愛子の契約を反故にする場合、ライム伯爵家は魔道具の販売権と利益も放棄する。アーロン側から愛子の契約を反故にする場合は、それ迄に販売契約を結んだ魔道具の利益については以後も変わらず四割をライム伯爵家に分配する。ーー
(兄上は、僕が魔道具師になれるって信じてくれてるんだ!)
アーロンは嬉しくなって、足をぱたぱたさせた。
次に、ライム先輩の卒業後について書いてあった。
ーー契約締結後、アーロンが学院を卒業する迄に発生する諸経費はライム伯爵家が用意する。御嫡男ヨアヒム殿卒業後、アーロンの警護を担う人員を付けその安全を約束する。ーー
(そっか、先輩来年卒業だもんね……)
急に不安になる。また先輩と行動する前の状態に戻ったら問題が起こるかもしれない。今は話し掛けて来ないデクスター等同じクラスの子爵家の生徒が、先輩が居ないなら共に食事をしようと誘って来たら面倒だし。
アーロンは契約書を持ち上げて天井に向け、自身もくるんと布団の上でひっくり返って仰向けになった。
(もっとちゃんと考えないと。自分の将来の事だもの)
その時、部屋の扉を叩く音がして、外から声が掛けられた。
「イアンだけど。アーロン様起きてる?」
「あ、はい! ちょっと待って」
「うん」
アーロンはぴょんと起き上がると、契約書と兄からの手紙を纏めて勉強机の引き出しにしまった。そしてそのまま出ようとして止める。
(そうだこのままの格好で扉を開けたら駄目なんだった! 上に何か羽織らなきゃ!)
家や兄の前ならだったら大丈夫だが、イアンも貴族だし、外は廊下だ他の生徒の目にも触れる。アーロンは背の高い方の箪笥を開けて中からフランネルのガウンを取り出して羽織った。前をしっかり閉じて、腰紐もきちんと結んだ。寝台に寝転がっていたので裸足だったが、そのままではいけないと、同じく母から送って来た菫色のふわふわの室内履きを履く。(これは紺色はなかった)
(よし)
「お待たせ」
と言いながら扉を開けると、目をしばしばさせたイアンが居た。イアンはまだ制服だった。今迄談話室に居たのかもしれない。
「寝巻き」
「うん」
「もう寝てた?」
「ううん。まだ起きてたよ」
イアンは頬をほんのり赤らめて下を向くと、おずおずとノートを差し出した。
「これ、午前中の講義の」
「あ! ありがとう。借りていいの?」
「うん。来週の講義に返して」
「分かった! 助かる!」
出られなかった地理と数学のノートだった。
「じゃあ。おやすみ」
「うん。おやすみなさい。また明日ね」
「うん。明日」
アーロンが手を振ると、イアンはちょっとだけ手を挙げそれに応える様にして自分の部屋へ戻って行った。
部屋はすっかり元の通りに戻っている。寝巻きは紺色もあったけれど、一度着たので菫色の方を着ている。好きな色では無いけれど、もふもふした肌触りが暖かくて気持ち良い。
布団の上にうつ伏せになって頬杖を付き、枕の上に二番目の兄ジェフから戻って来たライム先輩の契約書を置いて読んでいた。膝を曲げて足をぱたんぱたんと布団に打ち付けながら冊子を捲る。ジェフからの手紙も入っていた。
ーー元気でやっているとケビンから聞いて安心している。入学式に出られなくて悪かった。王都観光も出来なくて済まない。契約書については魔道具師として雇う場合の条件についてと、ヨアヒム殿卒業後のアーロンの学院生活について以外は問題無い。変更案は別紙に纏めてある。もし自分では言い難いなら、そのままその紙を渡しなさい。また、別紙を読んでみてアーロンがこの様な変更は不要と思うなら変更はしなくても良い。だが、兄としてはアーロンの能力をライム伯爵家に下に見られている様に感じたので、変更した方が良いと思う。ーー
ジェフの書く文字はお手本の様に綺麗だ。そして普段話す時の様に文章も簡潔だ。
(僕の能力……)
別紙には、まず魔道具の事が書いてあった。
ーーアーロンが魔道具の特許を得た場合、その販売利益の六割をアーロンが四割をライム伯爵家の物とする。特許はアーロン名義で取り、販売はライム伯爵家名義で行う。万一ライム伯爵家側から愛子の契約を反故にする場合、ライム伯爵家は魔道具の販売権と利益も放棄する。アーロン側から愛子の契約を反故にする場合は、それ迄に販売契約を結んだ魔道具の利益については以後も変わらず四割をライム伯爵家に分配する。ーー
(兄上は、僕が魔道具師になれるって信じてくれてるんだ!)
アーロンは嬉しくなって、足をぱたぱたさせた。
次に、ライム先輩の卒業後について書いてあった。
ーー契約締結後、アーロンが学院を卒業する迄に発生する諸経費はライム伯爵家が用意する。御嫡男ヨアヒム殿卒業後、アーロンの警護を担う人員を付けその安全を約束する。ーー
(そっか、先輩来年卒業だもんね……)
急に不安になる。また先輩と行動する前の状態に戻ったら問題が起こるかもしれない。今は話し掛けて来ないデクスター等同じクラスの子爵家の生徒が、先輩が居ないなら共に食事をしようと誘って来たら面倒だし。
アーロンは契約書を持ち上げて天井に向け、自身もくるんと布団の上でひっくり返って仰向けになった。
(もっとちゃんと考えないと。自分の将来の事だもの)
その時、部屋の扉を叩く音がして、外から声が掛けられた。
「イアンだけど。アーロン様起きてる?」
「あ、はい! ちょっと待って」
「うん」
アーロンはぴょんと起き上がると、契約書と兄からの手紙を纏めて勉強机の引き出しにしまった。そしてそのまま出ようとして止める。
(そうだこのままの格好で扉を開けたら駄目なんだった! 上に何か羽織らなきゃ!)
家や兄の前ならだったら大丈夫だが、イアンも貴族だし、外は廊下だ他の生徒の目にも触れる。アーロンは背の高い方の箪笥を開けて中からフランネルのガウンを取り出して羽織った。前をしっかり閉じて、腰紐もきちんと結んだ。寝台に寝転がっていたので裸足だったが、そのままではいけないと、同じく母から送って来た菫色のふわふわの室内履きを履く。(これは紺色はなかった)
(よし)
「お待たせ」
と言いながら扉を開けると、目をしばしばさせたイアンが居た。イアンはまだ制服だった。今迄談話室に居たのかもしれない。
「寝巻き」
「うん」
「もう寝てた?」
「ううん。まだ起きてたよ」
イアンは頬をほんのり赤らめて下を向くと、おずおずとノートを差し出した。
「これ、午前中の講義の」
「あ! ありがとう。借りていいの?」
「うん。来週の講義に返して」
「分かった! 助かる!」
出られなかった地理と数学のノートだった。
「じゃあ。おやすみ」
「うん。おやすみなさい。また明日ね」
「うん。明日」
アーロンが手を振ると、イアンはちょっとだけ手を挙げそれに応える様にして自分の部屋へ戻って行った。
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