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ライム先輩との冬
図書館の事とお土産
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「と、まあ、脅し過ぎましたね。ただ、私としては寮の外では常に注意を怠らないで欲しいのです」
副担任はアーロンに優しく微笑みかけると話を続けた。
「今日、アーロン君の後ろをずっと歩いて来ましたがね、やっぱり貴方は生徒の視線を集める。思わず美しいものに目がいってしまうのは仕方無いとして、嫌な感じのするものもありました」
「えっ」
「気が付いていないのなら良いのです。無理に気を留める必要はありません。こちらが気が付いていると分かると逆効果になる場合もありますからね。ただ、自分で何とか出来ると友達の協力を拒否するのは愚かです。人が進んで協力してくれるというのは貴方の武器です。誰もが助けてくれる人を得られるとは限らないんですよ、貴方は恵まれているんです。その幸運を簡単に手放してはいけません」
「は、い」
「まだ納得出来ていないようですね。ゆっくり考えて下さい。この寮にいれば貴方は安全ですから」
と副担任は、マクマを見て、リバーを見た。それに応えてマクマが頷く。
「それから図書館の件ですね」
「あ、はい」
耳の痛い事を言われて下を向いてしまいそうなアーロンだったが、そうだ、それを聞かなくちゃと思い直して、顔を上げた。
「調査の結果、鍵が掛かっていたかどうか覚えている職員はいませんでした」
「え、そうなんですね……」
何だかまた下を向いてしまいそうになる。
「これはまた学院の身内話みたいになってしまうので、余り良くないかもしれないのですが」
と苦笑いするような副担任の前置きにアーロンは首を傾げた。
「学院で働いている職員が皆、ここの卒業生だというのは分かっていますよね?」
「あ、そうですね」
「ですので、私やリバー先生位の歳の職員はジェフ先輩とケビン様を知っています。そして、その中にはお二人に心酔している者とそうで無い者が居るのです」
心酔、という言葉はアーロンにはかなり大袈裟に聞こえたが、確かに二番目の兄であるジェフは凄く頭が良いのでそういう意味で元同級生が尊敬しているというのは分かるかもと頷く。ただ三番目の兄ケビンに、心酔というのはどう考えても当て嵌まらなくて、可笑しくて笑ってしまいそうになる。
そして、そうで無い者という不穏な響きが気になる。アーロンの周りで二人を嫌っている人を見た事が無い。
「そうで無い者、ですか?」
「ええ、男爵家の生徒がこの学院で立場が弱いのは分かっていますよね? これでも良くなったんです、私達の時代はもっと酷かった。その中で目立つという事は命取りになる位でした。なのに、お二人はとても目立ちましたからねえ」
「そうなんですね」
確かにそう言われたら分かる気もする。ジェフはその頭の良さで、ケビンはあの突拍子も無い性格でさぞ目立った事だろう。
「ですので、これは私個人の意見ですが、アーロン君のお兄様に良い感情を持っていない職員が鍵を掛けたのではないか、とみています」
「成る程、分かりました」
「はい。ですから、これからも気を付けて下さいね。職員だからといって全員が信頼出来る訳では無いのだと」
「はい」
ふう、と副担任は息を吐いた。
「それにしても、アーロン君の他のお兄様達、ジェフ先輩とケビン様以外は見事な迄に目立たなくて、皆さん無事に学院を卒業されていったのに」
「あ、はははは。そうだなあ、ケビンが卒業してから間が空いてたけど、あの二人を知ってる奴等はどんな奴が来るんだろうって身構えてたからな」
と副担任の言葉にリバーが笑い声を上げる。アーロンも、それには苦笑いを返す他無い。領民の反応もそうだったから。
けれどアーロンから見たら四番目以降の兄達はそれぞれに個性が強かったので、何で家族以外の人にはそう思われるのか昔は不思議だった。今では二番目と三番目が目立ち過ぎたのだろうと思っている。
「なんか、普通? 平凡? 見た目はそっくりおんなじだけど、可も無く不可も無く、一切揉め事は起こさずにいつの間にか卒業してったからなあ。まあ愚痴を零したくなる気持ちもわからんじゃないが生徒が皆同じとは限らん」
「仰る通りです」
と副担任は頷き、アーロンを見た。
「私からの報告は以上です。アーロン君から何か質問はありますか?」
「いえ、ありません」
「でしたらこれで終わります。もし相談したい事が出来たらいつでも声を掛けて下さい。私に言いにくければリバー先生に」
「はい」
副担任は部屋の外を見た。すっかり薄暗くなり街灯には灯が点っている。
「丁度良い時間ですね。私は失礼しましょう」
「おお、ご苦労様。何か持たせてやる」
「それは嬉しいですねえ、リバー先生のお菓子は美味しいですから」
「アーロンはおかわりいるか? 俺からも話したい事があるからちょっと待て」
「あ、はい。じゃあ下さい」
「おお」
副担任は軽くアーロンとマクマへ微笑み掛けると、急足でと奥へ向かうリバーについて行った。
副担任はアーロンに優しく微笑みかけると話を続けた。
「今日、アーロン君の後ろをずっと歩いて来ましたがね、やっぱり貴方は生徒の視線を集める。思わず美しいものに目がいってしまうのは仕方無いとして、嫌な感じのするものもありました」
「えっ」
「気が付いていないのなら良いのです。無理に気を留める必要はありません。こちらが気が付いていると分かると逆効果になる場合もありますからね。ただ、自分で何とか出来ると友達の協力を拒否するのは愚かです。人が進んで協力してくれるというのは貴方の武器です。誰もが助けてくれる人を得られるとは限らないんですよ、貴方は恵まれているんです。その幸運を簡単に手放してはいけません」
「は、い」
「まだ納得出来ていないようですね。ゆっくり考えて下さい。この寮にいれば貴方は安全ですから」
と副担任は、マクマを見て、リバーを見た。それに応えてマクマが頷く。
「それから図書館の件ですね」
「あ、はい」
耳の痛い事を言われて下を向いてしまいそうなアーロンだったが、そうだ、それを聞かなくちゃと思い直して、顔を上げた。
「調査の結果、鍵が掛かっていたかどうか覚えている職員はいませんでした」
「え、そうなんですね……」
何だかまた下を向いてしまいそうになる。
「これはまた学院の身内話みたいになってしまうので、余り良くないかもしれないのですが」
と苦笑いするような副担任の前置きにアーロンは首を傾げた。
「学院で働いている職員が皆、ここの卒業生だというのは分かっていますよね?」
「あ、そうですね」
「ですので、私やリバー先生位の歳の職員はジェフ先輩とケビン様を知っています。そして、その中にはお二人に心酔している者とそうで無い者が居るのです」
心酔、という言葉はアーロンにはかなり大袈裟に聞こえたが、確かに二番目の兄であるジェフは凄く頭が良いのでそういう意味で元同級生が尊敬しているというのは分かるかもと頷く。ただ三番目の兄ケビンに、心酔というのはどう考えても当て嵌まらなくて、可笑しくて笑ってしまいそうになる。
そして、そうで無い者という不穏な響きが気になる。アーロンの周りで二人を嫌っている人を見た事が無い。
「そうで無い者、ですか?」
「ええ、男爵家の生徒がこの学院で立場が弱いのは分かっていますよね? これでも良くなったんです、私達の時代はもっと酷かった。その中で目立つという事は命取りになる位でした。なのに、お二人はとても目立ちましたからねえ」
「そうなんですね」
確かにそう言われたら分かる気もする。ジェフはその頭の良さで、ケビンはあの突拍子も無い性格でさぞ目立った事だろう。
「ですので、これは私個人の意見ですが、アーロン君のお兄様に良い感情を持っていない職員が鍵を掛けたのではないか、とみています」
「成る程、分かりました」
「はい。ですから、これからも気を付けて下さいね。職員だからといって全員が信頼出来る訳では無いのだと」
「はい」
ふう、と副担任は息を吐いた。
「それにしても、アーロン君の他のお兄様達、ジェフ先輩とケビン様以外は見事な迄に目立たなくて、皆さん無事に学院を卒業されていったのに」
「あ、はははは。そうだなあ、ケビンが卒業してから間が空いてたけど、あの二人を知ってる奴等はどんな奴が来るんだろうって身構えてたからな」
と副担任の言葉にリバーが笑い声を上げる。アーロンも、それには苦笑いを返す他無い。領民の反応もそうだったから。
けれどアーロンから見たら四番目以降の兄達はそれぞれに個性が強かったので、何で家族以外の人にはそう思われるのか昔は不思議だった。今では二番目と三番目が目立ち過ぎたのだろうと思っている。
「なんか、普通? 平凡? 見た目はそっくりおんなじだけど、可も無く不可も無く、一切揉め事は起こさずにいつの間にか卒業してったからなあ。まあ愚痴を零したくなる気持ちもわからんじゃないが生徒が皆同じとは限らん」
「仰る通りです」
と副担任は頷き、アーロンを見た。
「私からの報告は以上です。アーロン君から何か質問はありますか?」
「いえ、ありません」
「でしたらこれで終わります。もし相談したい事が出来たらいつでも声を掛けて下さい。私に言いにくければリバー先生に」
「はい」
副担任は部屋の外を見た。すっかり薄暗くなり街灯には灯が点っている。
「丁度良い時間ですね。私は失礼しましょう」
「おお、ご苦労様。何か持たせてやる」
「それは嬉しいですねえ、リバー先生のお菓子は美味しいですから」
「アーロンはおかわりいるか? 俺からも話したい事があるからちょっと待て」
「あ、はい。じゃあ下さい」
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