役立たずの女に用はないと言われて追放されましたが、その後王国は大変なことになっているようです

睡蓮

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第5話

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――それからさらに、1か月後の事――

ローレントは自分が計画していた通り、教皇と対立する形でアリエスの事を手中に収めようとした。
…しかし、その計画はことごとくうまくはいかなかった。

「な、なぜここまでうまくいかないんだ…!?こんな事今までに一度だってなかったぞ…!?」

自らを取り巻く状況は日に日に悪化していき、まさに文字通りローレントには破滅の時が近づいているように感じられた。
その最たる理由は、彼が知らず知らずのうちにアリエスの聖女としての力を引き出してしまう手助けをしてしまっていたことにあった…。

――アリエスとレンティウスの会話――

「さ、最近のローレント様の失敗の連続はすべて私の力!?」

ローレントが日に日にその勢いを落としていっているさなか、アリエスはレンティウスからある真実を告げられた。
それは、聖女の力の根幹にかかわる重要な秘密だった。

「アリエス、君の聖女としての力を引き出すには、君自身が誰かを愛して、その相手もまた君の事を深く愛した時にこそ発揮されるんだ。ほら、前に条件の話をしただろう?婚約関係にある者同士なら、通常何もしなくてもその条件は満たされるっていう」
「あぁ、あれがその事だったんですか!確かに普通、愛情関係のない婚約関係なんて珍しいですからね…」

自分の中にある聖女としての素質、それをローレントは偽りのものだと言って切り捨てたものの、そうなってしまった大きな理由は彼自身にあったのだ。
彼はきちんとアリエスの事を愛していなかったからこそ、聖女としての力の恩恵を受けることが叶わず、最後には自らの関係を悪化させてしまうこととなったのだった。
…しかしその一方で、アリエスの頭の中には別の疑問が浮かび上がる。

「…それじゃあ、今ローレント様の計画が全くうまくいっていなくって、そんな彼と対立関係にあるレンティウス様の方が優位な立場にあり続けているのって、もしかして…」
「君の力だとも。僕は何もしていないのだからね」
「そ、それはそうだとして、その力がこうして発揮されているということは、教皇様は私の事を愛してくださっていると……???」
「……!??!?」

…途端、その場で後ろを向いてその表情を見られないようにするクレンティウス。
まさかこんな形で自分の思いを悟られるとは思ってもいなかったようで、後ろ姿でもわかるほどに非常に恥ずかしそうな雰囲気を醸し出していた。

「ま、まぁそういう流れです。お分かりいただけましたかな」
「えぇ、もちろん♪」

二人はこの上ないほど温かい雰囲気に包まれ、王宮に対するそれぞれの立場を日に日に強いものとしていった。
…一方、なにが原因かもわからない敗戦を繰り返し続けているローレントと言えば…。

――ローレントとリーリアの会話――

「はぁ…。こんなことになるくらいなら、もっと違う男と結ばれるんだったわ…。まさかここまで期待外れだっただなんて…」

リーリアは一人、ぼそっとそうつぶやいた。
ある意味彼女の警戒していた通りの事が現実のものとなり、今こうしている間もアリエスの持つ聖女としての力は発揮され続けている。
…それを一方的に軽んじ、聖女の力など偽りのものにすぎないと切り捨ててしまったローレントに見る目がなかったのは、誰の目にも明らかなことだろう。
しかしそれは、彼女自身にも同じことが言える。
なぜならその事を想っているのは、この場にもう一人いるのだから…。

「…今の言葉、どういう意味だ?」
「!?!?」

独り言かに思われたその言葉を、その耳で聞く人物が一人、いた。

「…リーリア、もとはと言えば君が言い出したことじゃないか…。君はすべての責任を僕になすりつけるつもりなのかもしれないが、そうはいかないぞ?僕はアリエスの事を追い出したところで十分だと思っていたんだ。にもかかわらず、そんな彼女の事を挑発して喧嘩を売るような真似をしたのは、他でもない君の方だろう?」
「い、今更言い訳ですか!?そんなもの聞きたくもないのですけれど!!」

リーリアはここで押し負けたらすべての罪を着せられることを察したのか、ローレント相手でもひるまずに言葉を投げ返した。
…それが自分の身を守ってくれるような段階ではないことは、もうすでに明らかであるというのに…。

「リーリア、聖女としての力を見破れなかったのは君のせいだ。もう僕の隣に君は必要ない。君には今回の一件におけるすべての罪を背負って反逆罪の罰を…」
「ふざけないで!!そんなの絶対に嫌だもの!!!」
「嫌でも君にはそれだけの罪がある。…もしも僕が教皇様との対立のせいで王の立場を失うようなことになったなら、その時は絶対に君の事を道ずれにしてやるとも…」

醜い足の引っ張り合いが始まった二人の世界。
もはやそこに聖女の力など関係なく、彼ら二人は自らの行動のみによってお互いの立場をけなしあい、ひきずりあい、自滅する運命を選んだのだった…。
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