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第2話
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「あら、婚約破棄された元婚約者様じゃないですか」
侯爵様との話を終えた後、廊下を歩く私の背中から一人の女の声が聞こえてくる。
その声の主は他でもない、侯爵様が溺愛するリナリーだった。
「今どんなお気持ち??自分が侯爵夫人になるはずだったのに、気づいたら私に横取りされることになって、今どんなお気持ちですか??」
私の姿を見つけた彼女は非常にうれしそうな表情を見せながら、明るい口調でそう言葉を発する。
それは明らかに私の事を挑発するもので、婚約破棄を目的達成と思っていることのなによりの証拠だった。
「侯爵様もかわいそうでならないわ、こんな相手が今まで婚約者だったなんて。あなた知っているの?侯爵様は本当にあなたの事を愛していたのよ?それなのにあなたはその思いに答えなかった。だから侯爵様は私の事を選んだのよ?」
「……」
ここで何を言い返しても無意味な事を理解している私は、最後までリナリーの事は無視しようと思っていた。
けれど、それと同時にこうも考えた。
どうせ無意味なのなら、それは言い返しても同じなんじゃないか、と…。
「ほら、何か言ったらどう?まぁ言えないんだろうけど♪」
「じゃあ言わせてもらおうかしら」
「…?」
今までそんな言葉を発したことがない私。
だからか、リナリーは一瞬驚きの表情を浮かべて見せた。
「リナリー、あなたは最初から略奪婚を狙っていたのでしょう?私が侯爵様から婚約関係を持ち掛けられたタイミングを狙って、侯爵様の事を誘惑しにかかったのでしょう?私は他に男を作っているとか、他の貴族男性との仲を深めているとか、ありもしない噂話をでっちあげて侯爵様に告げ口して、その度に侯爵様から感謝の言葉を引き出していたのでしょう?」
「……」
「侯爵様はあなたの計画通りに動いて、私の事を婚約破棄した。あなたはうれしくてたまらなかったのでしょう?」
「……」
「でも、これだけは言わせてもらうわ。そんな形で結ばれたあなたと侯爵様の関係が、長く続くなんて私には思えない。もっと純粋で綺麗な感情同士でないと、あなたたちは結局最後には後悔することになると思う。私はね」
「クスクス…」
私の言葉がおかしく感じられたのか、リナリーは小さな声でくすくすと笑い始める。
略奪婚を成立させつつある今の彼女には、私の言葉は負け惜しみに聞こえて仕方がなかったのかもしれない。
「ねぇミリア、あなたはもう捨てられたのでしょう?そんなあなたが何を言ったところで全部負け惜しみでしょう?見苦しいだけよ?」
「負け惜しみ…?」
「だってそうでしょう?侯爵様との婚約関係を失ってしまうなんて、私なら耐えられないもの。それをそんな涼しい顔をうかべているのは、ただただ強がっているからでしょう?それがどこまで続くのかは見ものだけれど、結局負け惜しみであることに変わりはないのよ?」
完全に勝ち誇ったような表情を浮かべているリナリー。
もう自分たちはこれから先の幸せを確約されているとでも言いたげな雰囲気を発しているけれど、そんな強引な形で結ばれた二人の関係が果たしてどこまで続くのか、私には本当に疑問に思えて仕方がなかった。
「侯爵様はあなたの事を溺愛されていて、あなたもその事を分かっているのでしょう?だからあることない事侯爵様に告げ口して、それを全部信じさせたのでしょう?それはあなたにとっては都合のいい事だったのでしょうけど、もしもこれから先それが通用しなくなったら、その時あなたは…」
「あら、ご心配どうも。でも大丈夫よ?私に限って絶対そんな事にはならないから。侯爵様は一生私の事を愛してくれるでしょうし、私もそれにこたえるだけだもの。そして最後に笑うのはあなたでなく、私。そうに決まっているでしょう?」
「わ、私はそういう話をしているんじゃないのだけれど…」
もうすっかり有頂天になってしまっているのか、私の言葉を聞き入れようともしないリナリー。
この状態の彼女には、何を言っても無駄でしかないのかもしれない…。
「ねぇミリア、あえて言ってあげるけれど今のあなたの姿は哀れでしかないわよ?婚約破棄をされた責任は自分にあるのに、それをあたかも私のせいであるかのように言いがかりをつけてきて…、そして最後には、私たち二人は絶対にうまく行かないなんて捨て台詞…。自分で言っていて可哀そうだとは思わないのかしら?」
「……」
不敵な笑みを浮かべつつ、あえて私の事を挑発するような雰囲気でそう言葉を発するリナリー。
侯爵様はこんな彼女の一体どこに愛情を感じているのかさっぱり分からないけれど、それでも今の侯爵様にはこの上なく理想的な女性に映っているのでしょう。
…その方こそ、なんだか私には哀れに見えてならないのだけれど…。
侯爵様との話を終えた後、廊下を歩く私の背中から一人の女の声が聞こえてくる。
その声の主は他でもない、侯爵様が溺愛するリナリーだった。
「今どんなお気持ち??自分が侯爵夫人になるはずだったのに、気づいたら私に横取りされることになって、今どんなお気持ちですか??」
私の姿を見つけた彼女は非常にうれしそうな表情を見せながら、明るい口調でそう言葉を発する。
それは明らかに私の事を挑発するもので、婚約破棄を目的達成と思っていることのなによりの証拠だった。
「侯爵様もかわいそうでならないわ、こんな相手が今まで婚約者だったなんて。あなた知っているの?侯爵様は本当にあなたの事を愛していたのよ?それなのにあなたはその思いに答えなかった。だから侯爵様は私の事を選んだのよ?」
「……」
ここで何を言い返しても無意味な事を理解している私は、最後までリナリーの事は無視しようと思っていた。
けれど、それと同時にこうも考えた。
どうせ無意味なのなら、それは言い返しても同じなんじゃないか、と…。
「ほら、何か言ったらどう?まぁ言えないんだろうけど♪」
「じゃあ言わせてもらおうかしら」
「…?」
今までそんな言葉を発したことがない私。
だからか、リナリーは一瞬驚きの表情を浮かべて見せた。
「リナリー、あなたは最初から略奪婚を狙っていたのでしょう?私が侯爵様から婚約関係を持ち掛けられたタイミングを狙って、侯爵様の事を誘惑しにかかったのでしょう?私は他に男を作っているとか、他の貴族男性との仲を深めているとか、ありもしない噂話をでっちあげて侯爵様に告げ口して、その度に侯爵様から感謝の言葉を引き出していたのでしょう?」
「……」
「侯爵様はあなたの計画通りに動いて、私の事を婚約破棄した。あなたはうれしくてたまらなかったのでしょう?」
「……」
「でも、これだけは言わせてもらうわ。そんな形で結ばれたあなたと侯爵様の関係が、長く続くなんて私には思えない。もっと純粋で綺麗な感情同士でないと、あなたたちは結局最後には後悔することになると思う。私はね」
「クスクス…」
私の言葉がおかしく感じられたのか、リナリーは小さな声でくすくすと笑い始める。
略奪婚を成立させつつある今の彼女には、私の言葉は負け惜しみに聞こえて仕方がなかったのかもしれない。
「ねぇミリア、あなたはもう捨てられたのでしょう?そんなあなたが何を言ったところで全部負け惜しみでしょう?見苦しいだけよ?」
「負け惜しみ…?」
「だってそうでしょう?侯爵様との婚約関係を失ってしまうなんて、私なら耐えられないもの。それをそんな涼しい顔をうかべているのは、ただただ強がっているからでしょう?それがどこまで続くのかは見ものだけれど、結局負け惜しみであることに変わりはないのよ?」
完全に勝ち誇ったような表情を浮かべているリナリー。
もう自分たちはこれから先の幸せを確約されているとでも言いたげな雰囲気を発しているけれど、そんな強引な形で結ばれた二人の関係が果たしてどこまで続くのか、私には本当に疑問に思えて仕方がなかった。
「侯爵様はあなたの事を溺愛されていて、あなたもその事を分かっているのでしょう?だからあることない事侯爵様に告げ口して、それを全部信じさせたのでしょう?それはあなたにとっては都合のいい事だったのでしょうけど、もしもこれから先それが通用しなくなったら、その時あなたは…」
「あら、ご心配どうも。でも大丈夫よ?私に限って絶対そんな事にはならないから。侯爵様は一生私の事を愛してくれるでしょうし、私もそれにこたえるだけだもの。そして最後に笑うのはあなたでなく、私。そうに決まっているでしょう?」
「わ、私はそういう話をしているんじゃないのだけれど…」
もうすっかり有頂天になってしまっているのか、私の言葉を聞き入れようともしないリナリー。
この状態の彼女には、何を言っても無駄でしかないのかもしれない…。
「ねぇミリア、あえて言ってあげるけれど今のあなたの姿は哀れでしかないわよ?婚約破棄をされた責任は自分にあるのに、それをあたかも私のせいであるかのように言いがかりをつけてきて…、そして最後には、私たち二人は絶対にうまく行かないなんて捨て台詞…。自分で言っていて可哀そうだとは思わないのかしら?」
「……」
不敵な笑みを浮かべつつ、あえて私の事を挑発するような雰囲気でそう言葉を発するリナリー。
侯爵様はこんな彼女の一体どこに愛情を感じているのかさっぱり分からないけれど、それでも今の侯爵様にはこの上なく理想的な女性に映っているのでしょう。
…その方こそ、なんだか私には哀れに見えてならないのだけれど…。
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