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第6 全ての始まり 5
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「後でこの事を使用人へ伝えておこう」
あれ?と思いながら、私は思わず首をかしげてしまった。リオネル様が今のやり取りに違和感を感じなかったことが不思議になる。
聡明だと市井では言われていた。
実際にあのお茶会で言葉を交わした時はその豊富な知識と頭の回転の良さに、驚きながらも楽しかった。
だから絶対に気付かれたと思っていたのに。
「どうかしたのか?」
「いえ、何でもございません」
穏やかにそう言って笑うリオネル様へ私は思わず曖昧な笑顔を向けていた。気付かれずに良かったと安心すればよいだけなのに、嘘を吐いている負い目からも何だかとても疲れてしまう。
「大丈夫か。初めての場所で疲れているのかもしれないな。さあ部屋を案内しておこう」
顔に出したつもりはなかったけど、気付かれてしまっていたようだった。
抜けているのか、いないのか、リオネル様がよく分からなくなってくる。とにかく正体を見破られるわけにはいかないのだから。私はもう一度気持ちを引き締めた。
たわいもないことを話しながら歩いて行く通路は緊張しながらもとても楽しかった。我が家よりも格段に大きなお屋敷なのだ。通路だってすごく長い。それでも好きな人と歩くそんな時間はあっという間に過ぎてしまう。
ここだ、と告げられた扉の前で私は少しだけ落ち込んだ。夢のような楽しい時間が終わって現実に引き戻されてしまったのだから仕方がない。
それにしても、私の実家では使用人へは屋根裏部屋をあてがっていたけれど、辺境伯家となるとこんな立派な場所に使用人の部屋もあてがっているのか、と驚いてしまう。
それから実家では使用人は相部屋だった。ただし私だけは屋根裏部屋の1番端っこで1人部屋だった。それだって優遇してもらえてのことじゃない。だってそこは夏は1番暑くて、冬は1番寒いような部屋なのだから。
私がエレンと一卵性の双子だとちゃんと知っている人は使用人の中にも少なかった。だけど不自然なぐらいに似通って、それでも家族どころか親族としても扱われていないのだ。
それなのに時々名指しで呼び出され、姿を消す私をお父様がよそで作った愛人の子どもだと思っている者もいるようだった。
使用人達もそんな私の存在をどう扱って良いのか分からなかったのだと思う。腫れもののように私に接する実家の使用人達とは正直なところ仲良くやれているとは言い難かった。
リオネル様のところも相部屋かもしれない。奉公に来ている1年間だけとはいえ、もしかしたら仲良くなれるかもしれないのだから、できるだけ気の合うような人が一緒だと嬉しい。
何だかものすごくドキドキしてきて扉を開けるのが少し怖かった。だけどそんな私におかまいなく。
「じゃあ、このあと外商を呼ぶからそれまで少し休んでいると良い」
そう言ってリオネル様が扉を開いてしまう。あっ、と思いながらも促された私は中へ1歩踏み込んだ。
だけど案内された部屋のあまりの状態に、私はそれ以上は中に入ることもできないまま何度も目を瞬かせていた。
あれ?と思いながら、私は思わず首をかしげてしまった。リオネル様が今のやり取りに違和感を感じなかったことが不思議になる。
聡明だと市井では言われていた。
実際にあのお茶会で言葉を交わした時はその豊富な知識と頭の回転の良さに、驚きながらも楽しかった。
だから絶対に気付かれたと思っていたのに。
「どうかしたのか?」
「いえ、何でもございません」
穏やかにそう言って笑うリオネル様へ私は思わず曖昧な笑顔を向けていた。気付かれずに良かったと安心すればよいだけなのに、嘘を吐いている負い目からも何だかとても疲れてしまう。
「大丈夫か。初めての場所で疲れているのかもしれないな。さあ部屋を案内しておこう」
顔に出したつもりはなかったけど、気付かれてしまっていたようだった。
抜けているのか、いないのか、リオネル様がよく分からなくなってくる。とにかく正体を見破られるわけにはいかないのだから。私はもう一度気持ちを引き締めた。
たわいもないことを話しながら歩いて行く通路は緊張しながらもとても楽しかった。我が家よりも格段に大きなお屋敷なのだ。通路だってすごく長い。それでも好きな人と歩くそんな時間はあっという間に過ぎてしまう。
ここだ、と告げられた扉の前で私は少しだけ落ち込んだ。夢のような楽しい時間が終わって現実に引き戻されてしまったのだから仕方がない。
それにしても、私の実家では使用人へは屋根裏部屋をあてがっていたけれど、辺境伯家となるとこんな立派な場所に使用人の部屋もあてがっているのか、と驚いてしまう。
それから実家では使用人は相部屋だった。ただし私だけは屋根裏部屋の1番端っこで1人部屋だった。それだって優遇してもらえてのことじゃない。だってそこは夏は1番暑くて、冬は1番寒いような部屋なのだから。
私がエレンと一卵性の双子だとちゃんと知っている人は使用人の中にも少なかった。だけど不自然なぐらいに似通って、それでも家族どころか親族としても扱われていないのだ。
それなのに時々名指しで呼び出され、姿を消す私をお父様がよそで作った愛人の子どもだと思っている者もいるようだった。
使用人達もそんな私の存在をどう扱って良いのか分からなかったのだと思う。腫れもののように私に接する実家の使用人達とは正直なところ仲良くやれているとは言い難かった。
リオネル様のところも相部屋かもしれない。奉公に来ている1年間だけとはいえ、もしかしたら仲良くなれるかもしれないのだから、できるだけ気の合うような人が一緒だと嬉しい。
何だかものすごくドキドキしてきて扉を開けるのが少し怖かった。だけどそんな私におかまいなく。
「じゃあ、このあと外商を呼ぶからそれまで少し休んでいると良い」
そう言ってリオネル様が扉を開いてしまう。あっ、と思いながらも促された私は中へ1歩踏み込んだ。
だけど案内された部屋のあまりの状態に、私はそれ以上は中に入ることもできないまま何度も目を瞬かせていた。
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