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第36 ただ、貴女を守りたい 2
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「いっそうのこと、ずっとレナを手元に置くことができれば良いのですが」
それさえできれば、こんな風にまた見失ってしまう不安に苛まれずに済むはずだった。だけどそれが難しいことは分かっているのだ。
「正当な理由がなければ、いくら事故を原因としていても実家への帰省を防ぐことはできませんわ」
そうなのだ。親が持つ子への権利を一方的に阻害すれば、非人道的な扱いをしていると見なされかねない。そうなれば厄介なのだ。特にこのあとの計画を思えば、少しでもホコリは立たない方が良い。
「でも確かにこの状況がもどかしすぎて、いっそうのこと私達の方でレナの存在を公表してしまいたいぐらいですわ」
「しかしそうなれば、ブランシャール卿がそのあと良いように処理をしてしまう可能性が高いと思います」
もしエレナの存在を世間に発表したとしても、人頭税を2人分しっかりと払って、一見すると法を遵守しているように見えるブランシャール卿から、親の権利を奪うことはできないだろう。
そんな中、ブランシャール卿は世間から再びエレナの存在を隠すはずだ。自分がブランシャール卿の立場なら、存在に目を付けたカナトス家の目に2度とつかないような場所へ幽閉する。
それも今度は合法的に婚姻という方法や修道院へ入れてしまうような方法でだ。そうなればもう手出しはできなくなる。
だからこそどんなに回りくどくて、不安が絶えない状況でもこうやって1つずつ進んでいくしかない事態だった。
母が重たい溜息を吐いた。
「エレン嬢が見つかる様子はありませんの?」
「いまはまだ…。ただ本日レナを呼び出して、母上が婚姻をほのめかしたとなれば、そろそろ動き出すかと思います」
カナトス辺境伯家との婚姻となればブランシャール卿は絶対にエレナとエレン嬢を入れ替えようとするはずなのだ。
だからこそブランシャール男爵家が繋がりを持つ貴族が集まったあのレヴァスト子爵家の舞踏会で、俺との噂が立つように振る舞ったつもりだった。
だけど事前に婚姻への確信を持たせてしまえば、こちらがエレン嬢の居場所を掴めない内に手元に引き戻したエレン嬢と、帰省させたエレナを入れ替えてしまいかねない。
だからこそブランシャール卿に見張りを付けている状況下で、エレン嬢にコンタクトを取るように仕向けたかったのだ。
「敵を欺くにはまず味方から、とは言ってもレナの様子を見ていると苦しいですわ……」
「……もしも、ブランシャール卿へこちらが気が付いていることが伝わってしまえば、全てがダメになってしまいます……そうなれば、もう2度と彼女を守れない……」
さっきのエレナの顔色を思い出す。
今すぐにでも抱き締めて全ての不安を取り除きたかった。それなのにまだ追い詰めるようなマネしかできていない自分が情けなくて悔しくなる。
強く噛み締めた唇から、少しだけ血の味が広がった。
この後、顔を見に行ったのなら、部屋の扉を開けてくれるだろうか。今の自分でも何か支えることができるだろうか。
そんな事を考えている中だった。
慌ただしいようなノックと一緒にクラウスの声が聞こえてくる。
「どうした?」
入室を許可すると同時に入ってきたクラウスは、なぜか興奮しているようだった。エレナのことでいっぱいになっていた俺はそんなクラウスへ眉をひそめて見せた。
「ブランシャール卿が動き出したぞ!」
だがクラウスの発したその一言は、いま抱えていた全ての感情を忘れさせるには十分だったのだ。
「ようやくだ」
これでようやく事態が変わる。俺の心臓は跳ね上がっていた。
それさえできれば、こんな風にまた見失ってしまう不安に苛まれずに済むはずだった。だけどそれが難しいことは分かっているのだ。
「正当な理由がなければ、いくら事故を原因としていても実家への帰省を防ぐことはできませんわ」
そうなのだ。親が持つ子への権利を一方的に阻害すれば、非人道的な扱いをしていると見なされかねない。そうなれば厄介なのだ。特にこのあとの計画を思えば、少しでもホコリは立たない方が良い。
「でも確かにこの状況がもどかしすぎて、いっそうのこと私達の方でレナの存在を公表してしまいたいぐらいですわ」
「しかしそうなれば、ブランシャール卿がそのあと良いように処理をしてしまう可能性が高いと思います」
もしエレナの存在を世間に発表したとしても、人頭税を2人分しっかりと払って、一見すると法を遵守しているように見えるブランシャール卿から、親の権利を奪うことはできないだろう。
そんな中、ブランシャール卿は世間から再びエレナの存在を隠すはずだ。自分がブランシャール卿の立場なら、存在に目を付けたカナトス家の目に2度とつかないような場所へ幽閉する。
それも今度は合法的に婚姻という方法や修道院へ入れてしまうような方法でだ。そうなればもう手出しはできなくなる。
だからこそどんなに回りくどくて、不安が絶えない状況でもこうやって1つずつ進んでいくしかない事態だった。
母が重たい溜息を吐いた。
「エレン嬢が見つかる様子はありませんの?」
「いまはまだ…。ただ本日レナを呼び出して、母上が婚姻をほのめかしたとなれば、そろそろ動き出すかと思います」
カナトス辺境伯家との婚姻となればブランシャール卿は絶対にエレナとエレン嬢を入れ替えようとするはずなのだ。
だからこそブランシャール男爵家が繋がりを持つ貴族が集まったあのレヴァスト子爵家の舞踏会で、俺との噂が立つように振る舞ったつもりだった。
だけど事前に婚姻への確信を持たせてしまえば、こちらがエレン嬢の居場所を掴めない内に手元に引き戻したエレン嬢と、帰省させたエレナを入れ替えてしまいかねない。
だからこそブランシャール卿に見張りを付けている状況下で、エレン嬢にコンタクトを取るように仕向けたかったのだ。
「敵を欺くにはまず味方から、とは言ってもレナの様子を見ていると苦しいですわ……」
「……もしも、ブランシャール卿へこちらが気が付いていることが伝わってしまえば、全てがダメになってしまいます……そうなれば、もう2度と彼女を守れない……」
さっきのエレナの顔色を思い出す。
今すぐにでも抱き締めて全ての不安を取り除きたかった。それなのにまだ追い詰めるようなマネしかできていない自分が情けなくて悔しくなる。
強く噛み締めた唇から、少しだけ血の味が広がった。
この後、顔を見に行ったのなら、部屋の扉を開けてくれるだろうか。今の自分でも何か支えることができるだろうか。
そんな事を考えている中だった。
慌ただしいようなノックと一緒にクラウスの声が聞こえてくる。
「どうした?」
入室を許可すると同時に入ってきたクラウスは、なぜか興奮しているようだった。エレナのことでいっぱいになっていた俺はそんなクラウスへ眉をひそめて見せた。
「ブランシャール卿が動き出したぞ!」
だがクラウスの発したその一言は、いま抱えていた全ての感情を忘れさせるには十分だったのだ。
「ようやくだ」
これでようやく事態が変わる。俺の心臓は跳ね上がっていた。
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