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第55 加速する終わり 1
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「さて、私たちもこちらの話をするとしよう」
先日交わしたばかりの書類だった。呆然としたままのブランシャール卿の前へ広げてみせれば、さすがにすぐ意図が伝わったのだろう。もともと青白かった顔色がますます悪くなっていた。
王都への進出をもともと望んでいたブランシャール卿へ撒き餌のようにチラつかせた書類は大きく2つだった。
1つはエレン=ブランシャールとの婚姻をもとに、カナトス辺境伯家がブランシャール男爵家の後ろ盾となること。
2つめは王都への販路拡大に伴った収益の3分の1をエレン=ブランシャールへの収益とすることで、カナトス家が資金の援助を行うこと。
たったそれだけの内容だった。だけど、この分かりやすい書類だからこそ、ハッキリとこの書類が役に立たないことをブランシャール卿もすぐに気が付いたようだった。
「死人を巻き込んだ書面なんて、何の効力も発揮しない」
思わずククッと低い笑いが漏れてしまう。いざとなればこうやって冷酷に切り捨てたり、陥れることだって躊躇わずにできてしまう。そんな自分の一面に、自分のことながら少し呆れてしまっていた。
「まさか、我が家を陥れたのですか? 善意の顔でこのように近付いて! 辺境伯家の令息ともあろう方がとんだ詐欺師だ!」
エレナは世間一般の俺への評価を、きっと信じているだろう。そんな彼女にこんな姿を見せたいとは思わない。
だからといって、世間が求めて認めるような品行方正な生き方をしていこうとも思わなかった。
「だから何だと言うのだ? 商人の世界では、騙された者が悪いのではないのか?」
「そんな方法であの娘を守るとでも言うのか。こんな薄汚れた方法で! 偽善者め!」
「偽善者? 大いに結構だ。戦場では清く正しくでは守れないモノも存在する。守ると決めたモノがあれば、手を汚すのも厭わない。それが私の守り方なだけだ」
自分たちのしてきたことは棚に上げて大声で非難する姿には嫌悪感が湧いてくる。
「だが、そもそも私は貴方達へ最後のチャンスも与えたはずだ。王太后様が質問されていただろう。『娘は1人なのか』とな。あの時にエレナの存在をお前達が認めてさえいれば、書類の不備ということで訂正してやろうと思っていたんだがな」
とは言っても、ブランシャール卿が認めるとは少しも思ってはいなかったのだから。これこそ偽善的な言葉だった。
あれだけ好きな女性を蔑ろにされてきたのだ。いつ本当に失うのか分からなかった恐怖も、守れずに悔しかった日々の苦しみも忘れてはいない。
「まぁ、さっき貴方達がそう言ったからこそ、私も心置きなくこうやって対処ができる状態なのだから、感謝の1つぐらいはしてやろう」
最後の最後までエレナへ与えた絶望に、相応しいだけの末路を与えてやれる。その口実を貰えたと、思うことに俺はしたのだ。
先日交わしたばかりの書類だった。呆然としたままのブランシャール卿の前へ広げてみせれば、さすがにすぐ意図が伝わったのだろう。もともと青白かった顔色がますます悪くなっていた。
王都への進出をもともと望んでいたブランシャール卿へ撒き餌のようにチラつかせた書類は大きく2つだった。
1つはエレン=ブランシャールとの婚姻をもとに、カナトス辺境伯家がブランシャール男爵家の後ろ盾となること。
2つめは王都への販路拡大に伴った収益の3分の1をエレン=ブランシャールへの収益とすることで、カナトス家が資金の援助を行うこと。
たったそれだけの内容だった。だけど、この分かりやすい書類だからこそ、ハッキリとこの書類が役に立たないことをブランシャール卿もすぐに気が付いたようだった。
「死人を巻き込んだ書面なんて、何の効力も発揮しない」
思わずククッと低い笑いが漏れてしまう。いざとなればこうやって冷酷に切り捨てたり、陥れることだって躊躇わずにできてしまう。そんな自分の一面に、自分のことながら少し呆れてしまっていた。
「まさか、我が家を陥れたのですか? 善意の顔でこのように近付いて! 辺境伯家の令息ともあろう方がとんだ詐欺師だ!」
エレナは世間一般の俺への評価を、きっと信じているだろう。そんな彼女にこんな姿を見せたいとは思わない。
だからといって、世間が求めて認めるような品行方正な生き方をしていこうとも思わなかった。
「だから何だと言うのだ? 商人の世界では、騙された者が悪いのではないのか?」
「そんな方法であの娘を守るとでも言うのか。こんな薄汚れた方法で! 偽善者め!」
「偽善者? 大いに結構だ。戦場では清く正しくでは守れないモノも存在する。守ると決めたモノがあれば、手を汚すのも厭わない。それが私の守り方なだけだ」
自分たちのしてきたことは棚に上げて大声で非難する姿には嫌悪感が湧いてくる。
「だが、そもそも私は貴方達へ最後のチャンスも与えたはずだ。王太后様が質問されていただろう。『娘は1人なのか』とな。あの時にエレナの存在をお前達が認めてさえいれば、書類の不備ということで訂正してやろうと思っていたんだがな」
とは言っても、ブランシャール卿が認めるとは少しも思ってはいなかったのだから。これこそ偽善的な言葉だった。
あれだけ好きな女性を蔑ろにされてきたのだ。いつ本当に失うのか分からなかった恐怖も、守れずに悔しかった日々の苦しみも忘れてはいない。
「まぁ、さっき貴方達がそう言ったからこそ、私も心置きなくこうやって対処ができる状態なのだから、感謝の1つぐらいはしてやろう」
最後の最後までエレナへ与えた絶望に、相応しいだけの末路を与えてやれる。その口実を貰えたと、思うことに俺はしたのだ。
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