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第56 加速する終わり 2
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「さて、ブランシャール卿はすでにテナント公爵から屋敷を1つ買い付けて、仕入れも請け負ってしまっていたと思うのだが、その資金の調達や取引の後ろ盾には心当たりはあるのだろうか?」
ありはしないと知っている。あればとうの昔に王都への進出はできているはずだ。
また仮にあったとしても、全力で潰しにいくのだから結果としては同じだった。
「……」
何も言葉を返せないブランシャール卿へ俺はもう1枚の書類をスッと差し出してみせる。署名欄にはまだ記入がされていない、真新しい契約書だった。
「ブランシャール家が保有している商会の売買……」
「あぁ、資金の調達はどうせムリだろう。そのうえテナント公爵家へ仕入れも滞れば賠償問題やら、下手をすれば公爵家への詐欺罪としても問われるはずだ」
「そ、そうなれば私を紹介した貴方にも傷が付くはずだ」
「いや、我が家はその他の商会やギルドの繋がりは持っている。そこから問題なく宛がえばいい」
「だけどブランシャール卿、貴方はこの状況からは逃れきれない。どのみち最後は手放すしかないのだから、買い上げてやる今の内に売ってしまった方が良いとは思わないか」
自分でもよくここまでと思うぐらいに、冷たい声が吐き出される。怒りが深いと心は驚くぐらいに冷静になるのだと、俺は今回のことで始めて知った。
「買い上げに応じるならば、ついでにこれも付けてやろう」
「…これは……」
「エレン嬢への嘆願書だ。エレナは私の婚約者だからな。未来のカナトス辺境伯夫人に成りすまして、エレナの殺害を企てた、となれば罪はかなり重くなるだろう」
自分が本物だと主張しながらエレナに対して『処分するならその偽物を処分して!』と主張する姿は、王太后様や兵士達にさえ確認されている。
そのまま行けば死罪が考えられる状態だった。その状況にブランシャール男爵夫人が声を上げて泣き始める。
「貴方達が素直に応じて商会から手を引き、カナトス領を立ち去って、もう2度とエレナへ関わることがないならば、死罪を免れて流刑で済むようにその嘆願書を出してやる」
「あなたお願いです! エレンを助けてやって下さい! このままではあの子が死んでしまいます」
その姿は母が子を思う姿そのものだった。
「今さらエレンが本物だと、蒸し返したところでついさっき人頭帳から1人抹消してしまった状態だろう。貴方達はすでに王室統治法の違反を犯してしまった状況だ」
エレンの名前を呼びながら泣き崩れる男爵夫人の姿と、その身体を支えるブランシャール卿の姿に苦いものを感じていた。
「下手をすれば貴方達だって死罪になる。エレンの件についても、もう貴方達ではどうしようもない」
そう言ってペンを差し出せば、ブランシャール卿が震える手でその書類に署名をした。
自分達の死罪を逃れたい気持ちもあっただろう。だけどエレンを思って泣く姿と、その身体を支える姿はそれだけではないと伝えてくる。
「……なぜ、そうやって子を思う気持ちがあったのなら、家族を思う気持ちがあったのなら、その愛情をエレナへは向けてやらなかったのだ」
エレナだけは全てを諦めて生きていた。存在を認めてもらえないまま、最後は死さえ望まれたような状態だった。
なぜ彼女だけがそんな扱いだったのか、俺には理解ができなかった。
「忌み子だからですわ! ほら、こうやって我が家を破滅に導いたではありませんか! そんな忌まわしいモノをどうやって愛せと言うのです!」
目を釣り上げて叫ぶ男爵夫人に哀れみや苛立ちや、悲しみなど色々な感情が混じった思いが湧き上がる。
「そうではない。双子が破滅を招くわけではない。破滅を招いたのはお前達自身だ。本当に忌まわしいモノは、お前達の心に巣くっていたモノだ」
きっと伝わりはしないだろう。
それでも俺は言わずにはいられなかった。
ありはしないと知っている。あればとうの昔に王都への進出はできているはずだ。
また仮にあったとしても、全力で潰しにいくのだから結果としては同じだった。
「……」
何も言葉を返せないブランシャール卿へ俺はもう1枚の書類をスッと差し出してみせる。署名欄にはまだ記入がされていない、真新しい契約書だった。
「ブランシャール家が保有している商会の売買……」
「あぁ、資金の調達はどうせムリだろう。そのうえテナント公爵家へ仕入れも滞れば賠償問題やら、下手をすれば公爵家への詐欺罪としても問われるはずだ」
「そ、そうなれば私を紹介した貴方にも傷が付くはずだ」
「いや、我が家はその他の商会やギルドの繋がりは持っている。そこから問題なく宛がえばいい」
「だけどブランシャール卿、貴方はこの状況からは逃れきれない。どのみち最後は手放すしかないのだから、買い上げてやる今の内に売ってしまった方が良いとは思わないか」
自分でもよくここまでと思うぐらいに、冷たい声が吐き出される。怒りが深いと心は驚くぐらいに冷静になるのだと、俺は今回のことで始めて知った。
「買い上げに応じるならば、ついでにこれも付けてやろう」
「…これは……」
「エレン嬢への嘆願書だ。エレナは私の婚約者だからな。未来のカナトス辺境伯夫人に成りすまして、エレナの殺害を企てた、となれば罪はかなり重くなるだろう」
自分が本物だと主張しながらエレナに対して『処分するならその偽物を処分して!』と主張する姿は、王太后様や兵士達にさえ確認されている。
そのまま行けば死罪が考えられる状態だった。その状況にブランシャール男爵夫人が声を上げて泣き始める。
「貴方達が素直に応じて商会から手を引き、カナトス領を立ち去って、もう2度とエレナへ関わることがないならば、死罪を免れて流刑で済むようにその嘆願書を出してやる」
「あなたお願いです! エレンを助けてやって下さい! このままではあの子が死んでしまいます」
その姿は母が子を思う姿そのものだった。
「今さらエレンが本物だと、蒸し返したところでついさっき人頭帳から1人抹消してしまった状態だろう。貴方達はすでに王室統治法の違反を犯してしまった状況だ」
エレンの名前を呼びながら泣き崩れる男爵夫人の姿と、その身体を支えるブランシャール卿の姿に苦いものを感じていた。
「下手をすれば貴方達だって死罪になる。エレンの件についても、もう貴方達ではどうしようもない」
そう言ってペンを差し出せば、ブランシャール卿が震える手でその書類に署名をした。
自分達の死罪を逃れたい気持ちもあっただろう。だけどエレンを思って泣く姿と、その身体を支える姿はそれだけではないと伝えてくる。
「……なぜ、そうやって子を思う気持ちがあったのなら、家族を思う気持ちがあったのなら、その愛情をエレナへは向けてやらなかったのだ」
エレナだけは全てを諦めて生きていた。存在を認めてもらえないまま、最後は死さえ望まれたような状態だった。
なぜ彼女だけがそんな扱いだったのか、俺には理解ができなかった。
「忌み子だからですわ! ほら、こうやって我が家を破滅に導いたではありませんか! そんな忌まわしいモノをどうやって愛せと言うのです!」
目を釣り上げて叫ぶ男爵夫人に哀れみや苛立ちや、悲しみなど色々な感情が混じった思いが湧き上がる。
「そうではない。双子が破滅を招くわけではない。破滅を招いたのはお前達自身だ。本当に忌まわしいモノは、お前達の心に巣くっていたモノだ」
きっと伝わりはしないだろう。
それでも俺は言わずにはいられなかった。
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