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第57 全ての終わり
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私は宛がわれた部屋に1人で休んでいた。
マエリス様や王太后様は別な御用があるらしい。でもきっと私を気遣って1人にしてくれたのだろう。
今は周りを気にする余裕が残っていなかった私には、正直なところありがたかった。
長椅子に腰掛けて、ぼんやりと今までの日々を思い出す。小さい頃から向けられる笑顔も、優しい声も全てエレンのものだった。あの輪の中にいつか入れるのではないか、と思っていた日々もあったのだ。
それを諦めてしまったのはいつだろう。気が付けば、期待することはなくなっていた。
それなのに、なぜか心の中に大きな穴が空いてしまったようだった。
コンコンコン。
聞こえてきたノックの音に私は扉へ目を向けた。あのお茶会の部屋を出て、もうそれなりに経っている。タイミングを考えても、何らかの結果が出ていてもおかしくなかった。いったいどんな決着を迎えたのだろう。
「はい、お入り下さい」
入室を促せば、やっぱりそこに居たのはリオネル様だった。
「体調はどうだ?」
立ち上がろうとした私を制して、入ってきたリオネル様が私の前に跪く。そのまま手をギュッと握りながら顔を覗き込んできた。
心配してくれていることがハッキリと伝わる優しい眼差しは、見慣れたリオネル様の姿だった。
「…どうなったのでしょうか?」
「大丈夫だ。もう全て終わった。レナは何も心配しなくていい」
そう言って微笑むリオネル様へ向かって私はそっと首を振る。リオネル様なら私へそう伝えるだろうと思っていた。だけど違うのだ。
「リオネル様、あの日に父と交わした契約書を見せては頂けないでしょうか?」
書面を交わしたと言っていた。
もう引くにも引けない状態だと言っていたリオネル様の様子は、今日の姿と重なるような姿だった。
真っ直ぐに見つめる私へリオネル様が「ふぅ…」と溜息を吐き出していく。そのままそばに丸めて止められていた紙を数枚差し出してきた。
私はそれを黙って受け取って、開いて中を確認する。
その中には、今日の日付で交わされた商会の売却に関する書面もあった。
「……呆れたか? それとも幻滅をされてしまっただろうか?」
リオネル様が眉尻を下げながら、小さな笑みを浮かべていた。ツラそうに見えるその顔にそっと私は手を伸ばして、その頬を両手で包み込んだ。
「いいえ、そんなことはありません。むしろ、申し訳ございません……」
「なぜレナが謝るんだ 」
リオネル様が驚いたように目を向けてくる。
「私と関わることがなければ、リオネル様の手が汚れることはなかったはずでございます」
「それでも、この方法を選んだのは私だ。レナを失わずにすむならば、どんな手段でもかまわないと思ったんだ。例え間違っているとしても…」
私はリオネル様に首を振ってみせた。
「確かに決して褒められた手段ではありません。もしかしたら、間違えていて、誰かがそれを責める日がくるのかもしれません。でも、リオネル様に間違いなく私は救って頂けました。だから、何も心配することはないと仰らずに、私も一緒に背負わせてください」
もし誰かにリオネル様が責められてしまう日がくるなら、私も一緒にその責任を取りたかった。
「これから人生を一緒に歩んでいこうと、リオネル様が仰ったではありませんか」
だからそんな風に表情を歪めて欲しくなくて、私は「ねっ?」と微笑んだのだ。
マエリス様や王太后様は別な御用があるらしい。でもきっと私を気遣って1人にしてくれたのだろう。
今は周りを気にする余裕が残っていなかった私には、正直なところありがたかった。
長椅子に腰掛けて、ぼんやりと今までの日々を思い出す。小さい頃から向けられる笑顔も、優しい声も全てエレンのものだった。あの輪の中にいつか入れるのではないか、と思っていた日々もあったのだ。
それを諦めてしまったのはいつだろう。気が付けば、期待することはなくなっていた。
それなのに、なぜか心の中に大きな穴が空いてしまったようだった。
コンコンコン。
聞こえてきたノックの音に私は扉へ目を向けた。あのお茶会の部屋を出て、もうそれなりに経っている。タイミングを考えても、何らかの結果が出ていてもおかしくなかった。いったいどんな決着を迎えたのだろう。
「はい、お入り下さい」
入室を促せば、やっぱりそこに居たのはリオネル様だった。
「体調はどうだ?」
立ち上がろうとした私を制して、入ってきたリオネル様が私の前に跪く。そのまま手をギュッと握りながら顔を覗き込んできた。
心配してくれていることがハッキリと伝わる優しい眼差しは、見慣れたリオネル様の姿だった。
「…どうなったのでしょうか?」
「大丈夫だ。もう全て終わった。レナは何も心配しなくていい」
そう言って微笑むリオネル様へ向かって私はそっと首を振る。リオネル様なら私へそう伝えるだろうと思っていた。だけど違うのだ。
「リオネル様、あの日に父と交わした契約書を見せては頂けないでしょうか?」
書面を交わしたと言っていた。
もう引くにも引けない状態だと言っていたリオネル様の様子は、今日の姿と重なるような姿だった。
真っ直ぐに見つめる私へリオネル様が「ふぅ…」と溜息を吐き出していく。そのままそばに丸めて止められていた紙を数枚差し出してきた。
私はそれを黙って受け取って、開いて中を確認する。
その中には、今日の日付で交わされた商会の売却に関する書面もあった。
「……呆れたか? それとも幻滅をされてしまっただろうか?」
リオネル様が眉尻を下げながら、小さな笑みを浮かべていた。ツラそうに見えるその顔にそっと私は手を伸ばして、その頬を両手で包み込んだ。
「いいえ、そんなことはありません。むしろ、申し訳ございません……」
「なぜレナが謝るんだ 」
リオネル様が驚いたように目を向けてくる。
「私と関わることがなければ、リオネル様の手が汚れることはなかったはずでございます」
「それでも、この方法を選んだのは私だ。レナを失わずにすむならば、どんな手段でもかまわないと思ったんだ。例え間違っているとしても…」
私はリオネル様に首を振ってみせた。
「確かに決して褒められた手段ではありません。もしかしたら、間違えていて、誰かがそれを責める日がくるのかもしれません。でも、リオネル様に間違いなく私は救って頂けました。だから、何も心配することはないと仰らずに、私も一緒に背負わせてください」
もし誰かにリオネル様が責められてしまう日がくるなら、私も一緒にその責任を取りたかった。
「これから人生を一緒に歩んでいこうと、リオネル様が仰ったではありませんか」
だからそんな風に表情を歪めて欲しくなくて、私は「ねっ?」と微笑んだのだ。
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