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しおりを挟む「ちょっと待って。足」
エイルの言葉で目を向けると、私の足に擦り傷が出来ていた。
足首まで血が垂れている。
少しヒリヒリするな。
手当した方が良さそうね。
「すみません。また今度、散歩しながら話していいですか?」
「...今、手当てするよ」
「そんな申し訳ないです」
私が勝手に付いて来て、転んだのだから自己責任だ。
手当くらいなら自分でできるし。
「今度がいつになるか分からないよ?それに手当てする間、話せばいいと思うんだけど?」
うっ。
私が手当てを断らないようにそういう言い方をしてるんだと分かった。
エイルの優しさが身に染みる。
手当てをしてもらうのは気恥しさと申し訳なさがあるけれど...。
「じゃあ、手当てお願いしていいですか...?」
「ああ。道具取ってくるからちょっと待ってて」
木陰で待っていると、エイルが戻ってくる。
ドレスを少し捲って、持ってきた水で傷付近を洗い流してくれる。
「エイルは傷の手当て慣れているのですね」
「まぁね。剣の稽古で怪我なんてしょっちゅうだし」
「そうなのですね!見てみたいです」
剣の稽古をする姿はかっこいいだろうなと想像する。
何かに一生懸命打ち込む姿って凄く良いと思う。
「嫌だ。...ほら、手当て終わったよ」
傷はガーゼによって、しっかりと覆われていた。
「ありがとうございます...!」
「もう付いてこないでね。少し付き合ったし、俺はもう行くから」
さっさと歩き出すエイル。
行ってしまう前に、その背に向かって大声で叫ぶ。
「また話してもいいですかー!?」
私の大声で振り返ったその表情はなんだか柔らかくて。
いいよと言っているように見えた。
少しだけごろんと寝転がる。
「いい天気...」
目を少し閉じる。
「寝ているの?」
「ディ、ディラン?」
聞いたことのある声に目を開ければ、覗き込むディランの姿があった。
「ああ、急にごめんね」
公爵家には月に一回来る約束なんじゃ。
もしかして、興味を持たれてしまったのか!?
ドレスに付いた葉を払って立つ。
「...来る時は連絡してください」
「今度からそうするよ。せっかく来たのだし、話そう」
そうだ。
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「...そうですね。私も話したいです」
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「婚約破棄をして頂きたいのです」
「それは無理だな。僕には君が必要だ」
私の地位が、でしょうが!
ゲームでプレイしてたから知っている。
権力争いの真っ最中のディランは、その地位を確固たるものにする為、私と婚約したのだ。
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