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「この場を持って私エリオス・ハーデナイトは、リリアナ・ミクロスと婚約破棄をする!」

広いパーティ会場内に響き渡る、第一王子エリオスの声。

そのエリオスにぴったりと付いているのは、ピンク色の髪をした愛らしい女性。
男爵令嬢ルーナ・ダイナスだ。

ルーナと常々浮気を繰り返していたのは知っていたけれど、割り切っていた。

元々この婚約に愛など存在しないから。
とはいえ、この大勢の前での仕打ちは何なのかしら。

「...この場で宣言した訳をお聞かせください」

「わかっているはず!お前の悪事を明らかにする為だ!」

...は?悪事とは。

「しらばっくれるな!聖女であり公爵令嬢という立場を利用して、ルーナに様々な嫌がらせをしていたと!しかも、聖女というのは偽りだというじゃないか」

ちょっと待って欲しい。
ルーナに嫌がらせ?偽りの聖女?
心当たりが全くない。

確かにルーナへの指摘や注意はした。
令嬢としての振る舞いについてだけ。
それは嫌がらせとは言わないだろう。

「証拠や証人はいるのですか?」

努めて冷静に...冷静にと自分を落ち着かせる。

「証拠は必要ない!証人がいるのだから!」

「証人とは?」

「ルーナやルーナの友人だ!」

つまり、身内ってことよね。
口裏を合わせれば私を貶めることくらい容易い。

「それだけでは納得できません」

「ルーナに嫉妬していたのだろう?素直に認めろ、リリアナ!」

話が通じない。
頭が痛くなってくる。

「してもいないことを認めることはできません。それから偽りの聖女というのはどういう意味ですか」

「ふん。地位にものを言わせて、魔力鑑定を偽っていたのだろう?」

魔力鑑定は偽ることなどできない。
行う教会は中立の立場であるから、王家でさえ介入を許されないというのに、そんなことも知らないの?

このバカ王子にいくら言って無駄だ。

「この件は後日改めてご説明します。パーティーはお開きとします!」

声を張り上げて、主催者である私がパーティーの終わりを告げる。

「ま、待て!話はまだ」

「殿下とルーナ様もお帰りください。後日国王陛下と王妃様も交えて話しましょう」

「だがっ」

「私と婚約破棄をしてルーナ様と婚約したいのでしょう?どちらにしても、国王陛下と王妃様の承認が必要なのではないでしょうか」

「それは...そうだな!」

嬉々として帰っていくエリオス。
自分が正しいと信じて疑いもしない。

私はこんな大勢の前で身に覚えの無い罪を着せられ、惨めさと苛立ちを隠せずにいた。

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