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21 君の全てを

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「アリン、可愛かったな…」

キッチンに着き、アリンが好きな紅茶を入れようとヤカンに水を入れ火をつけ、昨日からの出来事を思い返していた。
照れた顔も甘えた顔も嬉しくて泣いてる顔も全てが愛おしく、思わずニヤけてしまう。

キスも、それ以上の行為も自分が初めてで痛みと快感で顔を歪めるアリンはそれはもう綺麗で可愛くて気がつけば夢中で求めていた。

ーーなによりも大切にしたい…。

とりあえず今は腰とお尻を痛めるアリンにとびっきりの紅茶と可愛く切ったりんごを出してあげなくちゃいけない。


ーーー


コンコンコン

「アリン、入るよ?」

「フェアン…ありがと」

寝室に戻るとアリンは既に服を着替えてベッドに腰掛けていた。

「動いて大丈夫なのか?」

「これくらい大丈夫!それにいつまでも裸のままでいるのは恥ずかしいしね?」

それはそれで良かったけど…と思いつつ、風邪をひいてしまうしなと納得してアリンに紅茶とうさぎの形に切ったりんごが乗ったトレーを差し出した。

「わっ!僕の好きなミルクティーだ!フェアンありがとう!」

花が綻ぶような笑顔で紅茶を手にするアリンに見惚れてしまう。

「喜んでくれて良かった。さぁ冷めてしまう前にお茶にしよう。


ニヤけてしまうのを隠しながら、ベッド横のナイトテーブルにトレーを置き勉強机の椅子をベッドの向かいに置いて座った。
アリンの体が心配で、寝ていなくて大丈夫なのか聞いたが、座ってる方が楽と言うのでこのまま2人でティータイムを楽しんだ。

途中、話が途切れるたびにアリンが何か言いたそうだったが、どうした?と聞いても、何でもないと言われてしまうので無理には聞けなかった。

そうこうしているうちに、ミルクティーの最後の一滴を飲み干してしまいトレーを下げようと席を立つと、アリンがぎゅっと俺の腕を掴んだ。

「アリン…?」

「…フェアン。聞いて欲しいことがあるの。」

真剣な顔に緊張が伝わる。

「…わかった。もちろんどれだけでも聞くよ。」

「ありがと…。あのね、僕の両親の事なんだけど…」

アリンからの話はある程度想像していたが、それでも思っていたより衝撃だった。アリンの両親が人間に、しかも貴族に殺されていたとは。
しかも、相手が捕まるどころか、わからないという。これは差別とかそういう問題ではない!なぜこのような事態になってるのを国は放置しているのか。だんだん怒りがわいてきた。

「フェアン…怒ってる?」

「あぁ!とてもな!!」

「そ、そんな怒んないで!フェアンと同じ人間のこと悪く言ってしまったけど…」

「……は?」

「えっ、違うの…?」

「そんなわけないだろう!!」

アリンの両肩を掴みまん丸の瞳を見つめた。

「お願いだから、猫獣人だからといって自分を卑下しないでくれ。アリンのご両親に関して悪いのは完全に人間だ、そして国だ!こんなことあってはならない!」

「フェアン…」

「そもそも人間とか、獣人とかそこに差はあってはいけない。…それに君のご両親はとても素晴らしい人だったんだよ。…だって、君はこんなにいい子なんだから。」

「フェアン…うぅっ…」

泣き出してしまったアリンをそっと抱きしめた。

「アリン、言いにくいことだったろう、教えてくれてありがとう。…君が例え人間だったとしても他の獣人だったとしても好きだよ。優しくて可愛くて頑張ってる君の全てが大好きだ。」

「~っ!」

泣き声を出さないように耐えていたアリンだったが、ぽんぽんと背中を撫でるうちに、まるで幼い子供のように大きな声でわんわんと泣き続けた。
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