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第一章:元聖女と渡鴉旅団
冒険者三人
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身体ひとつだけで国を追い出されたシャルロット。
彼女はまるで心を失ってしまったかのような虚ろな表情で森の中を彷徨っていた。
何故こうなってしまったのか?
何故聖痕が消えてしまったのか?
考えても考えてもその理由が分からず、シャルロットはただただ森の中を彷徨うばかりである。
(きっと……きっと私が神に見放されるようなことをしてしまったのでしょう)
そうとしか考えられず、シャルロットは心の中で神々への謝罪の言葉を心に思い浮かべていた。
それから暫く、どれ程の時間が経ったのか分からないがシャルロットの足は止まることが無かった。
歩き過ぎて足が棒のようになり、痛みさえも感じているというのに足が止まる様子は無い。
(主よ……無意識のうちに罪を犯してしまった愚かな私に相応しい死を……)
心身共に追い詰められたシャルロットはいつしか、死に場所を求めるようになっていた。
そんな彼女の意思を感じ取ってか、彼女の背後には忍び寄るいくつもの影がゆっくりと近付いてゆくのだった。
◆
シャルロットが森を彷徨っていたその頃……全く同じ森の中にて三人の男女が会話をしながら森の中を進んでいた。
「お~い、シド~。本当にこっちで合ってんのかよ~?」
槍を手にした少年が先頭を歩く少年にそう声をかける。
すると声をかけられた少年……〝シド・ヴァイナー〟は振り返って呆れ顔で質問に答えた。
「合ってるって言ってんだろ?まったく……これで何度目だよロン」
「んな事言ってもよ~……イテッ!」
槍を持つ少年、〝ロン・カルヴァール〟がなおも言い返そうとすると弓を持つ少女、〝エルナ・エルゥ・フラウレム〟がその脇腹を小突いた。
「何すんだよ!?」
「うるさい!シドが〝そうだ〟って言った事は全てその通りだったのを忘れてんじゃないの?」
「お前だって初めの頃はシドに反抗してばっかだったじゃねーか!」
「はぁ?!それは今関係無いでしょ!昔のことを掘り返して……あんたって本当にしょうもない奴よね!」
「なんだと?!」
「なによ!」
「あ~うるせーうるせー。夫婦喧嘩は他所でやってくんねーか?」
「「夫婦じゃない(から)!」」
一見仲の悪そうな三人ではあるが、これでも基本的には仲の良い間柄である。
シドとロンはいわゆる幼馴染みで幼い頃から共に遊んでいた悪友でもあった。
エルナは上位のエルフ族の少女で二人と出会ったのは冒険者ギルドだった。
当時まだ入ったばかりのエルナに先輩冒険者であったシドが声をかけたのがきっかけであるが、ロンの言う通りエルナは初めの頃は何かとシドに反抗しまくっていた。
しかし何度も共に依頼を受けていくにつれて心を開くようになり、今では三人で行動するようになっていた。
そんな彼らがこの森にいる理由は別に変わったことでは無い。
今回彼らが受けた依頼がこの森に生息しているとされている〝三日月草〟の採取だったからである。
三日月草は主に治療薬の素材として重宝されている植物で、他にも毒消しや傷薬にも使われることからかなりの需要が高まっているものである。
しかし生息しているのが魔物も多い森の中であり、また過去に栽培しようと試みてみたのだが、未だに成功していない事から供給が追いついていない状況であった。
それ故に採取系の依頼の中でも三日月草は特に依頼料が良く、初級から中級辺りの冒険者達にとっては非常に良い金稼ぎの依頼であった。
そんな三日月草の採取へと来ていたシド達三人が歩みを進めていると、不意にシドが何かを感じとったかのようにその場に立ち止まる。
「シド?」
「しっ─────」
訝しげに声をかけるロンを静かにさせると、シドはそっと耳を澄ました。
そして暫くして何を思ったか突然その場から駆け出し始める。
「おい、シド?!」
「ちょっ、どうしたの?!」
突然のことに驚く二人を他所にシドは無言で走り続ける。
そしてある程度視界が開けた所に出た瞬間、そこには力なく横たわる少女と、それを今まさに喰らおうとする狼達の群れという光景が飛び込んできた。
「ロン!エルナ!」
「あいよ!」
「了解!」
掛け声だけで直ぐに行動に移す三人。
シドとロンは互いに剣と槍を手に狼達へと斬りかかり、エルナは弓を引いて二人とは別方向の狼達へと矢を打ち込む。
「ロン、任せるぞ!」
「おう!シドは早くその子を!」
「ロン、そこどいて!」
互いに合図を出し合い、シドは少女を抱き上げてその場から離れ、ロンはエルナの合図と共に飛び退きエルナの射線から外れる。
狼達は突然のシド達の登場に騒ぐも、直ぐに奪われた獲物を取り返そうとシドに襲いかかる。
「舐めんな!」
シドは少女を担ぐと片手で剣を振るい、襲いかかってきた狼達を横薙ぎに斬り払う。
狼達の数はかなりのものであったがシド達三人が苦も無く十匹程屠ったのを見て、残りの狼達は恐れ慄きその場から逃走して行った。
それを見届けたシド達は安堵の息を漏らしながら口を開く。
「間一髪だったな」
「あぁ……もう少し遅けりゃ、その子は今頃奴らの腹の中だったろうよ」
「考えても鳥肌が立つわ……私達と同じくらいの女の子がそんな目に会っていたかもしれないだなんて」
そうして三人は気を失っている少女─────国を追われこの森を彷徨っていたシャルロットへと注目し相談を始める。
「どうするよ?」
「どうするってもなぁ……このまま依頼を続けんのは難しいだろ」
「そうね……一旦戻りましょうか?」
「そうだな」
シドは担いでいたシャルロットを下ろすと、今度は彼女を背負ってロンとエルナの二人と共に、拠点にしている街へと戻るのであった。
偶然により救われたシャルロット─────
しかしそれは偶然ではなく、彼女に寄り添う精霊達がシド達を導いたからこその救いの手であった事を、三人はもちろん気を失っているシャルロットも知ることは無い。
しかしこれにより、不遇であったシャルロットの人生が大きく変わり幸福な日々が訪れる事を、彼女が実感することになるのはこれから先の話である。
彼女はまるで心を失ってしまったかのような虚ろな表情で森の中を彷徨っていた。
何故こうなってしまったのか?
何故聖痕が消えてしまったのか?
考えても考えてもその理由が分からず、シャルロットはただただ森の中を彷徨うばかりである。
(きっと……きっと私が神に見放されるようなことをしてしまったのでしょう)
そうとしか考えられず、シャルロットは心の中で神々への謝罪の言葉を心に思い浮かべていた。
それから暫く、どれ程の時間が経ったのか分からないがシャルロットの足は止まることが無かった。
歩き過ぎて足が棒のようになり、痛みさえも感じているというのに足が止まる様子は無い。
(主よ……無意識のうちに罪を犯してしまった愚かな私に相応しい死を……)
心身共に追い詰められたシャルロットはいつしか、死に場所を求めるようになっていた。
そんな彼女の意思を感じ取ってか、彼女の背後には忍び寄るいくつもの影がゆっくりと近付いてゆくのだった。
◆
シャルロットが森を彷徨っていたその頃……全く同じ森の中にて三人の男女が会話をしながら森の中を進んでいた。
「お~い、シド~。本当にこっちで合ってんのかよ~?」
槍を手にした少年が先頭を歩く少年にそう声をかける。
すると声をかけられた少年……〝シド・ヴァイナー〟は振り返って呆れ顔で質問に答えた。
「合ってるって言ってんだろ?まったく……これで何度目だよロン」
「んな事言ってもよ~……イテッ!」
槍を持つ少年、〝ロン・カルヴァール〟がなおも言い返そうとすると弓を持つ少女、〝エルナ・エルゥ・フラウレム〟がその脇腹を小突いた。
「何すんだよ!?」
「うるさい!シドが〝そうだ〟って言った事は全てその通りだったのを忘れてんじゃないの?」
「お前だって初めの頃はシドに反抗してばっかだったじゃねーか!」
「はぁ?!それは今関係無いでしょ!昔のことを掘り返して……あんたって本当にしょうもない奴よね!」
「なんだと?!」
「なによ!」
「あ~うるせーうるせー。夫婦喧嘩は他所でやってくんねーか?」
「「夫婦じゃない(から)!」」
一見仲の悪そうな三人ではあるが、これでも基本的には仲の良い間柄である。
シドとロンはいわゆる幼馴染みで幼い頃から共に遊んでいた悪友でもあった。
エルナは上位のエルフ族の少女で二人と出会ったのは冒険者ギルドだった。
当時まだ入ったばかりのエルナに先輩冒険者であったシドが声をかけたのがきっかけであるが、ロンの言う通りエルナは初めの頃は何かとシドに反抗しまくっていた。
しかし何度も共に依頼を受けていくにつれて心を開くようになり、今では三人で行動するようになっていた。
そんな彼らがこの森にいる理由は別に変わったことでは無い。
今回彼らが受けた依頼がこの森に生息しているとされている〝三日月草〟の採取だったからである。
三日月草は主に治療薬の素材として重宝されている植物で、他にも毒消しや傷薬にも使われることからかなりの需要が高まっているものである。
しかし生息しているのが魔物も多い森の中であり、また過去に栽培しようと試みてみたのだが、未だに成功していない事から供給が追いついていない状況であった。
それ故に採取系の依頼の中でも三日月草は特に依頼料が良く、初級から中級辺りの冒険者達にとっては非常に良い金稼ぎの依頼であった。
そんな三日月草の採取へと来ていたシド達三人が歩みを進めていると、不意にシドが何かを感じとったかのようにその場に立ち止まる。
「シド?」
「しっ─────」
訝しげに声をかけるロンを静かにさせると、シドはそっと耳を澄ました。
そして暫くして何を思ったか突然その場から駆け出し始める。
「おい、シド?!」
「ちょっ、どうしたの?!」
突然のことに驚く二人を他所にシドは無言で走り続ける。
そしてある程度視界が開けた所に出た瞬間、そこには力なく横たわる少女と、それを今まさに喰らおうとする狼達の群れという光景が飛び込んできた。
「ロン!エルナ!」
「あいよ!」
「了解!」
掛け声だけで直ぐに行動に移す三人。
シドとロンは互いに剣と槍を手に狼達へと斬りかかり、エルナは弓を引いて二人とは別方向の狼達へと矢を打ち込む。
「ロン、任せるぞ!」
「おう!シドは早くその子を!」
「ロン、そこどいて!」
互いに合図を出し合い、シドは少女を抱き上げてその場から離れ、ロンはエルナの合図と共に飛び退きエルナの射線から外れる。
狼達は突然のシド達の登場に騒ぐも、直ぐに奪われた獲物を取り返そうとシドに襲いかかる。
「舐めんな!」
シドは少女を担ぐと片手で剣を振るい、襲いかかってきた狼達を横薙ぎに斬り払う。
狼達の数はかなりのものであったがシド達三人が苦も無く十匹程屠ったのを見て、残りの狼達は恐れ慄きその場から逃走して行った。
それを見届けたシド達は安堵の息を漏らしながら口を開く。
「間一髪だったな」
「あぁ……もう少し遅けりゃ、その子は今頃奴らの腹の中だったろうよ」
「考えても鳥肌が立つわ……私達と同じくらいの女の子がそんな目に会っていたかもしれないだなんて」
そうして三人は気を失っている少女─────国を追われこの森を彷徨っていたシャルロットへと注目し相談を始める。
「どうするよ?」
「どうするってもなぁ……このまま依頼を続けんのは難しいだろ」
「そうね……一旦戻りましょうか?」
「そうだな」
シドは担いでいたシャルロットを下ろすと、今度は彼女を背負ってロンとエルナの二人と共に、拠点にしている街へと戻るのであった。
偶然により救われたシャルロット─────
しかしそれは偶然ではなく、彼女に寄り添う精霊達がシド達を導いたからこその救いの手であった事を、三人はもちろん気を失っているシャルロットも知ることは無い。
しかしこれにより、不遇であったシャルロットの人生が大きく変わり幸福な日々が訪れる事を、彼女が実感することになるのはこれから先の話である。
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