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帝国編

必要な努力と不要な労力

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 日が暮れて夜空に変わり、宿にてリアが投影したシオン嬢との戦闘映像を皆で眺めつつ・・・それぞれ感想を述べていたのです。
「あの癖強な粉薦めてきた人だー!」
(人族にしてはなかなかやるのだわ!)
「初級とはいえこの数を同時に・・・私(わたくし)でも精々風の初級9つが限界ですわね」
「・・・二重詠唱でも普通は厳しいのだけど・・・フィオナと同じレーザーブレードも使っているね」
「あれはパルスブレードというらしいのです、ユラのプラズマブレードの方が近いかもですね」
「色が違うだけじゃないんだ!」
「性質的には風なのでしょうけど、属性放出しても風では色覚的に見えませんわね」
 異世界から来たと思われるシオン嬢に魔力の性質が備わっているのは意外なのです、私の前世での世界に近いなら魔力はなさそうですが。
 パルスブレード自体はひし形のバックラーで可能にしたよう・・・ブレードを展開する直前にバックラー中心部で魔導具同様に文字が光っていたのです。
「それはそれとして、この方はどうしてフィオナに戦いを挑む事になりましたの?」
「んー、それなんですが・・・魔海での状況を知っていたらしくて、実力を確認したかったとかなんとか」
 転生者や召喚者(仮)云々は伏せつつ、当たり障りない返答をする・・・ミリーとユラがそれぞれ反応したのです。
「・・・カフェで私達に絡んできていたのも偶然じゃなかったようだね、知っていた上で近づいてきたと・・・」
「そうなると共和国にも・・・アイリさんが使った神器の力の事も気づいているかもしれませんわね」
「それに関してはアキ・クルスとシオン嬢だけと言っていたのです・・・獣人国の神器なのに共和国に知られて問題があるのです?」
「共和国は獣人国と貿易が盛んですから、帝国と王国より関係が深い国になっているんですの」
 交流の強い国同士ということで共和国から獣人国に情報は伝わりやすいとの事・・・どの世界であっても相性の良し悪しはあるようなのです。

「なんで杖も持ってないフィオナに挑んだんだろうね!」
「・・・まあ魔導師なのに杖持たずに外に出てるのもあれだけどね」
「長槍を何に使ったのかと思えば、杖で浮くのと同じように利用したみたいですわね・・・携帯性は相も変わらず・・・考慮してませんわね?」
「・・・魔力で軽くなるディオールの杖と違ってこれだと・・・鉄製の槍2本分で寧ろ重くなってるよね」
 むむむ・・・分かった上でやってはいても改めて言われるとその通りなのですが。
 何事も挑戦・・・とはいえ必要な努力と不要な労力を見誤っては駄目なのです、私にとっては必要な工程だったのです(切実)
「し、試作品なのです・・・後々ジオ以外での軽量化装備を作る予定なので」
 ユラの水上スキーは刀でのスタイリッシュな戦闘でスピード感があったのですが、私がやるとふわぁっとフロート的な動きになってしまったのです。
 運動や筋トレ等でユラや姉様に身体能力で追いつけるなら考え方も変えれるのですが、私にはちょ~っと厳しいのです。 グニグニ・・・
「ふむ、お主の記憶にある白栗子?みたいな装備でも作るのか?」
「なるほど、そういうのもあったのです・・・一部にしか伝わらなさすぎるのです」
 ホワイトグリ・・・まあいいのです、使う素材はいつも通り鉄と銅なので完成したとしても彩色はブラックカッパーになるのですが。
 ジオ制作の時からですが、時間が掛かる箇所は基本的に可動部なのです・・・イメージで動かせる反面壊れる箇所も毎回ここなのです。
「フィオナは学院の時も、魔導師というより魔導具職人のような事ばかりしてましたわね」
「術式とか刻めないんですけどね・・・ミリーならアーティファクト並の術式も刻めそうなのです」
「この数ヶ月の間にブーツで試しましたわ、大分安定して飛べるようになりましたの」
「・・・ジオのすらすたー?を再現したって言ってたね、確かに速かったよ」
「学院の時のフィオナみたいに飛べるようにはなりましたが、最近のフィオナは風すら発生させず飛んでますし・・・ジオの飛行は私(わたくし)的には違うのですわ」
 イメージだけでそれっぽくしている私と違い自力で再現しちゃったのです・・・?
 シオン嬢と交戦してからミリー達が駆けつけるまで早かったのも疑似スラスター故のよう・・・それに脚力だけで付き添えるユラも大概なのです。
「そういえばフィオナ、その手に持ってグニグニと弄ってるの何!凄く気になってたんだけど!」
「筋トレというやつかの、お主の肉体では焼け石に水のような気がするのじゃ」
「リアもなかなか辛辣なのです・・・皇帝陛下から鉄板銅板とは別に貰った不思議な金属なのです」
「フィオナの力で曲げれているのに金属ですの・・・いえ、それって希少素材のエラスティックメタルではありません?」
 これ希少素材だったです?やたら弾力性や伸縮性があるだけの金属かと・・・武器素材として使うにしても扱いに困るくらい曲がるので何とも言えな・・・
「金属だから武器に応用と・・・短絡的だったのです、これで関節可動部問題解決なのです!」
「・・・フィオナの声を張り上げる瞬間がいつも謎なんだけどね、ミスリル以外の希少金属もあったんだ」
 ずっとそこに居てくれたのか導きのエラスティックメタル、初めて知りましたけど。
 高級装備等の衝撃緩和材的な使われ方で、単体ではあまり加工使用されないようなのでした・・・不遇系希少素材。
 鉱石の一部をとって棒状に加工してみただけなので十分量は確保できそうなのです。


『ドローンで撮影する演算余力は残してたみたいだけど、やり過ぎだよシオン』
「あまりの防御性能だったので、どこまで耐えれるのか試してみたくなりません?」
『耐久実験って人間相手にやるものでもないんだけれど、確かに雷撃の猛攻を防ぎきれるのは・・・』
「帝都の結界を破壊可能な出力でもダメでしたね」
『そんなものをあんなに連射してたの!?』
 帝都を西に進んだ一般共有通商隧道(ずいどう)を歩きながらアキに報告、思い出すと少しだけムキになってしまったかもしれませんね。
「転生者特権とでも言うべきでしょう、魔導具で電磁バリアー等を再現してもあんなものにはなり得ません」
『それもそう・・・転生者・・・だと』
「ドローンを知っていたので、ただ・・・どうやら私達と時間軸は違うようでした」
『どうしてそう思ったんだい・・・?』
「TS問題が現在進行形で話に混ざっていた・・・1世紀は前の事柄ですから」
『そんなもの疑似体組織とボソンアクチベートメッセンジャーのホルモン分泌反転誘導で表向き解決していただろう、その結果は人類生態系の崩壊要因の1つとな・・・確かに僕達が生まれる前の時代だな』
「本人に確認をしたわけでもないので暫定的ですが、世界線が違う可能性もあり得ます」
『輪廻転生だけでも肯定し難いのに平行世界の可能性まで考えたくも・・・しかしそれならそれで1つの仮説が浮上してくるのだが』
「40年経ってもまだこの世界に来た経緯を探っているのですか、あの世界に未練でも?」
『戻れたら戻れたでもれなく死が待っているんだから・・・それはそれ、異世界同士を繋ぐバイパスがありその次元干渉に関与しているのは・・・』
「話が長くなりそうなので、帰ってからにしてもらえます?坑道ほどではないにしろ魔物も出没しますので」
『躊躇なく話遮るのやめてもらえる・・・そのトンネルも大分手を加えたけど、蜘蛛型とコウモリ型がどこからともなく湧いてくるのはどうにもならなかったな・・・』
「魔海が地脈に影響を与えている以上、私達に対処できる範囲は限られますからね」
『次元断裂事変で生じた魔海に加え、勇者だ魔王だと実にファンタジーだねまったく・・・これが関係しているというのが先程の仮説なんだけど帰ってくるまでの間に整理しておくとしようか』
 ドローンに掴まって空路で早く帰る事もできますが、まあいいでしょう。
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