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第1章 就職と解雇

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ユミルはアデレートと暫く会話を楽しんでいたが、アデレートのもとに魔法局の使者が来て、アデレートは仕事へ向かってしまった。会話が少しだけ漏れ聞こえたが、本日行われていた魔獣討伐で、被害が出たようだった。
アデレートは治癒魔法を得意とし、治療課に所属しているから声がかかったのだろう。
あのアデレートが少し慌てた様子だったので、恐らく結構な規模の被害なのだろうと、ユミルは心配に思いながらアデレートを送り出した。

解散となった後、ユミルはその足で賃貸情報に載っていた不動産店に向かった。
そろそろ無職、無住所になる日は近い。

しかし、いくつも部屋を回ったが、ユミルの予算内で良いと思う部屋は少なく、あったとしても、タッチの差で成約済みになってしまう。
フクもいるので、部屋に妥協できない点が少なからずある。ユミルはやむ無しと、予算よりも2ガルも高い月10ガルのマンスリーマンションを契約した。

(1ヶ月。1ヶ月頑張ってだめだったら、首都での仕事は諦めよう。)

家族はユミルに大きな期待を寄せているので、相談がし辛い。結論を後のばしにしていることを自覚していたが、すぐに生まれ故郷である田舎に引き返す気にはならなかった。

_____

ついに迎えた最終出勤日、ジョンソンとユミルが細やかな送別会を開いてくれた。

「ユミル、本当に今までありがとう。このようなことになって申し訳ないが、どうか、次の職場でも頑張ってくれ。」
「こちらこそ、卒業したての何もわからない時期に拾って、育ててくださったこと、感謝しています。」

エレナとジョンソンは、杖修復に必要なスコープと鑢をひとつ、プレゼントしてくれた。

「いいのですか?」
「君を雇ったときに買ったものだからね。もうこの店にはひとりしか杖修復士がいないから、道具はふたつも不要さ。」
「ありがとうございます。」

ユミルはそれを大事そうに鞄の中にしまった。

「それでは、今までありがとうございました。お元気で。」
「ユミルちゃんも元気でね。」
「たまには顔を出してくれよ。」

こうしてユミルは3年と少し勤めたジョンソン杖修復店を退職したのだった。
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