ある日世界がタイムループしてることに気づいて歓喜したのだが、なんか思ってたのと違う

ジェロニモ

文字の大きさ
34 / 53
タイムスリップ編

液体窒素な中学生

しおりを挟む
 やっちまったのか。過去改変しちゃったか。
 おろおろとその場でぐるぐると歩き回りながら、僕は現在進行中でパニクっていた。

 僕自身、意気揚々と自分の人生を人生勝ち組ルートへと過去改変しようとしていたわけだが、他人の人生を狂わせるとなると話が違うのだ。
 僕にも良心というものがある。いや、人より大分小さい自覚はあるけれど。とにかく他人の未来をぶち壊してしまったのかと思うとそりゃあパニクるってもんだ。

 いや落ち着け。まだ慌てる時ではないはずだ。可能性が濃厚であることは確かではあれど、まだあの女子中学生が星野先生だと確定したわけではない。だからまずはその確証を得る必要があるだろう。
 僕は気持ちを落ち着けて、アパートへと歩いた。そして彼女の入ったドアの前で立ち止まり、コンコンコンとノックする。

「はい、ってあんたさっきの……なに?」

 しばらくして出てきたのは母親ではなく娘の方、8年前の星野先生(仮)だった。
 彼女は僕の姿を確認するや否や、途端に視線と声が冷たくなった。そして開いていたドアが彼女の顔の幅程度に閉められる。
 まるですぐさまドアを閉められるようにと言わんばかりに。……対応が完全に不審者に対するそれだった。もしくは宗教の勧誘か。

「あのー、星野さんのお宅で合ってるでしょうか」
「そうだけど」

 僕の質問に、彼女は「さっさと帰れこのゴミ」という意思を隠そうともせず、ぶっきらぼうに短い返答を返した。しかし一応僕の質問には答えてくれたので、彼女の苗字は星野ということがわかった。

 僕との同じアパートに住んでいて、星野という苗字の女の子で、おまけに顔も声も似ている。……どうやら確定してしまったようだ。星野先生(仮)が星野先生(真)に変わった。

「あのさ、何か用ならさっさと済ませてくれる?」

 客人だろうが慈悲もなし。目の前の中学生が星野先生の8年前の姿だと分かって戸惑う僕のことなど知ったことかと、彼女は冷たい言葉を重ねてきた。

……ちょっと星野先生の学生時代、尖りすぎてやしないだろうか。反抗期なのか。
 そりゃあ未来の方もクールな感じではあったけども、芯の部分にはしっかりとした暖かみがあった。

しかし目の前の彼女はどうか。クールを通り越してドライアイス、いや液体窒素じゃないか。
 近づくものを問答無用で氷漬けにし、睨みだけで人を五回は殺せそう。
 僕の目が彼女から漂う冷気と、目から発せられる殺人ビームを幻視してしまうほどに、彼女は近づきがたい雰囲気を放っていた。
 しかしこんな死ね死ね光線を両目から出すような奴が将来生徒に大人気の教師になるというのだから、世の中分からないもんだ

……まぁ、僕のせいで彼女が教師になる未来が無くなりそうなんですけども。
 胸をチクチクと刺す罪悪感を取っ払う為にも、これはなんとしてでも彼女をもう一度公園に出向かせなければ。手遅れになる前に過去を修正しなくてはならないのだ。

「ほほ、ほら、さっきブランコを譲ってもらったわけだけどさ。結局奪ったような形になったし、やっぱり歳上として恥ずかしい行いをしてしまったと考え直して、君にブランコを譲り返しに来たんだ。好きに遊んでくれ。むしろ日が暮れるくらいまで漕ぎまることをオススメする」

 僕は早急に彼女を公園に行かせるための華麗なロジックを披露した。

「歳上として恥ずかしいって、あんなへこへこした態度取ってた奴が今更なに言ってんの。」

 彼女は僕の親切を鼻で笑いながらそう指摘してきて、僕はぐぅの音も出ない。だって金髪だし、態度怖いし、そりゃヘコヘコしちゃうだろう。今だって普通に怖いし。

「はぁ。だからもういいって。公園はあんたみたいなのがいない時に行くから。じゃあさようなら」
「あ、ちょっと待っ」

 止める間もなく、僅かしか開いてなかったドアがあっという間に力強く閉じられた。
 残されたのは彼女を呼び止めようとドアへ向かって中途半端に手を伸ばした僕一人だ。

 きっと僕が何か発言できていたとしても、彼女はドアを閉めることをやめなかっただろうと思わせるくらいに完全な拒絶だった。

 なんだろう。腹が減ってるからか、そもそもファーストコンタクトからして物珍しい公園への来訪者に驚いて注目していただけであり、突っかかってきたのは彼女の方ではないのかとか。
 ジロジロ見られたくないと言うくせにたいそう目立つ金髪をしやがってとか。   
 何もあそこまで拒絶することはないじゃないかとか。彼女に対してフツフツと怒りが湧いてきた。
 しかしビュウっと吹き抜けた冷たい風で急速にその沸いていた怒りが萎えていく。

……怒ったところで、変えてしまった過去は元には戻らない。腹も満たされない。
 外は寒いわ財布の中身も寒いわ、人間くらい暖かくたって良いじゃないか。さっきまで怒っていたはずなのに、何故だか今度は涙がこぼれそうになった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

春から一緒に暮らすことになったいとこたちは露出癖があるせいで僕に色々と見せてくる

釧路太郎
キャラ文芸
僕には露出狂のいとこが三人いる。 他の人にはわからないように僕だけに下着をチラ見せしてくるのだが、他の人はその秘密を誰も知らない。 そんな三人のいとこたちとの共同生活が始まるのだが、僕は何事もなく生活していくことが出来るのか。 三姉妹の長女前田沙緒莉は大学一年生。次女の前田陽香は高校一年生。三女の前田真弓は中学一年生。 新生活に向けたスタートは始まったばかりなのだ。   この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」にも投稿しています。

【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。

エース皇命
青春
 高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。  そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。  最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。  陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。  以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。 ※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。 ※表紙にはAI生成画像を使用しています。

普段高校生ゲーム実況者として活動している俺だが、最近仲良くなりつつあるVTuberが3人とも幼馴染だった件について。

水鳥川倫理
青春
主人公、目黒碧(めぐろあお)は、学校では始業時間になっても現れない遅刻常習犯でありながら、テストでは常に学年トップの高得点を叩き出す「何とも言えないクズ」として教師たちから扱いにくい存在とされている。しかし、彼には誰にも明かせない二つの大きな秘密があった。 一つ目の秘密は、碧が顔を隠し、声を変えて活動する登録者数158万人を誇るカリスマゲーム実況者「椎崎(しいざき)」であること。配信中の彼は、圧倒的なゲームスキルと軽妙なトークでファンを熱狂させ、学校での「クズ」な自分とは真逆の「カリスマ」として存在していた。 二つ目の秘密は、彼が三人の超絶可愛い幼馴染に囲まれて育ったこと。彼らは全員が同じ誕生日で、血の繋がりにも似た特別な絆で結ばれている。 習志野七瀬(ならしのななせ): 陽光のような明るい笑顔が魅力のツンデレ少女。碧には強い独占欲を見せる。 幕張椎名(まくはりしいな): 誰もが息をのむ美貌を持つ生徒会副会長で、完璧な優等生。碧への愛情は深く、重いメンヘラ気質を秘めている。 検見川浜美波(けみがわはまみなみ): クールな外見ながら、碧の前では甘えん坊になるヤンデレ気質の少女。 だが、碧が知らない三重目の秘密として、この三人の幼馴染たちもまた、それぞれが人気VTuberとして活動していたのだ。 七瀬は元気いっぱいのVTuber「神志名鈴香」。 椎名は知的な毒舌VTuber「神楽坂遥」。 美波はクールで真摯なVTuber「雲雀川美桜」。 学校では周囲の視線を気にしながらも、家では遠慮なく甘え、碧の作った料理を囲む四人。彼らは、互いがカリスマ実況者、あるいは人気VTuberという四重の秘密を知らないまま、最も親密で甘い日常を謳歌している。 幼馴染たちは碧の「椎崎」としての姿を尊敬し、美波に至っては碧の声が「椎崎」の声に似ていると感づき始める。この甘くも危険な関係は、一つの些細なきっかけで秘密が交錯した時、一体どのような結末を迎えるのだろうか。

黒に染まった華を摘む

馬場 蓮実
青春
夏の終わりに転校してきたのは、忘れられない初恋の相手だった——。 高須明希は、人生で“二番目”に好きになった相手——河西栞に密かに想いを寄せている。 「夏休み明けの初日。この席替えで、彼女との距離を縮めたい。話すきっかけがほしい——」 そんな願いを胸に登校したその朝、クラスに一人の転校生がやってくる。 彼女の名は、立石麻美。 昔の面影を残しながらも、まるで別人のような気配をまとう彼女は——明希にとって、忘れられない“初恋の人”だった。 この再会が、静かだった日常に波紋を広げていく。 その日の放課後。 明希は、"性の衝動"に溺れる自身の姿を、麻美に見られてしまう——。 塞がっていた何かが、ゆっくりと崩れはじめる。 そして鬱屈した青春は、想像もしていなかった熱と痛みを帯びて動き出す。 すべてに触れたとき、 明希は何を守り、何を選ぶのか。 光と影が交錯する、“遅れてきた”ひと夏の物語。

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

処理中です...