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第一章
014 蕾の開き─①
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花盛の儀の当日──フィリはふらふらになっていた。たった数回の食事を抜いただけなのに、普段ここではありとあらゆる贅沢が身近にあるため、身体が追いついていかなかった。
浴場へ呼ばれ、生まれたままの姿になると、まずは身体を湯船に沈めた。次に首から足の指先まで、香油で念入りに磨かれる。
用意されたものを身につけるが、当たり前に下着はない。
肌が透けるほど薄い布は肌触りが良い。頭部にはティアラが乗る。
「このまま後宮内にある神殿へ向かいます」
アイラは花盛の儀には参加しない。それだけでだいぶ心の負担が減った。彼女とは二年以上も共に過ごしてきた。見守られるなら、顔見知りは避けたい。
「フィリ様、中でヴァシリス王子がお待ちです。……フィリ様?」
進もうとはせず立ち止まっていると、侍従の一人が怪訝そうに顔を傾げた。
この王国は性に関してわりと公然としている。保守的なルロ国と比べると天と地ほどの差がある。たった二年で変われるわけがない。
一歩、また一歩と踏み出した。奥へ進むたびに香の香りが濃くなっていく。頭がうまく働かなくなる匂いだ。身体中が熱い。空気が薄くなったように感じる。
薄暗い明かりの中、奥に高さのある寝台が置かれている。周りには取り囲むように人が並んでいて、その中でも天蓋の下に椅子が置かれ、一つだけ台の高い位置にある。
ヴェールの隙間から横目で見ると、ヴァシリスに似た男が座っていた。おそらく新王であるアーディムだ。
フィリが動くたびに鈴が鳴り、周りからは感嘆声が漏れる。
寝台にはヴァシリスは座っている。上半身は裸の上に薄手の羽織を着ていた。
彼と目が合う。フィリは不安と場の雰囲気に呑まれそうになり、足が動かない。
ヴァシリスは寝台から立ち上がった。階段を下りる姿は、ひれ伏したくなるほどの存在感がある。
ヴァシリスは手を差し出した。フィリは重ねる。
彼の手が冷たく感じるのは、フィリの体温が上昇しているからだ。
「これより、花盛の儀を執り行います。儀式を終えるまで静かに演奏を続けさせます故、どうか儀式に集中して下さいませ」
侍従は一礼をして、後ろへ下がった。
隣の部屋から優しい音色が聞こえてくる。不思議と緊張をほぐれるような音だった。
「フィリ、行こう」
フィリは頷き、手を結んだまま階段を上った。
寝台には天蓋があり、シルクのカーテンが垂れているが、すべて見えるように斜めにかけられていた。
「我が后は何を着ても似合うな。美しい」
「お前も似合うよ」
大丈夫、大丈夫と、頭や頬、鼻、手の甲と唇が降ってくる。
ヴァシリスはフィリの頭に手を添えて、ゆっくりと押し倒した。慣れた様子で上着を脱ぐと、寝台の下に落とす。
「うつ伏せになってくれ」
言われた通りに腹這いになると、腰を高く持ち上げられた。
ヴァシリスは脇に置かれていた缶の入れ物を開け、指先ですくう。
遠くで音楽が聞こえる。とにかく早く終わらせてほしいと願った。
「う…………ううっ…………」
ぬめった軟膏が指とともに入ってくる。押し戻そうと力を込めるが、塗れた指は臀部の力よりも強く、襞を揉むように中へ中へと進む。
中指と人差し指が入る。親指は蕾の皺を撫でる。フィリの背中が大きく揺れた。苦しさだけではない声がフィリの口から漏れた。
「入れるぞ」
言葉少なめにヴァシリスは呟き、指を引き抜いた。
ヴァシリスは着ていた羽織を脱ぎ捨てると、猛った自身を小さな桃色の窄みに押し当てた。
想像していた性行為そのものだ。本で読んだものと間違いはなく、こんなものか、とフィリは一瞬だけ我に返った。
ほんの一瞬はすぐに通り過ぎ、慣れない異物が通る感覚は恐ろしくもあり、ヴァシリスの望みを叶えてやりたい。
「うっ……ああっ…………!」
痛みの中、悦びのようなものが生まれている。彼に破瓜された。これで身も心も彼のもので、彼も自分のものだ。誰にも汚されないし、堂々とこの国で生きていける。
緩急のついた律動が奥で止まり、背後からうなり声が聞こえた。
少しでも動くと奥で放たれたものがぐじゅぐじゅと音を鳴らし、行為の生々しい跡を突きつける。
「儀式は滞りなく終えた。確認を」
ヴァシリスは滑舌よく告げると、脇に控えていた男二人が立ち上がる。
「あっ…………」
ヴァシリスはフィリの尻を高く持ち上げ、親指を割れ目に差し入れると左右に開いた。
「フィリ様、失礼いたします」
男はペンライトの明かりをつけ、襞の奥を照らしながらじっくりと中を覗いた。
先端から精液がぼたぼたと布団へ垂れる。見られている羞恥に、心と身体は真逆の反応を示した。
「フィリ様、そのように力を入れては、中を調べることができませぬ。我々は医師です。ご安心下され」
医師だろうが、自身の夫以外にこんな醜態をさらされているのだ。
「ヴァシリス王子、器具を使用してもよろしいですかな。フィリ様の奥はどうにも細く、肉眼では確認が難しいのです」
「構わぬ」
医師は鷲の紋様のある箱から器具を出した。
「少し冷たいですよ」
医師は器具をフィリの窄まりに挿入した。
「あっ……うっ…………」
前に逃げようとするフィリの身体を、ヴァシリスはがっしりと掴んで後ろへ引きずる。絶対に逃がさないと腰を強く掴んだ。
氷のように冷たい器具だ。フィリは短く息を吐き、襞を刺激する感覚を必死にやり過ごそうとする。
医師は拡張器のネジを回した。すると差し込まれた先端が徐々に広がっていく。
医師は再びペンライトで奥を照らした。
フィリの胸が上下するたびに背中が浮き上がる。
「…………ふむ。奥が炎症を起こし、傷がついていますな。内壁にはべったりとヴァシリス王子の吐精の跡が見えます。后の破瓜は無事に成功でございます」
「おめでとうございます。花盛の儀は無事にお開きといたします」
辺りから拍手が沸き起こるが、フィリには聞こえていなかった。
医師が拡張器を抜くと、フィリの口からかすれた声が漏れる。
フィリは寝台に倒れ、そのまま意識を手放した。
心臓を射抜くような大きな音が聞こえ、フィリは目を開いた。
身体もまぶたも重い。もう一度、遠くで心臓を弾く音が聞こえ、今度はしっかりと目を覚ます。
「起きたか?」
薄暗い明かりの中、ヴァシリスは穏やかな笑みを浮かべて立っていた。フィリの沈む寝台へ近づくと、隣へ横になる。
「身体は拭いて、中には薬を塗った。しばらくは安静にしていてくれ」
「薬?」
「軟膏の薬を。飲み薬ももらったから、そちらは痛みが我慢できないときに飲むように、だそうだ」
「お前が僕の身体を拭いたのか?」
「本当は侍従の仕事なんだがな。誰にも譲りたくなかった。痛かっただろう? 恥ずかしい思いをさせた」
「あ、あんな奥まで見られて……最悪だ」
「だがこれでお前は俺の上后だ。ファルーハ王国からも認められ、堂々とできる。……俺は嬉しくて仕方ない。お前を破瓜し、それを証明できた。一生かけて愛せる。俺だけを知っていてほしい」
「そんなことを言われたら、文句の一つも言えないじゃないか」
ヴァシリスは腕を広げた。
フィリは重い身体を引きずって腕に顔を乗せると、胸に顔をうずめる。
「……さっきからなんだ? 花火でも上がっているのか?」
「花盛の儀の成功のとき、こうして花火を上げるしきたりとなっている」
「交合したと全国民へ知らせているようなものじゃないか!」
「俺は幸せだぞ。身も心も一つになったと、公然と公表できるんだからな。むしろ何が不満だ?」
「不満というか……恥ずかしいだろ」
「交合も王子と后にとって大切な儀式のようなものだ。こんな美しい后を迎えられたんだ。俺は世界一の幸せ者だな」
最後のひと押しとばかりに、轟音が響き渡った。
浴場へ呼ばれ、生まれたままの姿になると、まずは身体を湯船に沈めた。次に首から足の指先まで、香油で念入りに磨かれる。
用意されたものを身につけるが、当たり前に下着はない。
肌が透けるほど薄い布は肌触りが良い。頭部にはティアラが乗る。
「このまま後宮内にある神殿へ向かいます」
アイラは花盛の儀には参加しない。それだけでだいぶ心の負担が減った。彼女とは二年以上も共に過ごしてきた。見守られるなら、顔見知りは避けたい。
「フィリ様、中でヴァシリス王子がお待ちです。……フィリ様?」
進もうとはせず立ち止まっていると、侍従の一人が怪訝そうに顔を傾げた。
この王国は性に関してわりと公然としている。保守的なルロ国と比べると天と地ほどの差がある。たった二年で変われるわけがない。
一歩、また一歩と踏み出した。奥へ進むたびに香の香りが濃くなっていく。頭がうまく働かなくなる匂いだ。身体中が熱い。空気が薄くなったように感じる。
薄暗い明かりの中、奥に高さのある寝台が置かれている。周りには取り囲むように人が並んでいて、その中でも天蓋の下に椅子が置かれ、一つだけ台の高い位置にある。
ヴェールの隙間から横目で見ると、ヴァシリスに似た男が座っていた。おそらく新王であるアーディムだ。
フィリが動くたびに鈴が鳴り、周りからは感嘆声が漏れる。
寝台にはヴァシリスは座っている。上半身は裸の上に薄手の羽織を着ていた。
彼と目が合う。フィリは不安と場の雰囲気に呑まれそうになり、足が動かない。
ヴァシリスは寝台から立ち上がった。階段を下りる姿は、ひれ伏したくなるほどの存在感がある。
ヴァシリスは手を差し出した。フィリは重ねる。
彼の手が冷たく感じるのは、フィリの体温が上昇しているからだ。
「これより、花盛の儀を執り行います。儀式を終えるまで静かに演奏を続けさせます故、どうか儀式に集中して下さいませ」
侍従は一礼をして、後ろへ下がった。
隣の部屋から優しい音色が聞こえてくる。不思議と緊張をほぐれるような音だった。
「フィリ、行こう」
フィリは頷き、手を結んだまま階段を上った。
寝台には天蓋があり、シルクのカーテンが垂れているが、すべて見えるように斜めにかけられていた。
「我が后は何を着ても似合うな。美しい」
「お前も似合うよ」
大丈夫、大丈夫と、頭や頬、鼻、手の甲と唇が降ってくる。
ヴァシリスはフィリの頭に手を添えて、ゆっくりと押し倒した。慣れた様子で上着を脱ぐと、寝台の下に落とす。
「うつ伏せになってくれ」
言われた通りに腹這いになると、腰を高く持ち上げられた。
ヴァシリスは脇に置かれていた缶の入れ物を開け、指先ですくう。
遠くで音楽が聞こえる。とにかく早く終わらせてほしいと願った。
「う…………ううっ…………」
ぬめった軟膏が指とともに入ってくる。押し戻そうと力を込めるが、塗れた指は臀部の力よりも強く、襞を揉むように中へ中へと進む。
中指と人差し指が入る。親指は蕾の皺を撫でる。フィリの背中が大きく揺れた。苦しさだけではない声がフィリの口から漏れた。
「入れるぞ」
言葉少なめにヴァシリスは呟き、指を引き抜いた。
ヴァシリスは着ていた羽織を脱ぎ捨てると、猛った自身を小さな桃色の窄みに押し当てた。
想像していた性行為そのものだ。本で読んだものと間違いはなく、こんなものか、とフィリは一瞬だけ我に返った。
ほんの一瞬はすぐに通り過ぎ、慣れない異物が通る感覚は恐ろしくもあり、ヴァシリスの望みを叶えてやりたい。
「うっ……ああっ…………!」
痛みの中、悦びのようなものが生まれている。彼に破瓜された。これで身も心も彼のもので、彼も自分のものだ。誰にも汚されないし、堂々とこの国で生きていける。
緩急のついた律動が奥で止まり、背後からうなり声が聞こえた。
少しでも動くと奥で放たれたものがぐじゅぐじゅと音を鳴らし、行為の生々しい跡を突きつける。
「儀式は滞りなく終えた。確認を」
ヴァシリスは滑舌よく告げると、脇に控えていた男二人が立ち上がる。
「あっ…………」
ヴァシリスはフィリの尻を高く持ち上げ、親指を割れ目に差し入れると左右に開いた。
「フィリ様、失礼いたします」
男はペンライトの明かりをつけ、襞の奥を照らしながらじっくりと中を覗いた。
先端から精液がぼたぼたと布団へ垂れる。見られている羞恥に、心と身体は真逆の反応を示した。
「フィリ様、そのように力を入れては、中を調べることができませぬ。我々は医師です。ご安心下され」
医師だろうが、自身の夫以外にこんな醜態をさらされているのだ。
「ヴァシリス王子、器具を使用してもよろしいですかな。フィリ様の奥はどうにも細く、肉眼では確認が難しいのです」
「構わぬ」
医師は鷲の紋様のある箱から器具を出した。
「少し冷たいですよ」
医師は器具をフィリの窄まりに挿入した。
「あっ……うっ…………」
前に逃げようとするフィリの身体を、ヴァシリスはがっしりと掴んで後ろへ引きずる。絶対に逃がさないと腰を強く掴んだ。
氷のように冷たい器具だ。フィリは短く息を吐き、襞を刺激する感覚を必死にやり過ごそうとする。
医師は拡張器のネジを回した。すると差し込まれた先端が徐々に広がっていく。
医師は再びペンライトで奥を照らした。
フィリの胸が上下するたびに背中が浮き上がる。
「…………ふむ。奥が炎症を起こし、傷がついていますな。内壁にはべったりとヴァシリス王子の吐精の跡が見えます。后の破瓜は無事に成功でございます」
「おめでとうございます。花盛の儀は無事にお開きといたします」
辺りから拍手が沸き起こるが、フィリには聞こえていなかった。
医師が拡張器を抜くと、フィリの口からかすれた声が漏れる。
フィリは寝台に倒れ、そのまま意識を手放した。
心臓を射抜くような大きな音が聞こえ、フィリは目を開いた。
身体もまぶたも重い。もう一度、遠くで心臓を弾く音が聞こえ、今度はしっかりと目を覚ます。
「起きたか?」
薄暗い明かりの中、ヴァシリスは穏やかな笑みを浮かべて立っていた。フィリの沈む寝台へ近づくと、隣へ横になる。
「身体は拭いて、中には薬を塗った。しばらくは安静にしていてくれ」
「薬?」
「軟膏の薬を。飲み薬ももらったから、そちらは痛みが我慢できないときに飲むように、だそうだ」
「お前が僕の身体を拭いたのか?」
「本当は侍従の仕事なんだがな。誰にも譲りたくなかった。痛かっただろう? 恥ずかしい思いをさせた」
「あ、あんな奥まで見られて……最悪だ」
「だがこれでお前は俺の上后だ。ファルーハ王国からも認められ、堂々とできる。……俺は嬉しくて仕方ない。お前を破瓜し、それを証明できた。一生かけて愛せる。俺だけを知っていてほしい」
「そんなことを言われたら、文句の一つも言えないじゃないか」
ヴァシリスは腕を広げた。
フィリは重い身体を引きずって腕に顔を乗せると、胸に顔をうずめる。
「……さっきからなんだ? 花火でも上がっているのか?」
「花盛の儀の成功のとき、こうして花火を上げるしきたりとなっている」
「交合したと全国民へ知らせているようなものじゃないか!」
「俺は幸せだぞ。身も心も一つになったと、公然と公表できるんだからな。むしろ何が不満だ?」
「不満というか……恥ずかしいだろ」
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