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14話:新人訓練の最終日
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テオバルトへの気持ちを自覚してアピールしていこうとしていたルーカスだったが、忙しいテオバルトと接触できる機械的が得られていなかった。特になにも行動を起こせないまま時間が過ぎ、訓練期間は三か月目に突入し、空気はすっかり冷え込む時期になっていた。時折ちらちらと雪の降る日もある。喘息持ちの身には辛い季節がやってきていた。
寮棟から騎士団本部本館への渡り廊下は、屋根のついているものの壁はなく、ほとんど外である。身を縮こませながら腕で体を覆い、白い息を吐きながら歩く。
今日はいよいよ訓練の最終段階。与えられる最後の試練は、上層部が街に仕掛けた異変を見抜くというものだ。新人の配属された班が街に繰り出し、異変を見つけられた新人には加点が入る。ルーカスとしては、何としても加点を狙いたいところだ。
「冷えこんでるな。これを羽織っておけ」
ヘンゼルが冬生地のローブをルーカスにかける。
「ありがとうございます」
ルーカスは渡り廊下の欄干に手をのせ、空を見上げた。テオバルトを乗せた竜の影はどこにもなく、どんよりと灰汁を煮詰めたような空が広がるばかりだ。
「テオバルトは、いつ帰ってくるんでしょうか」
「そればっかりは私にも分からん。アインツカイト様のことだ。きっと無事に成果をあげて帰ってくるだろう」
テオバルトは一週間前に遠征に出てから、ずっと帰ってきていない。どういう指令を受けて、どういう戦況にいるのか。下っ端であるルーカスにはもちろん、それなりの立場にいるらしいヘンゼルにも知らされておらず、気をもむことしかできない。
「心配なのは分かるが、今は自分にできることをやるしかない。今日のことに集中しろ。十位以内に入るという約束をしたのだろう?」
「そうですけど……」
実のところ、自身はなかった。トップレベルのユリウスとともに自主訓練をしたが、魔術に関しては本来ならば士官学校で教わるものをようやく習得したという具合なのだ。成長ではあるが、ようやっと士官学校出の人と横並びになれた、という感覚の方が強かった。売り言葉に買い言葉で啖呵を切ってしまったが、目指すもののレベルの高さに焦りだけが募っていく。
「ユリウスと五分五分の剣技なんだ。堂々としてろ」
ルーカスは深呼吸をした。白い息が吐き出される。
「あ、おはよう、二人とも!」
「おはようございます。グラウンさん、ホルムさん」
「なにもこんな寒いところで待ってなくても良かったのに。ルーカス君が羽織ってるのってもしかしてアンテスさんのローブ?」
「そうです」
「わぁ、だいぶ打ち解けたねぇ。ねぇ、ヨハン」
「打ち解けたっていより、もっと厄介なことになってない?」
「何をぐだぐだ言っている。ほら、さっさと行くぞ」
街はうっすらとした雪化粧に覆われていた。
ルーカスが街に出るのは久々だった。休暇には申請すれば街へ出ることもできるが、新人の訓練期間はそれすらもできない制限があった。二百もの班が一度に街に出るのは、住民の迷惑になることを鑑みて、およそ一か月をかけて行われる。ルーカスが挑む今日は、その最終日である。
「おっ、ルーカス。お互い頑張ろう」
「ユリウスも今日だって言ってたね。うん、頑張ろう」
二人は拳をこつん、と合わせた。
街に仕掛けられた異変は、魔物の特性を模したものである。どれだけそれらに注意を向けられるかが問われることになる。互いが魔物に詳しいことを知っている二人は、手強い相手になるだろうことを感じ取っていた。
寮棟から騎士団本部本館への渡り廊下は、屋根のついているものの壁はなく、ほとんど外である。身を縮こませながら腕で体を覆い、白い息を吐きながら歩く。
今日はいよいよ訓練の最終段階。与えられる最後の試練は、上層部が街に仕掛けた異変を見抜くというものだ。新人の配属された班が街に繰り出し、異変を見つけられた新人には加点が入る。ルーカスとしては、何としても加点を狙いたいところだ。
「冷えこんでるな。これを羽織っておけ」
ヘンゼルが冬生地のローブをルーカスにかける。
「ありがとうございます」
ルーカスは渡り廊下の欄干に手をのせ、空を見上げた。テオバルトを乗せた竜の影はどこにもなく、どんよりと灰汁を煮詰めたような空が広がるばかりだ。
「テオバルトは、いつ帰ってくるんでしょうか」
「そればっかりは私にも分からん。アインツカイト様のことだ。きっと無事に成果をあげて帰ってくるだろう」
テオバルトは一週間前に遠征に出てから、ずっと帰ってきていない。どういう指令を受けて、どういう戦況にいるのか。下っ端であるルーカスにはもちろん、それなりの立場にいるらしいヘンゼルにも知らされておらず、気をもむことしかできない。
「心配なのは分かるが、今は自分にできることをやるしかない。今日のことに集中しろ。十位以内に入るという約束をしたのだろう?」
「そうですけど……」
実のところ、自身はなかった。トップレベルのユリウスとともに自主訓練をしたが、魔術に関しては本来ならば士官学校で教わるものをようやく習得したという具合なのだ。成長ではあるが、ようやっと士官学校出の人と横並びになれた、という感覚の方が強かった。売り言葉に買い言葉で啖呵を切ってしまったが、目指すもののレベルの高さに焦りだけが募っていく。
「ユリウスと五分五分の剣技なんだ。堂々としてろ」
ルーカスは深呼吸をした。白い息が吐き出される。
「あ、おはよう、二人とも!」
「おはようございます。グラウンさん、ホルムさん」
「なにもこんな寒いところで待ってなくても良かったのに。ルーカス君が羽織ってるのってもしかしてアンテスさんのローブ?」
「そうです」
「わぁ、だいぶ打ち解けたねぇ。ねぇ、ヨハン」
「打ち解けたっていより、もっと厄介なことになってない?」
「何をぐだぐだ言っている。ほら、さっさと行くぞ」
街はうっすらとした雪化粧に覆われていた。
ルーカスが街に出るのは久々だった。休暇には申請すれば街へ出ることもできるが、新人の訓練期間はそれすらもできない制限があった。二百もの班が一度に街に出るのは、住民の迷惑になることを鑑みて、およそ一か月をかけて行われる。ルーカスが挑む今日は、その最終日である。
「おっ、ルーカス。お互い頑張ろう」
「ユリウスも今日だって言ってたね。うん、頑張ろう」
二人は拳をこつん、と合わせた。
街に仕掛けられた異変は、魔物の特性を模したものである。どれだけそれらに注意を向けられるかが問われることになる。互いが魔物に詳しいことを知っている二人は、手強い相手になるだろうことを感じ取っていた。
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