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三十一話:将来
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休み明けに学院に出ると、リカルドからの質問攻めにあった。指定された席についている僕の真向かいに陣取ってあれこれ聞いてくる様は、さながら事情聴取のようだった。ちなみに僕の前席はリカルドの席ではない。本来座るべき子が困っているのが視界の端に見えていたが僕にはどうしてあげることもできなかった。リカルドが満足してようやくその子は座ることができた。リカルドはその子に礼を言っていたが僕からも謝罪をした。
お茶会が終わって帰宅してすぐ殿下とのやり取りを父上に報告した。その流れで留学についても相談をした。すぐに判断を下せるものではない。父上を説得できるように僕はやれることをやっておかなければならない。
リカルドには留学の話はしていない。いつか話さなければならないが、まだそのタイミングではないような気がしている。ではいつが相応しいのかといえば、それは僕自身分かっていない。
昼休みになるとリカルドが裏庭に引っ張っていこうとしたが、きっぱりと断った。
「早くご飯を食べて勉強をしたいんだ」
「それは試験に向けて、ってこと?」
「それもあるけど、もっと大きな目標ができたから」
リカルドは眉を上げた。
「それが何かは言えないけど」
「ミブ殿下とのお茶会でまだ隠し事してない?」
「してないよ!」
リカルドは僕の頬を引っ張った。
「ほんとに?」
「ほんほに」
全くの嘘ではないが、少しの後ろめたさはあった。
「その大きな目標とやらは俺には言えないと」
こくこくと頷く。
「どうしても?」
まだ頬は引っ張られたままだった。
「おういえも」
ちっ、と音がした。紛れもない舌打ちだった。頬は解放された。
「り、リカルドのための目標だから」
「俺のための?」
「そう」
「ふーん、俺のための大きな目標ねえ」
疑われているが、少しは機嫌が戻ったようだった。最近気づいたのだが、リカルドは怒らせると少し怖い。いつもは優しくて飄々としているだけに、機嫌を損ねたときの落差が分かりやすい。纏っている空気の温度が下がるような怒り方だ。目つきが細められ冷たい視線を放つ。かといえば子どもっぽく可愛い拗ね方をすることもある。
「じゃあ俺もここで食べる」
そういって自分の席から椅子を運んできて僕の隣に置いた。机も席もそう広いものではないので、ぴったりとくっつくことになる。女子からの視線が刺さって痛い。
「ねえ、リカルドは学院を卒業したらどうするの」
「シルヴァ君次第かな。シルヴァ君と一緒にいられたらフェンデラントで就職できるようにしたいし、考えたくないけどシルヴァ君といられないなら家督を継ぐための準備をする」
リカルドの将来が僕を軸に置かれていることに圧を感じる。
「そのことなんだけど……」
リカルドの手の平が僕の口を抑える。
「大事な話?」
「うん」
「ここじゃないとこで聞きたい。試験が終わったら王都に遊びにいかない? その時聞かせてほしい」
「分かった」
お茶会が終わって帰宅してすぐ殿下とのやり取りを父上に報告した。その流れで留学についても相談をした。すぐに判断を下せるものではない。父上を説得できるように僕はやれることをやっておかなければならない。
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昼休みになるとリカルドが裏庭に引っ張っていこうとしたが、きっぱりと断った。
「早くご飯を食べて勉強をしたいんだ」
「それは試験に向けて、ってこと?」
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リカルドは眉を上げた。
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「してないよ!」
リカルドは僕の頬を引っ張った。
「ほんとに?」
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こくこくと頷く。
「どうしても?」
まだ頬は引っ張られたままだった。
「おういえも」
ちっ、と音がした。紛れもない舌打ちだった。頬は解放された。
「り、リカルドのための目標だから」
「俺のための?」
「そう」
「ふーん、俺のための大きな目標ねえ」
疑われているが、少しは機嫌が戻ったようだった。最近気づいたのだが、リカルドは怒らせると少し怖い。いつもは優しくて飄々としているだけに、機嫌を損ねたときの落差が分かりやすい。纏っている空気の温度が下がるような怒り方だ。目つきが細められ冷たい視線を放つ。かといえば子どもっぽく可愛い拗ね方をすることもある。
「じゃあ俺もここで食べる」
そういって自分の席から椅子を運んできて僕の隣に置いた。机も席もそう広いものではないので、ぴったりとくっつくことになる。女子からの視線が刺さって痛い。
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