ロスト・ワールド

さのさかさ

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8話 窮地

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 強がりなのか、あるいは本当にいい策が見つかったのかニックには判断できず、じっとルスの顔を見つめる。

「なに?兄さん信じてないの?」

「いや、ちょっと驚いただけ。本当にいい案なんてあるのか?」

 ルスは不敵に笑うと勉強机に向かい引き出しを漁り始めた。

「おっ、おい何してんだよ」

「ここは僕らの家だ。でも母さんは本当の母さんじゃない。もし兄さんが死んでしまったら、僕は母さんと一緒に生きていける気がしない」

「それがこの状況を解決することと、どう関係があるんだよ」

「ごめん兄さん本当の所、解決できるかどうかは分からないんだ」

「はあ?なんだよ。やっぱり強がりかよ」
 ニックが笑う。

「兄さん逃げられないなら、こんな家ぶっ壊してしまおうよ」

 ルスが言って、扉を塞いでいる本棚をぎっと睨む。震えるルスの手はマッチ箱を握り締めていた。それを見てニックはルスが何をしようとしているのか理解する。

「俺たちが上手く逃げられるかの保証はないよな」

「うん。だから僕を止めたって別に良い」

「いや。お前の案に乗るよ。お前となら一緒に死んだって構わない。一人で死ぬよりはな」

「そこは、お前だけでも生きろとかじゃないんだ?」
 ルスが笑う。寝る前まで一緒に笑い合っていた筈なのに、妙に懐かしく感じた。

「そんなの偽善だろ。俺は一人で死ぬのなんて御免だね。俺らは双子だからな、二人で一人だ」

「兄さんの、そういう所が僕は好きだよ」

 扉の向こうではカーラの怒鳴り声と扉を叩く音が今も続いていた。ただ、母の声は聞こえるものの男の気配を感じられないことがかえって不気味だった。
 ルスが本棚の前に立つ。

「母さん、僕は今から本棚に火をつける」

「やめなさいルス!あなたたちどちらも死なせないから!」

 その時だった。

 窓の方で回転を続けていた竜巻がいきなり破裂した。
 ガラスの破片がもの凄いスピードで部屋中に飛散する。

「ルス!」

 ニックがルスを抱きかかえるようにして覆いかぶさる。
 ビュンビュンと空気を切るガラスの音が部屋中を埋めつくしていく。ルスはニックの胸の中で耳を塞ぎたい気持ちでいっぱいになる。兄さんは大丈夫なのか、不安と恐怖が頭を一杯にさせ思考が散漫していく。
 頭に感じるニックの息遣いが段々と荒くなり、うぅと鈍い声がルスの耳に届く。

「兄さんもういい、離して」

 力を入れニックを退かそうとするが上手くいかない。

「やめろルス。俺は大丈夫だから」

「二人で一人じゃないのかよ!一緒に死ぬって言ったじゃないか。なら一緒に傷つけばいいだろ!」

 いくら叫んでもニックは聞く耳を持たなかった。

 部屋の中はいつの間にか嵐が起こっているかのように風がビュンビュンと吹き荒れ、いつ本棚や壁が壊れても可笑しくない状況になっていた。


「ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 突然ニックの悲痛な叫びが部屋中に轟く。
 今起こっているどんな事よりも、兄の叫び声にルスはショックを受け胸がはち切れそうになった。

「兄さん、どうしたんだよ。おい、兄さん!」

 目をきつく閉じで、目一杯力を入れるがニックはびくともしない。状況を確認したくてたまらないのに目を開けても閉じても真っ暗なままな事に腹が立った。


 自分はなんて無力なんだ。 








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