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8話・『スズ視点』・勉強会(意味深

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 一週間に一度の休日。

「あーそびーにーいこーぜー」

 と文句を言ったのは、そんな本日に勉強会を強いられているリンリンちゃんです。机に突っ伏すようにして、全身を伸ばしてローテーブルを占領しました。

 私やベルちゃんの邪魔をして勉強を中断させようとしているのでしょうが、それは無意味というものです。

「ブータレてないで終わらせなさいよ」

「そうだね。早く終われば、遊びに行く時間もできるよ。ですよね?」

 ベルちゃんがリンリンちゃんをたしなめ、私は苦笑を浮かべながら励ましました。そして、私達から少し離れてベッドの上に正座して、勉強を教えてくださっています。

「うん? まぁ、好きにすれば良い」

 休日にどこへ行こうが勝手だと、変わらない澄まし顔で答えてくれました。

 なので、私から誘った勉強会を早く終わらせるようリンリンちゃんを励ますのです。

「さぁ頑張って」

「うーうー少しだけ休憩~」

 ささやかな抵抗として休憩を申告してきました。

「そのうーうー言うのやめなさい。って、もう、始まってまだ30分じゃない……」

 リンリンちゃんの勉強嫌いは今に始まったことではありませんが、世話をするベルちゃんは呆れました。しかし、そこを予想しているのがベルちゃんのすごいところです。

「まぁ、そんなこともあろうかと」

 そう言ったタイミングで、図ったかのように先生の部屋のチャイムが鳴るのです。

「はい?」

 流石に私達に任せるわけにもいかず、アズマ先生が立ち上がって玄関に向かいました。当然、ベルちゃんのはかりごとを気にしながらです。

 玄関扉の覗き穴、ドアビューアから軽く外の様子を見て怪訝な表情でノブに手を伸ばします。私やリンリンちゃんも、何を計画しているのかと玄関に注目します。

「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん!」

 扉が開くと同時に、黒のぱっつんヘアーをなびかせて快活な声で挨拶するのは、マンションの管理人一家が娘ことラーン姉さんでした。

 手にしているのは紙の箱で、お菓子か何かだとわかります。

「おぉ……。管理人さんのところの……」

 古い上に異様なテンションを目の当たりにして、アズマ先生も少し困惑している様子です。私も、まさかラーン姉さんがくるとは思わず目を丸くしました。

「いろいろと応援を兼ねて差し入れさぁね」

 顔の中央にあるつぶらな一つ目をキラッと輝かせて、ラーン姉さんは期待しているといった様子で紙の箱を掲げて見せました。ベルちゃんと視線を交わすあたり、やはり差し入れだけでは済まないようです。

「……」

 いつもいつも、ベルちゃんの企むことは私にはよくわかりません。アズマ先生は、嫌な予感を覚えているといった様子でした。

 ズカズカと部屋へと乗り込んでくるラーン姉さんを、管理人代行という権力がために止めることができず。

「勝手に、いや、おかしなものはないですよ。だから」「そぉかい?」

 ラーン姉さんは、アズマ先生の言葉を遮りました。見た目は大人しい感じの高校2年生ですが、その一つ目で見つめられると多くの人が萎縮してしまいます。

「それを今から確かめるのさね」

 頭だけ振り返ったラーン姉さんは口角を釣り上げて言いました。

 まさか、アズマ先生がマンションの規約を破っている可能性があるだなんて! ペットでしょうか? それとも……。

「おい、ベルッ」

「いやー、やっぱり男の人の部屋に来たら、探さないとね」

 ベルちゃんにラーン姉さんを止めるように、暴挙を止めさせるようアズマ先生は声を荒げました。けれど、もはや手遅れのようです。

 ラーン姉さんの目が明るく光り、私達に背を向けるように室内を見渡して行きます。

 一体、一つ目妖怪の妖力である透視で何を探しているのでしょう? あ、ベルちゃん、透視中のラーン姉さんは目を見られるのを嫌いますよ。

「目は覗くなって言ってるやろぉ」

「あぁんっ、やっぱり見せてくれないのね」

 予想通り、ラーン姉ちゃんに顔を抑えられて止められました。

「あの、何を探して……?」

 私は、アズマ先生が悪いことをしていないと信じて、ラーン姉さんに尋ねました。

「掃除をしているスズが一番見つけるはずだけど、んー、これは、思った通りね」

「そうみたいやなぁ」

「スズって、こういうの鈍いからな。見つけても気づいてないだけとか?」

「お前らが年増なだけだ。お前らの望むようなものは無いから止めてくれ……」

 私を除いて、四人ともわかっているかのように言いました。アズマ先生の言い様からして、子供が気にするべきことではないもののようです。

「え? え?」

 私一人だけ取り残されたようで、寂しさも相まって困惑してしまいました。

 最終通告を聞かなかったベルちゃんとリンリンちゃんに、アズマ先生も怒って言い渡します。

「お前らだけ課題2倍だ。覚悟しておけ」

 そんな独断によるセリフを、ためらいもなく言えるほどに怒っていました。

 当然、というか理由はわからないものの、そうなることなどわかっていたでしょう。人の嫌がることをしたらいけないってことですよね。

「ちょっと、私まで巻き込むなよぉー!」

 傍観しながらも企みを理解していただけのリンリンちゃんからは、ブーイングの声が上がりましたとさ。

 ちなみに、探しているものは見つかりませんでした。
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