137 / 155
その後…とは限らない番外編
番外編3 栄冠は君に輝くか?! その3
しおりを挟む
(SIDEケツアルコアトル)
一応弟子にあたる、マリーザや付き合いの長いアルテアに頼まれて、前回は固辞したスーパーヒーローオリンピックに今回は参加することにした。
己の熱く燃え盛る正義の魂を全ての行動の元にするスーパーヒーローが活躍することは世界が平和であることに大きく貢献すると感じたからだ。
単なる訓練ではなく、実戦を経験することはテクニックや知識を得るだけでなく、精神的にも非常に大きく人間を成長させてくれるものだ。
今回の大会で弟子や孫もだが、私自身も自分が何ができるかをしっかりと確認させてもらいたいものだ。
マリーザは一応弟子ということになるが、私には過ぎた弟子だ。才能も抜群だが、それ以上に非常に善良で向上心にあふれ、むしろ私の方が学ばせてもらうことの方が多い気がする。
難点は真面目すぎること、そして、少々思い込みが激しいことだ。
本来ならライバル視しておかしくない立場の瀬利亜嬢のことが大好きで心の底から尊敬している…そのこと自体は素晴らしいことなのだが、瀬利亜嬢のすることを何でも好意的に捉えすぎて、『真似しなくてもいいことまで真似しようとする』のはやめよう。
「それ、瀬利亜嬢が単にドジなだけだから!!」と言いそうになって辞めたことが何度あったことか…。
アロも物静かでマイペースな孫だと思っていたら、いつの間にかわしのようなスーパーヒーローになりたいと言い出したのにはびっくりした。
まだまだ未熟とは言え、非常に思いやりが深く、スーパーヒーローとしては申し分ないと思う。
ただ、『恋愛相談』をわしに持ちかけられても困るんだが…。
望海譲と仲良くなりたいのはわかるんだが、自分の興味の向くままいろんなことに全力で動く、あのお嬢さんを捕まえるのは骨だぞ…。
まあ、脈がないわけではないから、地道にがんばりなさい。
(SIDEライトニングレディこと、マリーザ・アルバネーゼ)
スーパーヒーローオリンピック当日の朝、ホテルで目覚めた私はものすごい高揚感に包まれていた。
大会に参加するのがとても楽しみだ!こんなにわくわくするのは去年の結婚式以来のことだ。
幼馴染で近所の兄貴分だったランディアが念願だった弁護士資格を取って、ようやく自分との結婚に踏み切ってくれたのだ。
その結婚式には『あこがれのあの人達ご夫妻』も喜んで出席してくれて、心からの祝福をしてくれたのだった。
私は子供のころは普通…いえ、普通の人が見えないものが見えたり、聞こえない者が聞こえたりする以外はどこにでもいる普通の女の子だった。
近所に住んでいた子供たちのリーダーであったランディアが「大人になったらスーパーヒーローになる!」と宣言して、近所の子供たちを集めて、『スーパーヒーロー活動』をやっていたのを、お隣さんで三つ年下の私はちょこちょこと後をついていった。
スーパーヒーロー活動とは言っても、近所のゴミ拾いをしたり、困っていたお年寄りを助けたりというささやかなものであったが、みんなが子供から大人になっていくにつれて、一人減り、二人減りで、いつしか『スーパーヒーロー活動』は私とランディアの二人でやるようになっていた。
たった二人の活動になっても、私たちは活動が嫌になったりはしなかった。ご近所のお助け活動とは言え、少々大変ではあってもいろんな人に喜ばれるのは嬉しかったし、なにより大好きなお兄さんであるランディアと一緒に動くのが私は楽しかった。
私がいろいろと『見えないはずのものが見えて』いろいろな人の探し物を見つけたり、『ジュウドウ』や『カラテ』を習ったランディアが運動神経が抜群に良くなり、不良たちが絡むトラブルも解決するようになり、田舎の街で私たちの『スーパーヒーロー活動』も評判になるようになった。
そんなある日、私たちはスーパーヒーロー協会から将来性を見込まれて極秘にスカウトされることになった。
そして、私たちはスーパーヒーローへの道を歩み始めた。
(SIDEケツアルコアトル)
うさぎさんチームがコスチュームまでうさぎさんになっちゃったよ…。
観客の反応は……概ね好意的だな…。
瀬利亜嬢=シードラゴンマスクに対する好感度の高さと、コスチュームが可愛いながらもカッコよさを絶妙に追及しているから、『何とかなっている』感じか…。
スーパーヒーローたちは……こちらも概ね好意的か…。
何人かはすごく喜んでいるな、特に日本チームの面々ががうさぎさんシードラゴンのコスチュームに!!
我が孫のアロとロシアチームのアナスタシア嬢は『やっちゃったよ…』みたいな表情をしているな。さすがは冷静さが売りの二人だな。
そして、我が弟子のマリーザは……ものすごく目をキラキラさせているよ?!!!
人目がなかったら頬ずりしちゃいそうな勢いだよ!!
もともと可愛いものが大好きな上に、瀬利亜嬢もそれ以上に大好きなんだから、『自分も見習ってうさぎさんライクのコスチュームに替える!!』とか、言い出しかねないんだけど?!
……うん、あのコスチュームが気に入って、大会後にうさぎさんシードラゴンのぬいぐるみをたくさん買うのは阻止できないだろうが、コスチュームを着るのだけは断固阻止せねば!!
そう思って、観客席にいる旦那のランディアをちらと見ると…。
こちらの視線に気づくと『悟りきったような貌』でため息をついているな…。
同じことを考えていたか、さすがは幼馴染だけのことはあるな。
(SIDE瀬利亜)
出場三二カ国の選手がそろい踏みすると、いよいよ選手宣誓が始まります。
前回に引き続き、私が選手宣誓をすることになっています。
前回は同率一位で日本チームとマジカルキングダムチームが優勝したので、その時のリーダーの私が宣誓をするそうです。
……今回私は別チームのキャプテンだけど、それはいいのかと聞いたら、「一番らしい宣誓ができるのは瀬利亜ちゃんだ」と満場一致で言われました。
「宣誓!!我々は、すべてのスーパーヒーローの名において、スーパーヒーローの精神に則り、『熱く燃え盛る正義の心のある限り』正々堂々と全身全霊を込めて競技を戦い抜くことを誓います!!」
私が選手宣誓をすると、場内は大フィーバーです。観客席より、ヒーローたちの方が騒いでいます。
会場内が大いに盛り上がる中、いよいよ第一競技が『第三の男(女)』……これはどういう競技でしょうか?
なになに?各チーム内で『三番目の選手』を選出して、その選手同士の一騎打ちを行う…ですか…。
これは選手の選出にもめそうな…うん、各国ともにあっさり決まったようです。
我がうさぎさんチームも私の独断と偏見で決めました。
前回もそうでしたが、この個人戦や最終日のタッグ戦は勝敗もさることながら、『スーパーヒーローらしい戦いぶり』も非常に重要な採点対象になります。
皆さまぜひ、 スーパーヒーロー精神に則って、熱い戦いをして欲しいですね♪
(SIDE健人)
なんで、大会しょっぱなの試合で俺が出ることになってんの?!!
これ、なんの嫌がらせなの?!!!
……瀬利亜の様子を見る限り、計画的にこの状況を作ったわけではないのは明らかなので、あきらめて、闘技場に移動する。
相撲の土俵のようにせり上がった闘技場の広さはサッカーコートくらいの広さだろうか。
対戦相手の日本チームのミラクルファイターが場内に入ってくる。
ミラクルファイターは前回のスーパーヒーローオリンピックには解説者として参加した後、大会後のエキシビジョンマッチで大暴れした実力派のスーパーヒーローだ。
スーパーヒーローオリンピック公式サイトの選手紹介でも『格闘戦に於いてはシードラゴンマスクに近い実力者』とか、すごく高い評価になっている。
身長は俺より少し低いくらいだが、鋼のような肉体にフィットする青と黄色のボディスーツ、口だけ見える銀色のマスクをかぶり、俺を見やってにやりと笑っている。
実際に対峙してみて、全身からスゴイ闘気を放っているのが感じられる。
千早ちゃんとの鍛錬がどれくらい身に付いているか確かめるいいチャンスかもしれない。
「よう、健坊!いい闘気出すようになったなあ!しばらく見ないうちにずい分と立派になったもんだ!!」
ちょっと待て!!!この人も知り合いなのか?!!
「二年間も異世界で勇者をやってたんだって?!あの千早嬢からも実力のお墨付きが出るくらいだから、今からの対戦が楽しみだぜ!!」
なんで、そんな情報まで漏れてるの?!!
「ちょっと待て!!あんたは一体何者だ?!!」
「あれ、俺がわかんねえのか?…仕方ねえな。俺に勝ったら正体を教えてやろう!!
まあ、勝てたらな!!!」
ミラクルファイターがにやにや笑っているよ!!
嬉しそうだ。実に嬉しそうだ…。間違いなくこのおっさんは戦闘狂だ。
『あら、齊藤警部は健人のことをちゃんと覚えていてくれたのね。』
セコンドの瀬利亜の言葉が俺に聞こえてくる。
そう、この試合はそれぞれにセコンドが付いていて、リアルタイムでセコンドから助言がもらえるのである。
…て、齊藤警部?!!
瀬利亜が通っていた道場の先生じゃん!!
「齊藤警部がミラクルファイターだったわけ??!!!」
俺は思わず叫んでしまう。
「ちちっ!瀬利亜嬢。あっさりばらしたな。こういうのは後で正体を明かす方が面白いのに。」
ミラクルファイターが肩をすくめているよ。
……そういや瀬利亜は両親の『スーパージャスティス』と『ミステリアスレディ』の後を継いでスーパーヒロインになったと言っていたな…。
本当に俺の周りはスーパーヒーロー・ヒロインだらけだったのだね…。
『反射神経はほぼちーちゃん並みと思ってもらえばいいわ。だから、あなたの攻撃を当てるだけで一苦労するだろうけど、今のあなたなら当てればかなりのダメージがいくと思うの。
システム上大きな怪我をしないようになっていて、思い切り攻撃しても死にはしないから、一切の遠慮なしに大ダメージが行くようにいっていいからね。』
「いやいや、いくらなんでも瀬利亜の師匠に一切の遠慮なしというのは…。」
『大丈夫。予め説明にあったようにアルさんや他の術師が会場自体に攻撃のダメージが本人に付加したバリアーが肩代わりして仮想ダメージになるような空間を創りあげているから。
実際の体がノーダメージとまでは行かなくても、救急システムで間違っても死なないようになっているわ。あなたの全力攻撃なら直撃しても『かなり痛い』くらいで済むわ。
そうそう、齊藤警部は突き・蹴りや投げ技もかなりえぐいけれども、『関節技』が特にヤバいわね。私でも決められたら脱出がつらいくらいだから、健人だと『詰む』と思っていて間違いないわね。じゃあ、健闘を期待するわ!」
なんだと?!!関節技がそこまでヤバイのか?!!
俺の警戒の表情を見て取ったミラクルファイターがにやりと笑う。
「ほお、瀬利亜嬢がいろいろとレクチャーをしてくれたようだな♪いやあ、教え子ではないけれど、顔なじみのあんちゃんがどれくらい成長したのかを確かめさせてもらおうか!!」
嬉しそうだよ!対戦するのがめちゃめちゃ嬉しそうだよ!!
「そうそう。俺のセコンドは君とたくさん模擬戦をした千早ちゃんだから。よろしく♪」
なんだってー!!!
(続く)
一応弟子にあたる、マリーザや付き合いの長いアルテアに頼まれて、前回は固辞したスーパーヒーローオリンピックに今回は参加することにした。
己の熱く燃え盛る正義の魂を全ての行動の元にするスーパーヒーローが活躍することは世界が平和であることに大きく貢献すると感じたからだ。
単なる訓練ではなく、実戦を経験することはテクニックや知識を得るだけでなく、精神的にも非常に大きく人間を成長させてくれるものだ。
今回の大会で弟子や孫もだが、私自身も自分が何ができるかをしっかりと確認させてもらいたいものだ。
マリーザは一応弟子ということになるが、私には過ぎた弟子だ。才能も抜群だが、それ以上に非常に善良で向上心にあふれ、むしろ私の方が学ばせてもらうことの方が多い気がする。
難点は真面目すぎること、そして、少々思い込みが激しいことだ。
本来ならライバル視しておかしくない立場の瀬利亜嬢のことが大好きで心の底から尊敬している…そのこと自体は素晴らしいことなのだが、瀬利亜嬢のすることを何でも好意的に捉えすぎて、『真似しなくてもいいことまで真似しようとする』のはやめよう。
「それ、瀬利亜嬢が単にドジなだけだから!!」と言いそうになって辞めたことが何度あったことか…。
アロも物静かでマイペースな孫だと思っていたら、いつの間にかわしのようなスーパーヒーローになりたいと言い出したのにはびっくりした。
まだまだ未熟とは言え、非常に思いやりが深く、スーパーヒーローとしては申し分ないと思う。
ただ、『恋愛相談』をわしに持ちかけられても困るんだが…。
望海譲と仲良くなりたいのはわかるんだが、自分の興味の向くままいろんなことに全力で動く、あのお嬢さんを捕まえるのは骨だぞ…。
まあ、脈がないわけではないから、地道にがんばりなさい。
(SIDEライトニングレディこと、マリーザ・アルバネーゼ)
スーパーヒーローオリンピック当日の朝、ホテルで目覚めた私はものすごい高揚感に包まれていた。
大会に参加するのがとても楽しみだ!こんなにわくわくするのは去年の結婚式以来のことだ。
幼馴染で近所の兄貴分だったランディアが念願だった弁護士資格を取って、ようやく自分との結婚に踏み切ってくれたのだ。
その結婚式には『あこがれのあの人達ご夫妻』も喜んで出席してくれて、心からの祝福をしてくれたのだった。
私は子供のころは普通…いえ、普通の人が見えないものが見えたり、聞こえない者が聞こえたりする以外はどこにでもいる普通の女の子だった。
近所に住んでいた子供たちのリーダーであったランディアが「大人になったらスーパーヒーローになる!」と宣言して、近所の子供たちを集めて、『スーパーヒーロー活動』をやっていたのを、お隣さんで三つ年下の私はちょこちょこと後をついていった。
スーパーヒーロー活動とは言っても、近所のゴミ拾いをしたり、困っていたお年寄りを助けたりというささやかなものであったが、みんなが子供から大人になっていくにつれて、一人減り、二人減りで、いつしか『スーパーヒーロー活動』は私とランディアの二人でやるようになっていた。
たった二人の活動になっても、私たちは活動が嫌になったりはしなかった。ご近所のお助け活動とは言え、少々大変ではあってもいろんな人に喜ばれるのは嬉しかったし、なにより大好きなお兄さんであるランディアと一緒に動くのが私は楽しかった。
私がいろいろと『見えないはずのものが見えて』いろいろな人の探し物を見つけたり、『ジュウドウ』や『カラテ』を習ったランディアが運動神経が抜群に良くなり、不良たちが絡むトラブルも解決するようになり、田舎の街で私たちの『スーパーヒーロー活動』も評判になるようになった。
そんなある日、私たちはスーパーヒーロー協会から将来性を見込まれて極秘にスカウトされることになった。
そして、私たちはスーパーヒーローへの道を歩み始めた。
(SIDEケツアルコアトル)
うさぎさんチームがコスチュームまでうさぎさんになっちゃったよ…。
観客の反応は……概ね好意的だな…。
瀬利亜嬢=シードラゴンマスクに対する好感度の高さと、コスチュームが可愛いながらもカッコよさを絶妙に追及しているから、『何とかなっている』感じか…。
スーパーヒーローたちは……こちらも概ね好意的か…。
何人かはすごく喜んでいるな、特に日本チームの面々ががうさぎさんシードラゴンのコスチュームに!!
我が孫のアロとロシアチームのアナスタシア嬢は『やっちゃったよ…』みたいな表情をしているな。さすがは冷静さが売りの二人だな。
そして、我が弟子のマリーザは……ものすごく目をキラキラさせているよ?!!!
人目がなかったら頬ずりしちゃいそうな勢いだよ!!
もともと可愛いものが大好きな上に、瀬利亜嬢もそれ以上に大好きなんだから、『自分も見習ってうさぎさんライクのコスチュームに替える!!』とか、言い出しかねないんだけど?!
……うん、あのコスチュームが気に入って、大会後にうさぎさんシードラゴンのぬいぐるみをたくさん買うのは阻止できないだろうが、コスチュームを着るのだけは断固阻止せねば!!
そう思って、観客席にいる旦那のランディアをちらと見ると…。
こちらの視線に気づくと『悟りきったような貌』でため息をついているな…。
同じことを考えていたか、さすがは幼馴染だけのことはあるな。
(SIDE瀬利亜)
出場三二カ国の選手がそろい踏みすると、いよいよ選手宣誓が始まります。
前回に引き続き、私が選手宣誓をすることになっています。
前回は同率一位で日本チームとマジカルキングダムチームが優勝したので、その時のリーダーの私が宣誓をするそうです。
……今回私は別チームのキャプテンだけど、それはいいのかと聞いたら、「一番らしい宣誓ができるのは瀬利亜ちゃんだ」と満場一致で言われました。
「宣誓!!我々は、すべてのスーパーヒーローの名において、スーパーヒーローの精神に則り、『熱く燃え盛る正義の心のある限り』正々堂々と全身全霊を込めて競技を戦い抜くことを誓います!!」
私が選手宣誓をすると、場内は大フィーバーです。観客席より、ヒーローたちの方が騒いでいます。
会場内が大いに盛り上がる中、いよいよ第一競技が『第三の男(女)』……これはどういう競技でしょうか?
なになに?各チーム内で『三番目の選手』を選出して、その選手同士の一騎打ちを行う…ですか…。
これは選手の選出にもめそうな…うん、各国ともにあっさり決まったようです。
我がうさぎさんチームも私の独断と偏見で決めました。
前回もそうでしたが、この個人戦や最終日のタッグ戦は勝敗もさることながら、『スーパーヒーローらしい戦いぶり』も非常に重要な採点対象になります。
皆さまぜひ、 スーパーヒーロー精神に則って、熱い戦いをして欲しいですね♪
(SIDE健人)
なんで、大会しょっぱなの試合で俺が出ることになってんの?!!
これ、なんの嫌がらせなの?!!!
……瀬利亜の様子を見る限り、計画的にこの状況を作ったわけではないのは明らかなので、あきらめて、闘技場に移動する。
相撲の土俵のようにせり上がった闘技場の広さはサッカーコートくらいの広さだろうか。
対戦相手の日本チームのミラクルファイターが場内に入ってくる。
ミラクルファイターは前回のスーパーヒーローオリンピックには解説者として参加した後、大会後のエキシビジョンマッチで大暴れした実力派のスーパーヒーローだ。
スーパーヒーローオリンピック公式サイトの選手紹介でも『格闘戦に於いてはシードラゴンマスクに近い実力者』とか、すごく高い評価になっている。
身長は俺より少し低いくらいだが、鋼のような肉体にフィットする青と黄色のボディスーツ、口だけ見える銀色のマスクをかぶり、俺を見やってにやりと笑っている。
実際に対峙してみて、全身からスゴイ闘気を放っているのが感じられる。
千早ちゃんとの鍛錬がどれくらい身に付いているか確かめるいいチャンスかもしれない。
「よう、健坊!いい闘気出すようになったなあ!しばらく見ないうちにずい分と立派になったもんだ!!」
ちょっと待て!!!この人も知り合いなのか?!!
「二年間も異世界で勇者をやってたんだって?!あの千早嬢からも実力のお墨付きが出るくらいだから、今からの対戦が楽しみだぜ!!」
なんで、そんな情報まで漏れてるの?!!
「ちょっと待て!!あんたは一体何者だ?!!」
「あれ、俺がわかんねえのか?…仕方ねえな。俺に勝ったら正体を教えてやろう!!
まあ、勝てたらな!!!」
ミラクルファイターがにやにや笑っているよ!!
嬉しそうだ。実に嬉しそうだ…。間違いなくこのおっさんは戦闘狂だ。
『あら、齊藤警部は健人のことをちゃんと覚えていてくれたのね。』
セコンドの瀬利亜の言葉が俺に聞こえてくる。
そう、この試合はそれぞれにセコンドが付いていて、リアルタイムでセコンドから助言がもらえるのである。
…て、齊藤警部?!!
瀬利亜が通っていた道場の先生じゃん!!
「齊藤警部がミラクルファイターだったわけ??!!!」
俺は思わず叫んでしまう。
「ちちっ!瀬利亜嬢。あっさりばらしたな。こういうのは後で正体を明かす方が面白いのに。」
ミラクルファイターが肩をすくめているよ。
……そういや瀬利亜は両親の『スーパージャスティス』と『ミステリアスレディ』の後を継いでスーパーヒロインになったと言っていたな…。
本当に俺の周りはスーパーヒーロー・ヒロインだらけだったのだね…。
『反射神経はほぼちーちゃん並みと思ってもらえばいいわ。だから、あなたの攻撃を当てるだけで一苦労するだろうけど、今のあなたなら当てればかなりのダメージがいくと思うの。
システム上大きな怪我をしないようになっていて、思い切り攻撃しても死にはしないから、一切の遠慮なしに大ダメージが行くようにいっていいからね。』
「いやいや、いくらなんでも瀬利亜の師匠に一切の遠慮なしというのは…。」
『大丈夫。予め説明にあったようにアルさんや他の術師が会場自体に攻撃のダメージが本人に付加したバリアーが肩代わりして仮想ダメージになるような空間を創りあげているから。
実際の体がノーダメージとまでは行かなくても、救急システムで間違っても死なないようになっているわ。あなたの全力攻撃なら直撃しても『かなり痛い』くらいで済むわ。
そうそう、齊藤警部は突き・蹴りや投げ技もかなりえぐいけれども、『関節技』が特にヤバいわね。私でも決められたら脱出がつらいくらいだから、健人だと『詰む』と思っていて間違いないわね。じゃあ、健闘を期待するわ!」
なんだと?!!関節技がそこまでヤバイのか?!!
俺の警戒の表情を見て取ったミラクルファイターがにやりと笑う。
「ほお、瀬利亜嬢がいろいろとレクチャーをしてくれたようだな♪いやあ、教え子ではないけれど、顔なじみのあんちゃんがどれくらい成長したのかを確かめさせてもらおうか!!」
嬉しそうだよ!対戦するのがめちゃめちゃ嬉しそうだよ!!
「そうそう。俺のセコンドは君とたくさん模擬戦をした千早ちゃんだから。よろしく♪」
なんだってー!!!
(続く)
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
35
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる