上 下
1 / 2

1話

しおりを挟む
「う...ん....」

    目を覚ますと真っ黒な空間。周りには何も無い、ただただ闇い空間に漂っていた自分は少しずつ意識を取り戻していた。

    僕は...そうだ、僕は石動 悠いするぎ はるか。どこにでもいるような普通の高校2年生だ。その日は部活帰りにコンビニで買ったコーヒーを飲みながら青の信号を渡ろうとして猛スピードで走るトラックが目の前にやって来て─────で、死んだのか。絵に描いたようなシチュで受け入れられない現実に重くため息をついた。まだ見ていないアニメとか積んでいるプラモデルとかがあったのに。

「参ったなぁ...どうしよう....ってあれ?声が....あ、ぁあれ?!」

    どうやらここでは声を出すことできるらしい。同時に声が高くなっていることに嫌な予感がして頭に手を触る。いつの間にか肩まで髪が伸びている。しかもサラッサラだ。恐る恐る胸に手をやるとマシュマロみたいに柔らかい...じゃなくて大きい2つの膨らみが何故か付いていた。ダラダラと冷や汗が頬を伝う。まさかと股間に触れてみる。

「ない...ない!!」

    男としての象徴であるアレがさっぱりなくなっている。月に照らしてみると服装も女子高生のものに変わっているようだ。足元にちょうどいい水面がある。これでなら顔を見れるはずだ。しゃがんで水面に顔を近づけてみることにした。黒い髪はまるでカラスの羽のように光に当たって紫色や青色を帯びた光沢を放ち、顔立ちはまるで幼女みたいに幼げで可愛らしい顔に変わっていた。あの時のモブとはおもえない。

「あれっ、可愛い....じゃなくて!かんっぜんに女の子になってんじゃん!!...うわっ、最悪だ...」

    事故に遭った上に変な場所に来た挙句、女性の体になっているという衝撃でまともに頭が働かない。気を紛らわそうと立ち上がり、ふらふらと森の中を歩いた。

「今日は色々ありすぎるよ...事故ったと思ったら変な場所来ちゃってるし...もうわけがわからないや.....」

    外は暗く、生き物の声がやけに大きく聞こえる。何とかして逃げて人里に行きたい。そんなことを考えていたその時

「ん?」

    鎧を着た人らしき影が一つ、木の影に座っている。あの人に聞けば何か分かるかもしれない。

「すみません、聞きしたいこと......きゃあぁっ?!」

    まるでぬいぐるみのように力無くだらんと倒れ、同時に首がこっちに転がっできたのだ。僕自身、グロい類のゲームの動画も見ていたので耐性はあると確信していたが、いざ本物をみるとかなり来るものがあった。オマケにとてつもない異臭ときた。

「うぶっ....おえぇ...」

   吐き気で苦しんでいると突然ズシンと音が聞こえた。 振り返るとそこには 二足歩行の豚。 僕の身長を遥かに超える大きさで、ヨダレを垂らしながら僕を見ていた。ゲームとかアニメとか同人誌薄い本なんかでよく見るやつだ。たしか「オーク」っていう名前だったか... すごい、これが本物なんだと見つめているとオークは僕に向かって迷いなく手を伸ばしてきた。
 
「ひいっ?!いやっ! 助けて・・・!」

   助けを求めて叫ぶが、今は夜だ。人どころヤツの仲間を呼び寄せてしまう可能性もある。ここは、逃げるが勝ちだろう。離れるように走るが、慣れてない森の地面に何度も足を取られて転びそうになり、向こうもかなりの体力があるのかあっという間に距離をつめてくる。

「うわっ!しまっ....!」

    根っこにつまづいて転んでしまった。オークにそのまま胴体から握られててしまう。

「くうっ、はなっ、してっ!」

    掴んでいる指をポカポカの殴りつけたり噛み付いたりしても効果がないのかオークはその場に座ると舌なめずりをして何やら下半身をモゾモゾと動かしていると人間以上に歪なモノを出てきた。まさか、僕を犯そうとというのか。

「ひいっ...!や、やだっ、やめてっ...!」

    抵抗しようも両手が塞がれてまともに動けない。やばい。本当にやばい。そんな僕をそばにオークは僕の中に入れようとする。 最悪だ。こんなのに初めてを奪われるだなんて、そんなの、嫌だ!

「やめてぇっ!!」

    恐怖からめいっぱい叫んだ次の瞬間、ザアアァアアッと黒い何かが体を覆いつくした。



























「....あれ...?」 

    しばらくして目を覚ますと辺りは血や肉片で真っ赤に染まっていた。何が起きたのかさっぱり分からず、見回しているとオークらしき何かが横たわっている。身体はズタボロに裂かれ、内蔵をぶちまけ、頭は荒々しく千切られたのか骨が見えている。そんな光景に犯される寸前に何か黒いもので包まれるのを思い出した。それから僕はオークは僕が殺ったんだと理解した。そしてあまりにもひどい臭いと絵面に耐えきれずに思い切り吐いた。吐くだけ吐いてなんとかすっきりしたが、ここにいればいずれ仲間がやってくるだろうとその場を逃げるように去った。




「..ふぅ、ここまで来れば何とかなるか...あ!」

奥に人里らしきいくつもの明かりが。良かった、なんとか避難できる!そこ目掛けて走り出した次の瞬間

「う”ぐっ...!」

足に激痛が走り、ずてんと転ぶ。足を見ると矢で貫かれて、振り向くと白いローブ姿の男が立っていた。

「見つけたぞ。カラスの悪魔め。」

「悪...魔?なんっ...で....」

「ここで見ていたんだ。お前が悪魔になる瞬間を、そして魔物を喰らった所をな。」

    そうか、あの時たしかに悪魔になり、オークを食べたんだ。でも、人を食べた訳じゃないのに、どうして?

「決まっている。どうせお前も人間を喰らいにこの山を下ろうとしたのだろ?」

「な、何を言って...」

「とぼけるな。お前の考えてる事はこちらの想定済みなんだからな。」

 パチンと指を鳴らした瞬間、刺さっていた矢が光り始め、今まで感じたことも無い強い激痛が走る。

「う”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”ぁ”あ”!!!!」

「さあ答えろ悪魔!この森で何人の人を喰らった!!」

「だから何も知らな...(パチン)ぁ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”ぁ”あ”!!あ”ぁっ...ぅあぁっ...」

「何故隠す?真実を聞いているだけだぞ?」

「っ...僕だって、ホントのことを言ってるだけですよ...目を覚ましたらこんな森の中にいて、何をしたのか分からないってのに..(バキッ)がッ!!」

     男が舌打ちをしてグーで殴りつけるとそのまま馬乗りになってナイフを振り上げた。死ぬという文字が脳裏に浮かぶ。いやだ、死にたくない。気づいた頃には男を両足で蹴って押しのけ、森の奥に逃げた。


「ううっ...ふぅ....ふぅ....」


 足の感覚がほぼない。この調子だと長く持たないだろう。奥から怒鳴り声がきこえる。このままじゃまたあの連中に襲われて、確実に殺される。少しでも離れないと。だが、それも長くは持たず、木に持たれるように倒れた。体が痺れてうごけない。矢が刺さった所から黒くなっていて、腐ってきてるのが分かる。
(逃げなきゃ...いけないのに....体が...動かない....)
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

セックスがしたくてしょうがない攻めVSそんな気分じゃない受け

BL / 完結 24h.ポイント:5,498pt お気に入り:8

【R18】狂存トライアングル

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:248pt お気に入り:780

自衛隊のロボット乗りは大変です。~頑張れ若年陸曹~

SF / 完結 24h.ポイント:234pt お気に入り:76

転生先が同類ばっかりです!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:127pt お気に入り:154

龍の寵愛

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:1,207pt お気に入り:2

今宵、鼠の姫は皇子に鳴かされる

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:631pt お気に入り:10

処理中です...